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 男が襲いかかってきたので、返り討ちにした。

 反射的に守り、お返しに喉を魔法の槍で貫いたのだ。


 ああ! やっちゃったよ。熊を倒したときの手癖が染み付いちゃってたのかな。なんだか流れで殺しちゃった。いや、これは俺悪くないよね。この人は俺を殺そうとしてきたんだ、黙ってやられれば良かったというのか? そんなこと絶対に嫌だ。明らかにこれは正当防衛だろ。だから俺は悪くない。悪くないんだ!


「バジョンブ!」


 誰かが叫んでいた。男の名前を呼んだのだろうか。

 だが申し訳ない、そいつはもう死んじゃったよ。

 ああ、でもどうしよ、これじゃ俺またあの街を出てかなくちゃいけないのかな。……いや、待てよ。ここは森の中だよな。だとしたらここで死人が出たとしても、しらばっくれとけば魔物かなんかに殺されたって勘違いしてくれるんじゃね? そうか、さっきこの人達が話してたのってこのことだったのか、ナイスアイデアですわ。よし、その路線でいこう。こいつらを全員殺して何もなかったことにする。皆殺しだ。


 完全に終わったと思ったが、まだ間に合うことに気づき頭が晴れた気分になった。



「バジョンブ……?」


 男はどさりと地面に倒れて動かなくなっていた。

 女がかすれたような声で彼の名を呟いていた。


 しばらく時が止まったかのように静寂が訪れ、一瞬後、彼らは大火事の現場のごとく機敏に動き出す。


「な、何者なんですかこの人!?」


「ど、どうするの!?」


「……やるしかねぇ」


 リーダー格の男が、腰に差していた短刀を取り出し、俺へと構える。

 その顔からは一切の余裕がなくなっていた。


「に、逃げましょうよ! あの魔法はヤバいですよ!」


「いや、戦う」


「なんで!?」


 提言したメガネの男が、リーダーらしき男に一蹴されていた。


「逃げられるかよ……全員が助かるにはそれしかねぇ。作戦四番だ。構えろ!」


 リーダーらしき男の叱咤で覚悟を決めたのか、残ったメガネの男と女は腰を落とし、武器を構えた。顔こそ引きつっているが、この状況で戦う意志を持てるのは流石だなと、俺のどこか冷静な部分で思った。


「いくぞ! ハアぁぁああああああああ!!」


 リーダー格の男が特攻してきた。

 俺へと肉薄する寸前に、いつの間やら両手に持っていたナイフを二本、俺へと投げてくる。


 ビックリしたが、冷静にバリアで防いだ。

 瞬間、男が真横に移動するのを目の端でなんとか捉える。


 攻撃してくる。


 ガードする?


 いや、もう貫いてしまえ。



 俺は槍を発生させ、男に放出した。

 男の頭部にジャストヒットし、男の顔の中心部を貫いた。


「危ないついでにとりゃ!」


 別の槍を作り、こちらに別角度で接近してきていたメガネの男に放った。

 メガネの男は何をするでもなく槍に頭を貫かれて倒れた。

 何かの作戦だったのかな? 弓は使わなくて良かったのか?

 まぁこれで二たてだ。


「『炎の精よ、生命の力を贄にここに顕現したまえ、ファイヤーバード!』」


 離れた位置から女の声が聴こえてくると、直後、彼女の杖から炎で形作られた一匹の鳥が飛び出した。

 その鳥は羽ばたきながらかなりの速度を持って俺へと突っ込んでくる。

 なんだ、魔法? すごい、俺以外が使うのを初めて見たかも。


「ネオファイヤーバード!」


 俺は適当に似たような炎の鳥を放った。

 俺の鳥は明らかに彼女の鳥より大きく、彼女の鳥と正面からぶつかると、彼女の鳥を飲み込み、そのままの勢いで彼女に直撃した。


 炎の鳥が通り過ぎた直後、そこに彼女の姿はなかった。

 いや、あった。下半身だけが地面に立っている。

 つまり俺の炎の鳥は、彼女の上半身だけをさらい、奥へと飛んでいったのだ。


 おお、適当に撃った割には凄い威力。

 もう自分の魔法に理解が追いつかないな。

 でもまぁ魔王を倒す男なんだ、これくらいはできて当然なのかな。



「終わったか」



 そうして俺は冒険者パーティーを全滅させてしまった。残ったのは可愛そうな死体たちだけだ。足だけはマジで可愛そうだな。

 あーあ、こんなことするつもりじゃなかったのに……かわいそうにな。でも自業自得だよな、今回はホントに俺悪くないだろ? 殺そうとしてきたんだから、自分らがどうなったって文句は言えないはずだ。やることができるのは、やられる覚悟がある者だけなのだ。


「さーて、変に疲れちゃったな。でも誰も見られてないよなこんなとこ? もし見られてたら大変……」


「あ……あぁ」


 目が合った。

 そいつは尻もちをつき、恐怖に歪んだ顔で俺を見上げていた。

 ズボンになぜだか濡れていて、地面に滴れていた。

 おいお漏らししてんじゃねぇよ、くせぇなぁ。でもいい匂いだったりもするのかな。嗅がないけどな。


「あんたは……」


「た、戦う意思は、僕にはありません! 本当です! 本当なんです! 殺さないでください! 僕はあいつらの言いなりで、全然あなたをどうこうしようなんて気は微塵もなくて……!」


 残った男は恥もへったくれもなく命乞いしてきた。

 泣きじゃくっている。

 そういえばいたなこんな奴も、血抜きを頼まれてたんだっけな。空気が薄すぎてすっかり忘れてたわ。

 でもどうする、こいつも殺すか? うーん、どうしましょうかねぇ……




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