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「うぐ……うぅ、もう食べれませーん…………あれ?」
俺は気づけば草原の上で寝ていた。
なぜこのようなことが起きているのか、まるで分からない。
だがそれも一瞬のことだった。
俺の服装を見てみる。旅人風の服に変わっていた。
ああ、なるほど、異世界に転生したんだっけ? 何事かと思ったが、動きやすいようにという配慮なのかな、それに軽いけど丈夫そうでなんとも良さげな服だ。
「思い出してきた……」
一つ思い出すと様々なことが連鎖的に思い起こされた。
俺はいきなり神に呼ばれたかと思えば、異世界に転生して魔王を倒してくれと頼まれた。そうして今ここに立っているのだ。
「でもここが異世界かー、なんとも実感が沸かないというか」
周囲をキョロキョロと見渡してみる。
空は青く、低い緑の草木がないでいる。
風は程よいぬるさで心地良い。
息を吸い込めば、ほのかな青の香りが鼻孔をくすぐり、まるで自然とリンクしたかのような気持ちにさせてくれる。
悪くない、悪くないが、異世界と断言できるものは、現時点で周囲にはないようだった。
「まぁそれはそのうち分かるか。ひとまず魔王を討伐しないとなんだよな。それを最終目標に生きていこう」
そうなると、まずはじめにすることは旅の準備を整えることだ。
魔王というのだからやっぱり本拠地としている場所まで過酷な道のりとなるのだろう。となるとまずは人間の街で支度を整える必要がある。水筒とかお弁当とか。後はまぁ剣とかだな。
「うっしゃあ、なんだか方向性が決まったら燃えてきたああ! いっちょ本気出したりますかあああ!!」
思わずテンションが上ってしまい、大きな声で叫んでしまった。
慌てて周囲に人がいないか確認する。
まぁ流石にいないようだったので、大丈夫だった。はぁ、あぶねぇ、命拾いしたぜ。急にテンション上げるもんじゃないな。
「はぁ、落ち着け。落ち着け俺、ひとまず深呼吸するんだ。ひーひーふー、ひーひーふー、ひーひーふー、ひひふ? 皮膚? そう、皮膚科に今日から直通いッ!!」
渾身の一発ギャグを放ったが、完璧に滑ったので記憶を消去して切り替えていくことにした。
「うーん、でも魔王ってどこにいるんだろう。街もどこか分かんないしな……」
そもそもここがどこか分からない。
何か分かるようなものがあればいいんだけど……
「あ、そう言えば俺魔法が使えるとかどうとか言ってたような」
なんかそんなことを神様に言われたのを思い出す。
魔法といったって漠然としすぎている。
あれなのか、イメージしたら使えるとかそんなことなのか? いや流石に単純すぎるか、何かもっと勉強したり一から理解していく必要があるんじゃないか。
「ファイヤーボール」
といいながらも、俺は魔法を唱えてみた。
なんとなく火が出ればいいなくらいに思っただけだ。
すると、かざしていた手の平から炎が生じ、真っ直ぐ目の前に飛んでいった。
「お! なんかでたぁ!」
すごい、これが魔法なのか。
正直威力は全然だったしかなり拍子抜けだったが、出たのは出たのだ、嬉しい。
「もっとじゃんじゃん出していくか!」
俺は調子に乗ってファイヤーボール百連発を放った。
だがそれをしたところで何がどうとなることはなかった。でもちょっとすっきりした。
「すごいな、これなら魔王の位置が分かる魔法とかも使えるんじゃないか」
魔法の原理が適当に脳で想像するだけでいいのだとしたら、魔王の位置をイメージしただけでその位置がわかるような魔法が唱えられるのではないか。そう思って脳内にイメージしてみた。
「…………」
だが何も浮かばなかった。
なんでだろう、こういう魔法がないってことなのかな。
もしくは口に出さないと発動しないとか? いや、でもさっき百連ファイヤボをしたときは逐一ファイヤーボールと口にしたわけではない。
となると口で唱えるというのは条件には入らないか。
であるならやっぱりそういう魔法がないってことなのかな、それとも使える魔法の強さにも限界があるってことなのか? そっちのような気もするな。レベルを上げていくごとに使える魔法も強くなっていくみたいなRPG的な要素が入ってるとか。その方がファンタジーっぽいし。
「とはいっても街には辿り着きたいしな、うーん」
索敵魔法が上手くできないなら、他の手段を考える必要がある。
あれか、例えば物凄い目立つ魔法を放ちまくって、逆に誰かに来てもらう作戦とかはどうだ? 悪くない気もするが、そもそも分かる位置に人がいるとも限らないしな。それにいたとしても警戒して近寄らないという可能性も考えられる。作戦としては微妙か。
いっそのこと空を飛んでいくとか?
うん、これも悪くないな。上空からなら見晴らしもいいだろうし、なにか目ぼしいものも見つけやすくなるだろう。近くに街があれば一発だしな。それに空を飛ぶってくらいだから、足で歩くよりいくらか早いだろう。
「よし、それでいこう。だが問題は飛べるかだが……」
そう思った矢先、俺の足元はすでに地面を離れていた。




