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第5章 自分に娘がもしいたら、こう呼ばせてみたい!という卑しい願望がわいた


 彼女は朝食をとり、提督の軍服に着替えた後、ある考え事をしていた。


 「ねえ、タスタニフ。」


 「なんでございましょう?」


 「フランソワ中将は、私のお父様とそっくりなの。 でも、名前で呼ぶのってなんか変な気分だし、落ちつかないわ。」


 すると、彼は意外なことを言った。


 「でしたら、お嬢様の呼びやすいようにされるとよろしいのでは?」


 「いいの?」


 「はい。」


 宰相は笑顔で答えた。


 途端に自分の欲望を爆発させるシャルロット。


 「んーと、じゃあ、お父様!」


 そのままだ。


 「しかしながら、そう呼ばれると一般人と軍人の違いがはっきりせず、指揮系統に混乱をもたらすと思われますが?」


 「もう、なんでもいいんじゃなかったの?」


 彼女は宰相を叱ると、次のネタを考え始めた。


 そして…


 「いい? お父様。 あなたはこれからお父様中将なの。」


 ただお父様と軍の階級を組み合わせただけだった!


 突然呼び出されて、さぞ重要な事だろうと思っていたフランソワはこけそうになった。


 「あの、提督。 それはいかがなものかと? 宰相がなんと言われるか…」


 「お嬢様のご命令だぞ? お父様中将。 逆らうのか?」


 すでに宰相にまで感染している!


 「まあ、宰相がそう言われるのであれば、いたしかたありませんな。」


 彼は微妙に顔を赤くしながら承諾した。


 「ちなみにお嬢様は部下全てに徹底させるお考えだ。」


 「な、それは…」


 「お父様中将、いやなの?」


 一生懸命考えたのに、とシャルロットは泣きそうな声で彼に迫る。


 彼女を泣かせてしまっては、なんとお咎めをくらうか分からないし、彼女に呼ばれて嫌な気分になるものでもなかった。


 「いいえ、提督。 すばらしいお考えですな。 光栄にも提督から私個人に称号が与えられるとは、嬉しい限りです。」


 「本当? よかった! わーい、お父様中将大好き!」


 こうしてフランソワはあだ名で呼ばれることになった。






 「た、大変です! 我が艦に向けて、敵艦が襲来してきました!」


 「どこの艦だ?」


 突然の敵襲にもかかわらず、宰相は円滑に指示をだす。


 「ジェルマン公爵の戦艦、ローデンシュタインです!」


 宰相が言っていた、魔法のコンパスを開発中の国の君主だった。


 「よし、総員配置につけーっ!」


 兵士たちはすぐに持ち場に移動する。


 「提督。 戦闘用意が整いました。」


 彼女は初めて出す指示に、ごくりと唾を飲んで命じた。


 「いっけーーー! お父様中将!」


 シャルロットの掛け声とともに、フランソワのいる右舷から魔法弾が放たれる。


 それはまるで雷のように光を帯びながら、ジェルマンの艦に追突した。


 「くっ! 艦の被害を報告せよ!」


 「申し上げます! 敵は艦の船尾を集中的に狙っている模様! このままでは舵が聞かなくなり、艦もろとも破壊されます!」


 「仕方ない…。 こちらも撃て!」


 やがてジェルマンの指示で、バルモレンスクに広範囲にわたり、砲弾が迫ってきた。


 「提督。 敵は弾を広げ、我らがどちらに舵を切っても逃げられないように攻撃しております!」


 「宰相、助けて!」


 「承知いたしました。」


 彼はシャルロットにかわり指示をだす。


 「指令室よりお父様中将へ! 右舷より敵弾多数! 船尾を集中して防御せよ!」


 「了解!」


 フランソワの声が聞こえ、やがてくるであろう衝撃にそなえ、シャルロットは宰相にしがみついた。


 しかし、いつまでたっても揺れは発生しない。


 「敵弾はまだか?」


 「ご心配なく。 別働隊の戦艦にいるソワン上級大将に各個撃破させました。」


 フランソワはこんなこともあろうかと、事前に手を打っておいたのだ。


 「よーし! 敵弾撃破完了! これより我がフリゲントラントは反撃に出る。 提督より援護を要請します。」


 今度はソワンの声が聞こえた。


 「分かったわ。」






 「どうなっとる! なぜ敵に当たらんのだ?」


 いくら弾を撃ってもかすり傷ひとつないバルモレンスクに、ジェルマンは疑問を抱いていた。


 防御魔法以外の何かが、攻撃を防いでいる。


 煙の隙間から、そのとき彼は別の弾に自分の放った砲弾がかき消されるのを見た。


 「おい、あいつだ! 別働隊の援護をくじけ!」


 ついに彼はソワンの存在に気づき、別の方向へ攻撃を開始する。


 だが、それはフランソワの罠であった。


 「予定通りだぞ、お父様中将。 奴らは我々を攻撃し始めた。」


 「そうか、よし。 敵をそちらが引きつけている間に、私とクロードで背後からローデンシュタインを撃沈させる! しっかり頼むぞ!」


 「まかせておけ!」


 ソワンの攻撃は激しさを増す。


「やはりか! やつら、別働隊が攻撃されていることに気づいた途端、がむしゃらに砲撃を放っているぞ! 弱点は別働隊だ。 このまま攻撃しまくれ!」


 「はっ!」


 ジェルマンはすっかり安心して、鼻歌を歌いだした。


 だが、すぐにそれはとある衝撃によって断ち切られた。


 ローデンシュタインは大きく航路をそらした。


 「何が起こっているのだ!」


 「公爵様! 我が艦が、背後から狙われています。」


 「背後だと?」


 彼は外に出て後ろを見た。


 「撃てーっ!」


 クロードの放った炎が、ジェルマンの目の前をかすめた。


 「被害、拡大しています! 撤退のご命令を!」


 バルモレンスクの攻撃に、ますますキキッと高い音を出してきしむジェルマンの艦は今にも壊れそうだ。


 そこへ、不敵な笑みを浮かべてせまるフランソワ。


 「観念しろ。 貴様など提督の足でもなめているんだな!」


 「くそッ! 仕方ない。 ここは退く! フランソワめ、今に見ていろ!」


 黒い煙を上げながら、ローデンシュタインは去っていった。






 「申し訳ございません提督。 私としたことが、取り逃がしました。」


 しかし、彼はシャルロットに思い切り抱きしめられて、頬をすりすりされた。


 「もう、お父様中将ってば…。」


 「あの、提督…」


 「提督は貴殿に感謝しておられるのだ。」


 宰相は艦が敵に攻撃されそうになったとき、シャルロットを怖がらせないように弾をソワンに破壊させたフランソワの行為を彼女が評価しているのだと言った。


 その一方で、妙な仮面をかぶった集団が近づいていることに、誰も気づいてはいなかった。


 「あれが暁空石のありかを知っているかもしれないと言われる艦…」


 仮面の集団のリーダーらしき男が不気味に笑った。






 

 遊びですけど、一応は報告しておきます。 このたび多忙な身となったため、急ではありますが、執筆を当分の間、中断させていただきます。(12月22から)いずれ更新できるめどがたつと思います。 その際は活動報告にてお知らせいたします。 いつも私の作品を読んでくださっている皆様には大変申し訳ございません。 というわけで、またの機会にお会いしましょう。(こ、これは! あまりにクロードを不幸にしすぎてしまったのか、邪念が乗り移った?? 大変だ! 正月に神社でお祓いしないと~~~!)

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