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第3章 まじかるリディルきらきらお星さまアターック!


 「ソワン閣下、ようこそおいでくださいました。」


 シャルロットたちのいる旗艦、バルモレンスクに搭乗した上級大将は兵士総出で迎えられるなか、いきなりクロードの頬を張り倒した。


 「痛っ!」


 彼はソワンの平手打ちを食らって、床に倒れそうになる。


 「提督のご許可は受けているだと? 嘘をつくなら、もっとうまいシナリオを考えたらどうだ! このにわか将軍が!」


 「うそじゃないもん!」


 シャルロットの声に気づいたソワンは、何を出しゃばっているのかと疑問に思ったが、彼女の着ている服を見て、まさか、と冷や汗をかいた。


 「うそじゃないもん! パトリックは犯人じゃないって、私知ってるんだから!」


 シャルロットは刑事ドラマを見て興奮している!


 「もう、私のことをかばってくれるんじゃなかったんですかーーーー! お嬢様にはがっかりですよ…。」


 クロードは心配して損するどころかこけそうになった。


 「あ、あの、もしかして…」


 「もちろん新しい提督になられたシャルロットお嬢様だ。 上級大将。 いきなり来て提督に挨拶もないのか?」


 彼の後からタスタニフが入ってきた。


 「こ、これはタスタニフ宰相。 いらしたのですか? でしたらごあいさつしたものを。」


 「私は、お嬢様に挨拶せよと言っておる。」


 そう言って彼はソワンに首で合図した。


 「し、失礼いたしました提督。 私は、戦艦フリゲントラント司令官、および第二艦隊上級大将のソワンです。」


 彼はシャルロットの小さな手を取ると、その甲に軽く口づけをした。


 「なっ…」


 あまり慣れていない状況だったためか、彼女はすぐに赤くなった。


 「提督? どうされました?」


 あわてて彼はタスタニフの表情から、機転を利かせてごまかした。


 「しかしお嬢様、このたびは提督ご就任、まことにおめでとうございます。 もうすぐ歓迎パーティーが行われますので、しばしお待ちを。」


 「そう、楽しみに待っているわ。」


 彼女の言葉を最後にソワンは出ていった。






 だが、突然艦内に衝撃が走った。


 「た、大変です。 我が艦隊に敵が押し寄せて来ています!」


 「なに? 規模はどれくらいだ?」


 大臣たちが口々に質問する。


 「はい、駆逐艦が四隻に戦艦一隻。 相手はどうやら海賊のようです。」


 「海賊だと!」


 ヨアヒムはそれを聞いて急いで艦内全体に連絡を取る。


 「現在、海賊が接近中。 規模は、駆逐艦四隻。 戦艦一隻。 これは訓練ではない。 繰り返す。 これは訓練ではない。」





 

 海賊船の中では、部下たちが忙しく動き回っていた。


 その様子をイスに座って見ている一人の少女がいた。


 茶色い髪で、海賊でありながら、なぜか魔法使いのとんがり帽子をかぶり、ローブは星の模様がいたるところについていた。


 手にはひらがなで「りでぃる」 と書かれた魔法の杖が、見事に彼女流にアレンジされ、木の部分がピンク色に染まっている。


 「艦長、準備完了しました。」


 「ありがとう。」


 彼女に報告したのは、海賊の一等航海士である黒い長髪のヴィクトルという男だ。


 まだ若く、シャンドレーの世界では盗賊として名をあげていて、警察長官だったフランソワからもマークされていた。


 「艦長。 敵艦を確認しました。」


  続けて出てきたのはヴィクトルと、兄弟ではないが、ある事件をきっかけにして子弟の契りを結んだ弟、エミールの姿があった。


 髪は短く、いかにもやんちゃな若造といった感じだ。


 「いい、ヴィクトル。 リディルの命令通りに動くのよ。 それじゃあ、攻撃開始よ!」


 「はい。 戦艦クランデンシュペー、起動!」


 しかし、攻撃開始の直前、待ったがかけられた。


 「すと~~~~~ぷ!」


 どうしたのかとヴィクトルがたずねると彼女は言った。


 「なんか戦艦の名前が地味だと思わない?」


 「そうですか? 自分としては、大変気に入っておりますが…。」


 「ううん。 これじゃだめよ!」


 リディルは首をひねって名前を考え始めた。


 「ん~~~。 何かいい名前ない? できればかわいい名前にしたいな。」


 「そうですね。 では、戦艦、スク水小さい女の子に着せてみたいぜひゃっほーう! というのは、ぐあっ!」


 「次、エミール。」


 ヴィクトルは彼女に風呂桶でたたかれノックアウトされた!


 「そうですね。 ここはやはり戦艦、私、魔女っ子リディルちゃん! 小さいけど、いざってときは役に立つんだからね! ぎゃあああああーっ!」


 エミールは彼女のこぶしで粉砕された!


 「もう! 真剣に考えてよ!」


 リディルは、はあはあと息を切らしながら倒れている二人を見下ろした。


 そして再びエミールが案を出す。


 「そ、それでは、戦艦ホワイトジャスティス!」


 「…。 何それ?」


 「いや~。 前回のクリスマスに対抗しようと思いまして。 それで、ホワイトジャスティスです! どうです? 艦長にイメージぴったりでしょ?」


 だがリディルは髪を前に垂らして不気味に笑い、杖のボタンを押し、中から仕込み刀を取り出すと、自分の腹を露出させた。


 「艦長?」


 「ふふふ。 正義なんて、正義なんて…。 きゃ、ははははははは! 私たち騎士なのよ? そうでしょう? お父様…。 ふふふ!」


 彼女は自分の腹を斬ろうとしている。


 「のわーーーー! 艦長の副作用がああああー! エミール、止めるんだ!」


 説明しよう。


 「父であるアンドリューに拾われたリディルは、彼からこの世の正義という言葉がいかに歪んでいるかを学んだことが以前あり、今でもどす黒の部分がたびたび副作用として出てくることがあるのだという…。」


 「のんきに説明なんてしている場合かーーーーっ! 艦長の切腹を止めろーーーーっ!」


 そうして彼らが騒いでいたとき…。


 どかあああああああん!


 「艦長! 敵の砲撃です! ご命令を! ってきいてねえーーーーっ!」


 「ふふふふっふふふふふふふふ!」


 「うふふふ! リディルちゃんは偉い子ね。 そう。 この世にあるのは絶望のみなの! エミールおばさんが教えてあげるわ!」


 エミールが彼女の隣ではしゃいでいる!


 「なに遊んでんた!」


 「ぐは!」


 ヴィクトルはなぜかオカマ口調の彼をたたき、リディルを正気に戻すと今度こそ戦闘を開始するように言った。


 「艦長! このままではいけません!」


 「わかったわ! いくわよ~~! キラキラお星さまあた~~~っく!」


 リディルは持っている杖をかざして、先端についているハートの水晶を輝かせようとスイッチを入れた。


 こうすることで、艦内の全ての区域に攻撃命令を指示できるのだが…


 「あ、あれ? 光らなくなってるよ?」


 「そんなはずはありません。 もう一度やってみてください。」


 いつもは振ることで、リディルの声で魔女っ子アタックという音声が杖から流れることになっている。


 彼女はもう一度振ってみた。


 「…。 ジ、ジジジ…。 むァーぢょっくォうぁた~~~っく…。」


 少女とはほど遠い、野太い声がスローモーションで流れてきた。


 「うわあああああん! 魔女っ子リディルちゃんの声が、呪われた人になってるよーーー!」


 電池切れだった!


 「あの、艦長…。」


 わなわなとふるえるリディルの手に、怒りがこみあげているのが分かった。


 「もう! 電池交換ぐらい、しときなさ~~~~~~い!」


 ばああああああああん!


 その瞬間、艦にフランソワの砲撃が当たり、海賊船は粉砕された。






 「で? 結局名前の方はどうなったんですか?」


 脱出用のパラシュートを広げながら、ヴィクトルがたずねた。


 「もう、切腹ホワイトに決定なんだから!」


 「ほ、切腹とホワイトって、どうすれば混在できるんですか…。」


 さらに怪しい名前になってしまった!



 

 

 ああ、まずい…。 題名がもはやマンガになっている。

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