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見事に串カツの屋台を追い出されてしまった俺。
仕方ないのでその辺をとぼとぼ歩いていた。
くっそー、どうしても食べたかったのにな。
まさかお金の問題に阻まれるとは。
まぁ確かに冷静になってみても無理に決まってるよな。
世の中の全てはお金で回っているとどこかで聞いたことがある。
やはりお金はこの異世界においても重要なのだ。
「くそ、これじゃろくに腹も満たせないじゃないか。討伐の準備どころじゃないぞ。まずは金を稼ぐところから始めないと」
そう俺は決心する。
お金がなければ腹も満たせないし、寝床も得られない。
まずはお金を稼ぐことが全てだ、そして衣食住を満たす、これは人間が健全な生活を営む上での最低構成要素だ。だからまずはお金を稼ぐ方法を考えないと……
「…………いや、本当にそうか?」
俺はふと思った。
お金を稼ぐということが本当に正解なのかと。
お金を手に入れる手段なら、稼がずとも、奪ってしまえばいいのではないだろうか。
「やばい、ナイスアイデアかもしれん、これはきたな」
せこせこお金を稼ぐなんてやってられるか。
それよりももっと簡単な方法があるならそれを試すべきだ。
「よーし、となると誰を襲おうかな」
適当に道を歩いてる人とかでもいいか?
ひとまず大通りを歩く人を吟味してみる。
うーん、おじさんにおばさん……家族連れ……なんか笑い合ってる青年たち……誰がいいのかな。お金を持ってそうな人がいいよな。となるとやっぱりマダム系の人? でも見る限りそんなにVIPそうな感じの人いないんだよね……しわがれた貧乏そうなおばあさんしかいない。なんだよ、全員田舎育ちか? いもいもしてた奴がこんな街にくんじゃねぇよ。はぁ冷めるわ。
「でもよくよく考えれば個人を狙ったところで大したことなくないか? 財布に入ってる金なんて知れてるだろうし……」
そうなるとデカい店を狙ったほうがいいよな、うん、それがいいかも、よーし。
「ショッピングモールはねーかー」
デカい店と言えばショッピングモールを連想したので、歩きながら探してみる。
うーんなかなかないなぁ。あ、あそこでいいか!
俺は野菜なんかが沢山並んでる店を見つけた。
正直そこまでの広さはないが、結構人の出入りはある。よし、あそこで強盗してみよう。
俺は堂々と店の中に入っていった。
そして会計をしている所に向かう。
列はなく、丁度会計をしている人が一人いるくらいだった。
「いらっしゃい! どうだいお兄ちゃん、気になるもんはあるかい? ティマティーとかは栄養抜群! 水分補給もできて、なにせそのままかじれる! おすすめさ!」
俺に目を留めた店員のおばちゃんが話しかけてくる。
「そんなことはどうでもいいよ。とにかく金をよこせ」
「……は?」
「なんだよ聞こえなかったのか? 金をよこせと言ってるんだ。俺は強盗だ。金をよこせ」
はっきりと言ってやった。なんだ、聞こえてないふりでごまかす気か? そうはいかねぇぞ。俺は分かって貰えるまで話しかけるからな。
「あ、あの、だね、何か悪い人の真似とかしてるんならやめた方がいいさね、冗談にならないこともあるからね」
「うるせぇ、俺は本気だ、とっとと金を出せ」
「ご、強盗だああああああああ」
おばちゃんが悲鳴のような大声を上げた。
おいおい全然聞く耳もってくれねぇじゃねぇか。
これじゃ俺の作戦が成功しないぞ、どうしてくれるんだ。
「なに?」
「なんなの……」
周囲の客たちがヒソヒソ話しているのが聞こえる。
やばいどんどん失敗に近づいていってる気がする。いや、これは想定の範囲内か? ともかくこのままじゃまずい、まずは聞く耳を持たせないと。
「なんだなんだ」
すると奥の方から男が出てきた。
ガッチリとした体つきで、タンクトップを着こなしている男だ。二の腕がかなり太く、腕相撲でチャンピオンをとっているだろうと思わされる。
「ご、強盗だって、この人が……」
「は? そんなやつどこにいんだよ」
「だ、だからこの人だって」
おばちゃんが俺の方をしっかりと指さしてくる。
当然大男も指の示す方を見てくるが、しばらく睨まれたあと、はぁとため息をついた。あまりに無害な人物に見えたのかもしれないと思った。
「おい坊主、なんか用か?」
「え、いや、ただ僕は食材を買いに来ただけなんですけど……」
「だそうだぞ」
「そ、そんな! さっきは強盗だってッ!」
「でも強盗感は全くないように見えるが」
「僕も困ってたんです、こちらの方がなんだか急に僕の方を指して叫ばれ始めたので……僕はどうしたらいいんでしょうか……って、そんなわけあるかー!」
俺は手に魔法の塊を生み出し、それを男に投げつけた。
原理としては先程の槍をボール状にしただけだ。
塊は男の土手っ腹に大穴を開け、さらに背後の壁をも突き抜けていった。
おお、すごい重量、そして威力。まさに大砲だな。
「あ? ……お……え……」
男は自分の腹を見て何かを言おうとしたが、それよりも命が尽きるほうが早かったらしく、そのまま崩れ落ちるように地面に倒れた。
俺のツッコミを受け死んでしまった。
店内に悲鳴が鳴り響いた。




