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 全員殺したと思ったら一人だけ残っていた。

 どうする? こいつも殺すか? その方が後腐れないもんな。目撃者はやはり全員殺すべきだろう。


「う、うぅ、僕はここで終わりなんだ……」


 その男、というより俺と同い年くらいに見えるが、少年はどんよりとした雰囲気で泣いていた。死ぬとなって怖いのだろうか。人には必ず死は訪れる。それは俺にしてももちろん例外ではない。だが俺が死ぬのは今ではないと言える。だから死に直面した際の感情を本当の意味で理解できはしないのだろう。同情はしない、少年を殺し、俺は生き延びる。


「あなたも殺しますけど、いいですよね?」


「ぐすっ、好きにしろよ殺人鬼」


「殺人鬼? 俺は殺人鬼などではないぞ、善良な一般市民だ」


 聞き捨てならなかったので思わず反論してしまった。


「どこがだよ……こんだけ人を殺しておいて、どう言い逃れできるっていうんだ」


 少年は下を向いたままポツリと呟くように返してくる。


「人を殺したってのは結果だけを切り取ってるだけだろ? 元はと言えばアンタたちが殺そうとしてきたんだろ。いわゆる正当防衛だ。それを返り討ちにあって被害者ヅラは随分と虫がよすぎるんじゃないか?」


「僕はこんな奴らとは違うっ! 僕は……僕はただ断れなかっただけで……」


 少年は急に吠えたかと思うと、その後はしりすぼみになっていく。


「なんだよ、アンタだってこいつらの仲間だろうが」


「違うよ、いや、違くないかもだけど、僕はこんな奴らと同類じゃない……人をゴミとしてしかみない、本当のダメ人間たちだよ。僕みたいな弱者を……人としてみてないんだ……」


 ぽつりぽつりと少年の目から涙が落ちる。

 その涙は殺される恐怖によるものとは違う色のように見えた。


 なんだろう、あんまりあいつらのこと好きじゃなかったのかな。そんなの別にどうだっていいわけだけど、でも今思えば雑用っぽいことさせられてたな。荷物もたくさん持ってるし、便利屋みたいな感じかと思ったけど、ただ強制させられてただけだったのか……でも分かる気もするな。俺も地球では陰キャだったからな。よくからかわれたり、俺の筆箱キャッチボールされたりしてたっけ。まぁ大抵は後でバレないように復讐してたけど……。そう考えると、なんだか今更殺すのも可愛そうな気もしてきたな。これが同情ってやつ?




「グルルル……」




 そうこうしている内に、周囲に生き物の気配が漂っていた。

 暗みがかった中、いくつもの獣の光る目が浮かび上がった。

 よく見てみれば、狼っぽい生き物のようだった。

 群れで行動しているようで、たぶん血の匂いに引き寄せられたとかそんなところか。

 これも魔物とかなのかな。


 だがこんなに魔物に囲まれているというのに、少年は座り込んだままだった。

 もう何もかもどうでも良くなったのかもしれない。


 狼らしき魔物は俺たちの周囲を油断なく囲もうとしていた。

 俺は槍を360度にかけて大量に飛ばした。

 周囲の魔物たちは当たった傍から消し飛び全滅した。



「おっかないな、こんな所早く出ないと……おーい、大丈夫かー」


 俺は座り込んだ少年の元まで行き、顔の前で手を振った。

 だが少年はうつろな目でゆっくりと見上げてくるだけだ。


「……もうころして」


「うわ、どうしようかなこれ」


 これどうしたらいいんだよ……やっぱり殺してとっとと帰るか? もう日も暮れてしまってるし、もう流石に帰らないと。でも帰ったところで宿もないんだよな、お金がないから。なんやかんやあったけど、結局キノコも見つからなかったな……変なのに絡まれるし、本当最悪だった…………ちょっと待てよ。


「おい、少年、おきろ」


「……え?」


「もし俺の言うことを聞いてくれるんなら助けてやってもいいぞ」


「……何を言って」


 俺は閃いた。

 キノコを納品しろという依頼だが、そのキノコは何も俺が探す必要はないのではないのだろうかと。俺以外の詳しいやつが探してきて、それを俺が納品すれば結果的には何も問題ないんじゃないか? そして適任者っぽいやつが今目の前にいる。なんか陰キャってキノコ探すの得意そうだし、いけるんじゃないかこれ。


 俺はその旨を懇切丁寧に少年に伝えた。


「赤身キノコって……そんなのどこにでも生えてない?」


「かなり探したが全然わからなかったぞ。探し方が悪かったのか知らないが、とにかくひとつも見つからないんだ」


「まぁMカゴいっぱい程度ならたぶん集めれるとは思うけど……」


「マジで!?」


 やはりビンゴだった。

 夢にも見た赤身キノコが入手できる大チャンス!

 これはもう殺すのどうのこうの言ってるわけにはいかない。俺が今晩宿に泊まれるかどうかが掛かってるんだ。でも一応釘は差しといた方がいいよな。


「よし、じゃあそのキノコを探すって条件で助けてやってもいい。でも俺のことは誰にも言うんじゃないぞ」


「でもどのみちこんな森深くで僕一人じゃ生きて帰れないよ……こう見えても剣の一本振れやしないんだ」


「そんなの俺が最後まで送っていってやるよ。キノコが見つかるんならな」


「……そういうことなら……」



 そうして俺は少年にキノコを見つけて貰えることになった。

 どうのようにして探すのか見ていると、持っていたスコップで木の根元を掘っていた。

 なんでも、緑の芽だけ地上に出ていて、本体は地中に生えている、いわゆるイモ類みたいな育ち方をするらしい。なんじゃそりゃふざけんなキノコじゃねーよ!



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