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ギルド職員の鑑定がようやく終わり、無事クエストクリアが認められた。
やった……労力が報われた感じでめちゃくちゃ嬉しいわ。
とにかくお金貰ってとっとと飯食って風呂入って寝よう。
「報酬に関してですが、依頼達成条件の納品量とは別に余剰が発生しております。どうなさいますか?」
「え? 余剰?」
受付嬢がそんなことを尋ねてくる。
聞く所によると、納品量のノルマはクリアしたのはいいが、ちょっと余分に納品してしまっていたらしい。まぁ厳密に測ってないんで当然だな。そしてその余分な納品分をギルドで買い取って貰うか返却して貰うか選べるということだった。
「どのくらい余分なんですか?」
「そうですね……大体四割くらいですかね」
なるほど、マズルの奴ちょっと余裕を持って採取したな? まぁありがたい以外に言葉はないが。
俺はどうしようか迷ったが、結局ギルドで買い取って貰うことにした。場合によってはもう一回同じような赤身キノコの依頼を受けてその依頼の足しにすれば楽なんじゃないかと思ったが、量的にはどの道またあの森にいかないといけないっぽいので、結局労力としてはさほど違いはないだろう。それに疲れてたのでそれ以上考えるのもダルかった。とりあえずノルマは達成したんだし何だっていいだろ。
「売りでお願いします」
「畏まりました。それではギルドの正規価格で買い取らせていただきますね。少々お待ち下さい」
そう言われ、本当にほんの少しだけ待ったところで、すぐに受付嬢が戻ってきた。
「こちらが依頼達成報酬の4500シブハル、そして余剰分の800シブハル、合わせて5300シブハルになります」
俺は受付嬢から硬貨を受け取った。
銀の硬貨が五枚、銅の硬貨が三枚だ。
おお……やっぱり硬貨が貰えるんだ。前いた街の店でも見たけど、これがこの国の正式な貨幣なんだな。おそらく銀貨一枚で1000シブハル、銅貨一枚で100シブハルの価値があるのだろう。それでどれだけのことができるのかはまだ分からないけどな。少なくとも宿は泊まれるって話だし、その程度はあるんだろうけどな。
「そしてこちら冒険者カードの返却になります」
そう言って、依頼達成報告の際に提出させられた冒険者カードを手渡された。眺めてみるが、特に渡す前と変わったところは見受けられない。俺の名前があり、ランク表示――俺の場合Fランク――があり、最終発行地がナメザメ支店と書かれているだけの、シンプルなものだ。因みに色はくすんだ灰色である。
「今回の達成ポイントは3ポイントとなります」
「……3ポイント?」
「ご存知ありませんか? 説明もあったかと思うのですが……」
今回対応してもらってる受付嬢は、俺が冒険者登録をしたときとは別の受付嬢だ。やべ、眠りこけてて聞き逃してたかも。
「今日冒険者になったばかりなので全然わかりませんね。そんな説明もなかったですし、説明不足と言わざるを得ませんね」
「それは申し訳ございません」
さっきの受付嬢のせいにしておいた。
「ご説明させていただきますと、ランクごとに次のランクアップまでに必要な達成ポイントというのが設定されておりまして、依頼達成とともに加算されていくシステムとなっております」
「なるほど、そのポイントを貰えたのか」
正直どうでもいいんだけどもな、そんな説明。
「はい。ユウヒトさんは現在Fランクですので、次のEランク昇格試験へ必要な達成ポイントは100ポイントとなります」
「なるほど、分かりました」
その内3ポイントが溜まったんだな。オーケー。
その後、必要な応対はそれだけだったようで、俺は無事解放された。
「お疲れさまでした」
そんな言葉を受けながら、俺は受付を後にする。
よっしゃついに念願のお金ゲット。げっ、もう二十時前じゃん。そろそろ寝て元気にならないと駄目だな。早く宿を探そう。
とりあえずギルド内を歩き、まっすぐに出入り口に向かって外に出る。
歩く際依頼ボードの付近を確認したがあの少女の姿はなかった。まぁこんな時間だしもう家に帰ってるか。
ギルドの外に出た俺は、一旦落ち着くため深呼吸する。
ふーふーほああああああああ。
やばい元気でますわー。
夜の空気は新鮮で、目の前の通りを歩く人の数も昼に比べまばらだ。
また新たな街の一面を見ることができた気がして、少しテンションがあがる。
「さて宿でも探すとしますかね。でもどうやって探そう」
何か地図みたいなのはないかな。地球にいたころみたいにGPS機能なんかあれば一発なんだけど。そんなものあるわけないよな。どうしよう、誰かに聞いてみようか。それとも走り回ってみようか。いや、走り回るのはないな、それで何が起こるわけでもない。ここは誰かに宿の場所を聞いてみよう。それが一番固い作戦のはずだ。
「やぁ、この辺でいい宿を知らないか?」
俺は路傍でどってりと座っている黒猫に話かけてみた。
何故か人を見ても逃げ出さずに、そこにいるのだ。
俺の方をじっと見てきている。
なんかふてぶてしいな。こずいてやろうか。
「あらぁ、ぼく、チケとぉ遊んであげてるのかいぃ」
そこへ八十歳くらいのおばあちゃんが通りかかった。
杖をついてヨボヨボな感じだ。
「チケ? この猫のこと?」
「そうさねぇ。こいつはこの近辺の住民みんなに飼われとる猫じゃよぉ。みんなに、愛されとる、ようやる猫さねぇ」
「なるほど、そうだったんですね」
俺はこの街の新たな知識を得ることができた。
しばらく猫を眺めた後、宿の場所を知るためギルドに戻り受付嬢に聞いてみることにした。




