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第2章 はじめての艦内(おつかいではありません)

 次回はシャルロットからのクリスマスプレゼントがあります。(一週間前で切りがいいので…)これは、もはや小説ではないと、そう思う方も多いと思います。キャラぶち壊しです。これ以上言うとネタばれになるので、お楽しみに。


 着替えたシャルロットは、もう済ませたから入ってもよいと兵士たちに言うために外に出てきた。


 「おお、お嬢様。 なんとかわいらしいお姿でございましょう。」


 「あ、ありがとう…」


 彼女はまともにヨアヒムの顔を見る事ができないまま返事をした。


 「ところで、この艦の扱いをご存じで? よろしければクロード少将と、フランソワ中将の二人に案内させますが?」


 よく考えれば、空に浮いている船など見るのは初めてで、どうやって動かしているのか見当もつかなかった。


 「ええ、お願いするわ。」


 しかし彼女はその直後に老人を呼びとめた。


 「待って。 今、フランソワって…」


 「私になにか?」


 まぎれもなく、そこにいたのは長年離れていたシャルロットのもう一人の父だった。


 彼女と同じ金髪で、まだ中年よりほんの少し若い顔つきをしていた。


 アンドリューは彼女の父親だが、正確にはとある孤児院で、シャルロットが虐待を受けていたところを引き取っていただけにすぎなかった。


 「ああ、お父様!」


 しかし、彼に抱きつく彼女に、フランソワは驚きの表情をあらわにして、大臣たちを見る。


 「おやめくださいお嬢様。 私のような男に。」


 「やっぱり、覚えてない…」


 がっかりするシャルロットだったが、気持ちをおさえて言った。


 「分かったわ。 案内して。」






 彼女は二人を先頭に、先ほどのステンドグラスの間に入った。


 「いいですか、お嬢様。 この船は魔力で浮いています。 しかしご用心を。 魔力が足りなくなった場合、一定の時間内に賢者たちによって力を供給しなければ、艦は沈没します。」


 クロードが丁寧に説明してくれる。


 彼はフランソワよりも若く、ここ最近入隊したのだが、優秀さを認められ、一気に少将にまで昇進した。


 「敵への攻撃はどうすればいいの?」


 彼女の意外な反応に、クロードは一瞬黙り込んだ。


 少女なら、戦いは嫌いというイメージがあったからだ。


 しかしシャルロットはこう見えて意外と自分の信念を強く持つタイプで、これは貴族である父の教えでもあった。


 「はい。 攻撃するさいには、我らが剣に秘められている魔力を使い、この攻撃用のレリーフに武器を突き立てます。 そして詠唱するのです。」


 彼が示した場所には、鉄の床に何やら複雑な模様の丸型の出っ張りがあり、艦にはいたるところにいくつも攻撃できるレリーフがあるという。


 「ただし、攻撃する能力は兵士の魔力の強さに比例します。 また、攻撃も防御も、行うごとに魔力を消費します。 むやみに無駄使いしませぬよう。」


 「わ、分かったわ。」


 シャルロットはいきなり自分の立場が変わった事もあって、半ば緊張した声で答えた。


 「試しに一度だけ、お使いになられます?」


 ドキドキと、心臓の鼓動を速めて、彼女はうなずいた。


 「では。」


 クロードは目の前にある陣の上に立つと、銀のレイピアを抜いて、それを突き刺した。


 途端に、緑色の奇妙な光が陣を照らし、盾のような紋章となって浮かび上がった。


 「はあ!」


 クロードのうなり声とともに、ドカン、と外でものすごい音がしてシャルロットは入口の方を眺めた。


 艦の大砲から、きりもみ回転しながら、まるで花火のようにオレンジ色の炎が放たれ、そばを流れていた雲の軌道を狂わせた。


 「す、すごい!」


 「中将や大臣のものはもっと強力です。」


 「本当に、こんなすごい船が私のものなの?」


 「もちろんですとも。」


 彼の笑顔に、シャルロットは一瞬ドキリとした。






 魔力砲を放ってしばらくして、艦の中から中年の男の声がした。


 「こちら、戦艦フリゲントラント! 旗艦バルモレンスク。 まもなくそちらと我が護衛艦隊が合流するが、提督の許可なき発砲は禁ずる。 やったのは、クロード少将。 貴様だな?」


 一体どこから聞こえてくるのかと思っていると、声がするたびに、奥にあるイスの上の紋章が光っているのが見えた。


 「クロードよりソワン上級大将へ。 すでに提督の許可は得ています。 それも試し撃ちです。」


 上級大将とはヘルムンダで言う、大将よりも一つ上の階級だ。


 「バカ者! 貴様のせいで、我が艦隊はひやひやしながら回避運動に努めたのだ! まあ、よい。 すぐそちらに向かう。 そしたら見ておれ…」


 やがてレリーフはもとの灰色に戻った。


 「わあ…」


 シャルロットはそのレリーフに関心を示したのか、試しに適当にしゃべってみた。


 「あーあー。 左舷よーし。」


 するとしばらくして、ソワンの返事が返ってくる。


 「どうした。 クロードか?」


 「イエス! ベイベー!」


 彼女は楽しくなって、陽気にはしゃぎ始めた。


 「貴様。 私をバカにしているのか!」


 「ィイェェェェス! シャルは今日も元気です! ベイベー! マドレーヌが食いたくなっちまったぜー!」


 「もしもーし! クロードか? クロードなんだろ? いい加減に悪ふざけはよせ!」


 「はううううっ! お腹すいた~。 お菓子食べたいなあー…。」


 「お嬢様! だめですよ!」


 ついにクロードが気づいて彼女の口をふさいだが…


 「お菓子だと? そんなに食べたいなら、貴様の口に忘れられない思い出になるように詰め込んでくれる!」


 ソワンの怒りの声がスピーカーから響いた。


 「はあ、あの方は怒らせると後が恐い。」


 「そうよ、ダメでしょうクロード。 いたずらしたら怒られるわ。」


 「はい? あの、いたずらしたの、お嬢様ですよね?」


 クロードは突然顔を赤くした彼女に、抱きつかれた。


 「あ、あの、お嬢様?」


 「お嬢様じゃなくて、提督でしょう?」


 「あ、はい、すみません、提督…」


 彼は急いで言いなおしたが、なんだかシャルロットの様子がおかしいことに気づいた。


 「あの、提督? どうされました?」


 だが彼女はクロードに、そっと耳打ちする。


 「今夜、私と一緒に寝て。 一人じゃ、その、こ、怖いの…」


 「はあ。 構いませんか…」


 いまいちぱっとしない彼の返事に、彼女はむーっとした顔になる。


 「ちゃんと聞いてるの?」


 二人がそんなやりとりをするなか、戦艦が到着した。


 しかし、彼はまだ知らなかった。


 シャルロットがいかにいたずら好きであったのかを!


 


 


 


 


 

 

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