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カラオケ対決!~彼女のエンジェルボイスに骨抜きにされる僕~

今回の舞台は世のカップル達の定番デートスポット、カラオケボックス!タケシはそのイケメンボイスでエリを虜にすることができるのか、はたまた虜にされてしまうのか…!?

登場人物

川野武 16歳 高2 178cm

中山絵理 17歳 高3 152cm

竹村友恵 18歳 高3 161cm


―ある夏の日の放課後。


テニス部の川野武は、部活に向かうため、いつものように渡り廊下をやや早足で歩いていた。すると…。


「川野くん、ちょっといい?」

「え?…あ、竹村先輩…。」


棋道部部長で、武の恋人の絵理の親友、竹村友恵から不意に呼び止められた。


武は普段、友恵と二人だけで話をすることはめったになかったので、少し意外な感じがした。


「どうしたんですか?竹村先輩。」

「あのね、ちょっと聞いて欲しい話があるの。」

「何ですか?」

「その前に…いつも絵理と一緒にいてくれて、本当にありがとうね。あの子、本当に毎日楽しそうで。」

「え?…いえ、俺の方こそ、感謝の気持ちでいっぱいです。えりちゃ…中山さんと一緒にいると、本当に心が弾んで…。」


友恵は武の礼儀正しさを目の当たりにして、優美な微笑みを浮かべた。


「ふふっ、いいのよ。えりちゃんって呼んであげなさい。それでね、話っていうのは…。」

「はい。」

「…絵理のこと、よろしく頼むわね。」

「え?あ、はい、でもどうしてそんな…?」

「あの子はね、天真爛漫で明るくて、悩みなんて無縁に見えるかもしれないけど、本当はとっても繊細なところがある子なの。誰かの何気ない一言で、深く傷付いてしまったり…いつも元気に振る舞っているけれど、私には分かるのよ。だけどね…」

「…はい。」

「あなたが隣にいてくれれば、あの子は何度だって立ち上がれる。私はそう確信してるの。だから……頼んだわよ、川野くん。」

「……はい。俺がどこまで役に立てるか分からないですが、精一杯彼女を支えます。約束します。」

「ふふっ、……絵理の選択、やっぱり正しかった。」

「?」

「ううん、何でもないわ。足止めしてごめんね。テニス部でしょう?がんばってね。」

「はい!竹村先輩も部活頑張ってください!」


武にも何となく分かっていた。絵理が明るくて芯が強いだけの少女ではないことが。彼女にとっての心安らげる場所。自分がそのような存在になれれば良い。武は心底からそう願うのだった。


そして翌日…。


「やってきましたカラオケボックス!たけしくんっ、今日は歌い倒すよ~!!」


武と絵理は繁華街のカラオケボックスにやって来ていた。定番のデートスポットだが、意外にも付き合い始めてから初めてのカラオケデートだ。


「うん、俺もすごく楽しみにしてたんだ。えりちゃんがどんな曲を歌うのか、今からワクワクするなぁ。」

「私も!たけしくんの選曲センス、ばっちりチェックしちゃうからね~♪」


受付を済ませ、好みのドリンクをグラスに注ぎ、二人は指定された部屋へと入っていった。


「よ~し、早速曲を入れていくよ~!たけしくんもドンドン入れてね♪」

「オッケー!」

「じゃあ私は…この曲!」


絵理は、あいみょんの"君はロックを聴かない"を入れ、キュートに、そして情熱的に、歌い上げた。


「僕の心臓のBPMは 190になったぞ~♪」


パチパチパチ!

「えりちゃん、すごく良かったよ!あいみょんはあまり聴かないけど、この曲なら俺も知ってるよ。惹き込まれちゃったよ!」

「たけしくん、ありがとう♡そんな風に言ってもらえて、私とっても嬉しい!…さあ、次はたけしくんの番だね。お、サザンかぁ、渋いね~!」


武が入れた曲は、サザンオールスターズの"チャコの海岸物語"。彼はサザンの大ファンなのだ。武は良く響くバリトンボイスで、情感たっぷりに歌い上げた。


「浜辺の~天使を~見つけたのさ~♪」


パチパチパチパチ!!

「たけしくん、渋かっこいい!!すごく良い声してるね~!あ、浜辺の天使って私のこと?なんてね☆」

「ありがとう、えりちゃん!もちろん、えりちゃんは俺にとってオンリーワンの浜辺の天使だよ!」

「た、たけしくん、恥ずかしいよぉ…照れちゃうよぉ……でも、とっても嬉しい!てへへ♡」


二人はお互いの歌声に聴き入りながら、思い思いの曲を愛する恋人のために捧げ合ったのだった。そして…。


「さあたけしくん、ここからが本番だよ~!採点モード、解禁っ☆」

「お~~!」

「じゃあ私から歌うね、大好きなこの曲で勝負っ♪」


絵理が入れたのは、華原朋美の"I'm proud"。彼女は正確な音程で、ビブラートも加えて、なおかつ感情を込めることも忘れず、見事に歌い上げた。


"I'm proud いつからか自分を誇れる様になってきたのは きっとあなたに会えた夜から…♪"


「よぉし、ほぼ完璧っ♪」

「えりちゃん、すごい!これはかなり高得点出るんじゃない?」


ジャカジャカジャカジャカ、ジャーン。97点!!


「あぁ~、満点まであと3点!!充分良い点だけど、満点取りたかったなぁ~。」

「えりちゃん、97点なんてメチャクチャすごいよ!音楽センスも抜群なんて、ホントにえりちゃんは俺の最強彼女だよ!」

「わぁ~、そこまで言ってくれるなんて、私とっても幸せ…♡さぁ、次はたけしくんの番だよ!ファイト♪」

「じゃあ俺も得意のこの曲で…。キーがちょっと高い曲だから2つ下げて、と。ポチッポチッ。」


武が入れたのは、これまたサザンオールスターズの"希望の轍"。この曲は武にとってはまさに"元気ソング"で、落ち込んだ時など、幾度となくこの曲に励まされてきたのだった。


"夢を乗せて走る車道 明日への旅♪"


出だしは順調だったのだが、事前にキーを下げたにもかかわらず、武は高音を出すのが徐々に苦しくなってきた。


"遠く~ とぉ…くぅ~…"


「あっははは!!たけしくん、声かすれてるってwだっさ~い♡」


絵理はこの時、小悪魔的な策略を思い付いた。


「ふっふっふっ、たけしくん、これでも食らえっ!必殺!"原曲キーに戻す"!ポチッポチッ♡」


"じょぅねつのぉもさは…よぉ…るのぉ、なぎ~…さまょう、なつのひはか…げ…ろぉ…ぉ…ぉ…ぉ~……"


「ぎゃっはははは☆たけしくんイジメるの、た~のしぃ~!!」


たけしは息も絶え絶えになんとか最後まで歌ったのだが…。


ジャカジャカジャカジャカ、ジャーン。75点!!


「ちょっとえりちゃん!意地悪するのはやめてよぉ~!高い声出すの苦手なんだよ~。」

「あははは、ごめんごめん、つい…ね☆でも、たけしくんが今の曲のことホントに大好きなのは伝わってきたよ!」

「本当にもう…。おかげで散々な点数になっちゃったじゃないか~。」

「そうだね~!あはっ、音楽的才能でも私の方が上みたいね☆たけしくん、ま~た彼女に負けちゃったね~、悔しいでしょぉ~♡」


こういうやり取りをしていても、なんだかんだで武は幸せいっぱいなのだった。そして…。


「残り7分、か。あのね、たけしくん。どうしても聴いてほしい歌があるの。私の18番。たけしくんのために心を込めて歌うから、聴いてくれるかな…?」

「う、うん…。えりちゃんの歌声、俺が精一杯受け止めるよ。」

「嬉しい…!じゃあ…。」


絵理が入れたのは、浜崎あゆみ"Moments"。


"La La La La La La…"


静謐なイントロと共に絵理が歌い出すと、室内の空気が変化したのを武は感じ取った。そして、絵理の心の世界に、あっという間に引き込まれていった…。


"鳥のようにはばたけるなら 君の元へ飛んでいくでしょう

そして傷を負ったその背に 僕の羽根を差し出すでしょう…"


聴き入っていた武は、絵理の孤独と繊細さを敏感に感じ取った。そして、絵理の抱える"弱さ"を、自分がそっと包んであげたい…そのように、決意を新たにしたのだった…。


「あぁ~っ、久々に本気出しちゃったかも…♪たけしくん、どうだった?」

「俺…これからもずっと、えりちゃんのそばにいるから。約束する。」

「へ…?…な~に当たり前のこと言ってんの!たけしくんと私は、世界の果てまで共に突き進んでいくのです☆」

「はは、いつもの調子が戻ってきたね。じゃあ、オチがついたところで、帰ろっか?」

「……うんっ!たけしくん、だ~い好き♡」


こうして、初めてのカラオケデートは幕を閉じた。二人は、お互いに対する愛情がさらに深まったのを強く感じたのだった。これから先に待ち受けている幾多もの試練を、二人は手を取り合って乗り越えていくことが出来るのだろうか…?二人の物語は、まだまだ続く。


通算戦績

武 0勝5敗

絵理 5勝0敗


つづく

今回はシリアスシーンも盛り込みました(^^)

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