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パーティーバッグ

 Kさんの叔母さんは、リサイクルショップを経営している。

 取扱品は、古着やバッグ、アクセサリー等のアパレル関連品。

 叔母さんの目利きがいいのか、若い女性客を中心にそこそこ繁盛しているという。


 人気があるのは、やはりハイブランド品。また、アウトドア、スポーツ系のカジュアルブランドもよく捌けるそうだ。

 そして、近年はフォーマル、パーティードレス、小物など、フォーマルな場でのアイテムも、じわじわ需要が高まっているという。

 

 そんな商品のなかで、奇妙なバッグがひとつある。

 それはベージュのパーティーバッグ。素材はサテンで、プリーツが華やかな、上品な一品だ。見た目だけでなく、使い勝手もいい。店頭に並べると、すぐに買い手がつくという。

 しかし、そのバッグは必ず戻って来る。必ず売れるが、必ず戻って来るのだそうだ。

 もちろん商品に不具合があるわけではない。パーティーバッグという物の性質上、一度使ってまた売りに出すことはあるだろうが、戻ってきた回数は一度や二度ではない。なかには「これからも長く使いたい」と買って帰った客もいたが、それでもひと月と経たずに売りに来たという。

「傷ついたり汚れたりしてることはないし、またすぐに売れるから、いいといえばいいんだけどね」

 でもなんだか気持ち悪いじゃない、と叔母さんは言う。

「だからね、何度か聞いてみたことがあるの。どこかお気に召さない点がありましたか? って。そしたらね」 

 とても気に入りました。だから、皆に使って貰わないとと思って。

 まるで示し合わせでもしたかのように、毎回同じ答えが返るのだそうだ。

「まあ、日常使いするタイプのバッグじゃないからね。次の人に、って考えるのもわかるよ。でも、結婚式が続くからとか、仕事柄パーティーに出る機会が多いからって言って買って行った人も必ずすぐ売りに来るの。それで、気に入ったから売るって言うのよ。それも一言一句同じ言葉で。なんだか、変な感じがするでしょう?」 

 それからね、と叔母さんは続けた。

 戻ってきたバッグの中に、物が残っていることがあるという。

「小さなナイフ。小刀っていうのかな。そういう小さな刃物がよく残ってることがあるの。同じ物じゃないんだけどね。アウトドアで使うナイフだったり、カッターナイフ、果物ナイフ、包丁もあったかな。返ってきたバッグを開けると、入ってるのね。で、お客様に確認すると、知らない、自分は入れてないって言うのよ」

 仕方がないので叔母さんが処分している。

「それだけでも気分がよくないんだけどね」

 たまに刃物に汚れがついていることがあるという。赤い錆のような汚れだそうだ。

「何に使ったのか……なんて考えちゃうとね、気持ち悪いじゃない。だから、考えないようにしてるの。お客様も知らないって言ってるんだし。ただね」

 数回、パーティーの様子はどうだったか聞いてみたことがある。

 叔母さんの質問を受けた客は皆、満面の笑みを浮かべ

「とても良いお式でした」

と心底幸せそうに答えたという。




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― 新着の感想 ―
[一言]  面白かったです。いつも以上に短い作品ですね。  でも濃いなあ、とも思います。売れても戻って来ることの全く具体的な説明はなく、「謎の刃物」「刃物の汚れ(血液ですか?)」「お式」とまあ、不穏…
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