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第7章 ミラクルなゴスロリ演説はしだいによだれを帯びた

 この小説の明日は非常に怪しいが、おそらく作者は別の作品と平行して、めまいが起こらない限り執筆するでしょう。


 「戦艦ナルヴァ司令官、アンドリュー艦長に敬礼ー!」


 一人が代表して号令をかけ、兵士たちはアンドリューに向かって礼をした。


 彼の目の前には、演説に使われる台と、マイクが一本。


 隅には水を入れたコップが置かれている。


 「諸君! 我々は今こそ立ち上がらなければならない!」


 突然、アンドリューは兵士たちに向かって大声で語りかける。


 「そうだそうだ!」


 兵士たちもまた、彼に続くかのように演説を野次を飛ばして後押しする。


 「先日、私の敬愛する娘、シャルロットが乗っている戦艦を発見した。 そして思った。」


 彼は水を一気に飲み干した。


 「全ての女の子にゴスロリ服を!」


 「うをおおおおおおおおおー!」


 会場はすさまじい熱気に包まれる。


 アンドリューの手には、黒い生地にいたるところにフリルやらレースやらが入ったワンピースが握られている。


 「長い年月をかけて、人類は自分たちの暮らしを営むため、強いては自分たちの生活を快適にするために、さまざまな物を生み出してきた。 私は、その一つであるゴスロリ服に大いに感服している! さあ、諸君! 今こそ世界中の女の子の服を、ゴシック・ロリータで埋め尽くそうではないか!」


 そして会場に巻き起こる拍手喝采。


 しかし、このとき彼は考えていた。


 本当に、彼女はゴスロリ服で喜んでくれるのだろうか?


 いや、ゴスロリ服を手にしたことで、すでに自分の精神が汚れてしまっているのだとしたら、その無邪気な瞳で、自分に笑いかけてくれる日が一生来ないのではないか?


 そんな焦燥に駆られ、彼は悶え始めた。


 もし、ゴスロリ服をこのまま世間が認めることをせず、それを子供に着せている自分が白い目で見られることがあるとするなら、彼は一人でも多くの仲間を集め、新秩序を創造しなくてはならないのだと、これはもはや自分に課せられた使命なのだと思うほかなかったのだ!


 自分は大衆の普遍的な服のデザインに押しつぶされているんだ!


 「確かに、俺は今まで、シャルロットには普通の服を着せてきた。 だが、それでは子供にはこういう服しか着せてはいけないという、実に傲慢で押しつけがましい考え方に、我々は屈しているにすぎないのだ! 諸君はそうは思わないのか?」


 彼は一度、力強く台を拳で叩きつけた。


 「そんな偏った価値観が存在する世の中など、断固として俺は認めないぞ! 必ず、シャルロットにこのかわいいゴスロリ服を着せてやるんだ!」


 「いいぞー!」


 「諸君に問う! ゴスロリ服の何が悪い!」


 彼はますます演説に熱をこめる。


 「古いからか? 古いという理由だけでそのデザインを却下するなど、もってのほかだ! 今はエコの時代なんだよ! 新しい物を着て喜んでいる時代はもう終わった! 流行ファッションだかなんだか知らないが、そういう奴らは地球を汚している! もちろん、それをあおっているファッション業界もだ!」


 兵士たちは次々にうなずく。


 「文明だって、必ず進化しなくてはならないという決まりごとはない。 というか俺的に、これ以上便利になって、どうしようと言うんだ! 今こそ文明退化論を唱える時だ、兵士諸君! 文明が進化し、人類がつけあがる限り、慢心した性格の人間が生まれ続ける! 俺はそこにこそ、地球から清楚な女の子が消えてしまった原因があると思っている!」


 静かになった会場で、彼は最後に一言つぶやいた。


 「清楚系シャルロット、万歳。」


 幾度にもおよぶ歓声が、彼の心を燃やすように包みこむ。


 彼は演説台を後にして、懐から仮面を取り出した。


 それと同時に、兵士たちも仮面をつける。


 もちろん、全員の仮面にシャルロットLOVEの文字。


 「艦長、例の艦隊を確認しました!」


 そのとき伝令が入ってきて、彼の心はますますヒートアップした。


 「よーーーーし! いまこそシャルロットにゴスロリ服を着せるのだ! そのためには手段は問わん。 発進せよーーーーーっ!」


 


   


 

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