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プロローグ
幸せは此処にある。
そんなことは知っている。
僕は鳥籠の扉を開けた。
青い鳥が僕の肩に乗ってくる。
しばらくして満足すると、自ら鳥籠の中に戻り、水を飲み、餌をついばみ、つがいと仲良く身を寄せ合った。
「お前たちは、それでいいのか?」
僕は鳥達に問う。
ぴぃ? と僕の目を見つめて不思議そうに鳴く。
翼が使えない訳ではないのに、自由に空を飛ぶ意志は忘れ果ててしまった鳥達。
エサも十二分にある。
外敵もいない。
愛をささやく相手もいる。
好きなだけ子孫繁栄を願うことができる。
全てが揃っているのであれば、
牢獄であっても天国。
この鳥たちにとってはそうなのだろう。
僕もそうであれば良かったのに。
僕の心の内を飽くなき自由が身を焦がしていた。
「どこかに行ってみたい」
それが破滅の呼び声だとしても、
僕には逆らうことはできなかった。