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第1章 シャルロット提督になる

 とりあえず更新です。 ゆるいとか言いながら、戦闘シーンは力が入ってしまったような…。 まあ、遊びですからね。


 ゴー…


 何の音だろうか、耳に重くのしかかるようなものを感じた。


 体にまとわりつく冷たい感触。


 しかしそれはさらりとしていて、すぐに消えてはまた現れる。


 風の音のようだ。


 しかし、嵐にしては規則性が若干ことなり、常に一定の方向に強く吹き付けていた。


 「んん…」


 彼女は意識を取り戻したが、目を疑った。


 木の床に寝そべっている視界を横に向けると、水平線のかなたまで続くのは、青い空。


 そして自分がどうやら空を飛ぶ巨大な船の上に乗っていることも分かった。


 「ここは、どこなの? お父様? リディル?」


 二人の名前を呼んだが、返事はない。


 どうやら彼女だけこの得体のしれない場所に来てしまったようだ。


 「すごい。 私、空を飛んでいるのね。 小鳥さんみたい…」


 「これはこれは、ようこそおいでくださいました。」


 「誰?」


 彼女は突然の声に警戒するが、見覚えのある顔と老人の声にほっとした。


 「ヨアヒムさん!」


 彼は以前病気になったシャルロットを治療した、ドイツからやってきた医者だった。


 名をヨアヒム・リヒトケルナ―と言い、白い口ひげが山のように盛り上がっていた。


 しかしなぜ彼がこんなところで、しかもおかしなローブを着ているのだろう?


 「なぜ私の名を?」


 彼は全くシャルロットを知らないのだと言う。


 「覚えてないの?」


 一体ここはどこなのかも気になった。


 「とりあえず、中へ。 大臣がお待ちです。」


 大臣、と彼女は首をかしげたが、すぐにその意味が分かった。


 中は空の光がステンドグラスから差し込んで、たくさんの白い鎧を着て、黒いマントと銀の兜の頂に青い羽根飾りをつけた男たちが真ん中を開けるようにして左右一列に、向かいあって並んでいる。


 その奥には空席の大きなイス。


 彼女はその男たちの歓迎を受けた。


 「ようこそおいでくださいました。 我らが新しき君。」


 彼らはえ、え、と困っているシャルロットに深々と礼をする。


 そして次に彼女は悲鳴を上げた。


 「ああ、あ、いやーっ! 口が白く光る人、いやああああーっ! あと、変な文字を日記帳から浮かべてる変態、いやあああーっ!」


 リディルの日記帳を奪った老人が現れたからだ。


 「おやまあ、どうされました?」


 ヨアヒムにしがみつくシャルロットに、先ほどとは違って優しく話しかける老人。


 しかも彼はなんとも豪華な赤いローブをまとっている。


 「あなたは、誰なの? 教えて。」


 ここにきてから分からない事だらけのシャルロットの頭ははじけてしまいようだった。






 「それ、本当なの?」


 「はい。 この老人はあなたの宰相であらせられるタスタニフ様です。」


 そして、とヨアヒムは付け加えた。


 「あなたは、この戦艦バルモレンスク号の最高司令官、いわば提督です。 お嬢様。」


 「ばるもれんすく? 何かのお菓子の名前かしら? って、ちょっ、えーーーっ!」


 シャルロットはさらに混乱した。


 「最高司令官、って私が?」


 はい、とヨアヒムは笑顔で答える。


 「そ、そんな、無理よ…。」


 「心配はございません。 宰相のこの私がお嬢様をサポートいたします。 なんなりとご命令を。」


 ご命令を、と言われて金持ちに育った彼女は戸惑ったが、次第に貴族の血が騒いで優越感を止められなくなった


 「じゃ、じゃあ、えーと。 なんで私が提督なの?」


 とりあえず素朴な質問をしてみる。


 「我が国では今内乱が続いております。 しかしこのままでは民が敵に殺されます。 公爵たちの野望を止めなくては。」


 彼の話によると、シャルロットはヘルムンダという国の中にあるシャルツ=テリアンという領土の君主を任されることになったために、急きょ異世界から召喚されたのだという。


 「誠に勝手ながら、あなた様を提督としてお迎えするにいたりました。」


 また疑問が増えた。


 「公爵たちの野望って、なに?」


 するとタスタニフは一冊の本を取り出し、それを読み始めた。


 ― かつて、この世にはどんな力をも凌駕すると言われた、空をさまよう暁空石なるものが存在した。その身は黄金に輝き、手にしたものは世界を支配する。 しかし、その力を悪用するものが現れた。 一度は英雄によって止められ、暁空石は再び広大な空を舞っていったが… ―


 「最近では一部の公爵が魔法のコンパスを開発中で、今にも石のありかをつきとめようかという勢いです。」


 「なら、その人たちを止めないと。」


 だがタスタニフは首を振った。


 「そう簡単にできることではございません。 暁空石は常に動き回っています。 我らの使命はお嬢様にそれを探していただき、どの領土の国よりも早く見つけ、ヘルムンダ国王に献上することです。 残りの領土の公爵たちは、あの石を悪用し、自分が王を名乗るつもりでいます。 なんとしてもそれだけは阻止してほしいのです。」


 「でも、それにはどうしたらいいの?」


 「でしたらまずシャルロットお嬢様、兵士たちにご自身の立場を示すためにも、こちらの軍服にお着替えくだされ。」


 彼は彼女にある青い服を差し出した。


 それは、シャルロットの世界で言う、海軍が着る服によく似ていて、彼女が女性のためか、下はズボンのかわりにスカートになっていたり、制服の胸元には白い小さなリボンがついていた。


 ご丁寧に海軍の帽子の上まで、白いバラのレースで可憐に装飾されている。


 「どうされました? お気に召しませんでしたか?」


 いつまでもその服を見つめて動かないシャルロットに、タスタニフは彼女の頬が微妙に赤くなっているのに気づいた。


 「は、恥ずかしい…」


 「なんです? よく聞こえませぬが?」


 彼女は服をつまんだまま、うつむき加減に小さく声を出すと、臣下と将軍たちに言った。


 「出てってーーーっ!」


 「し、失礼しました!」


 将軍たちは、ヨアヒムとタスタニフの背中を押して、足早に立ち去った。




 


 


 


 

 

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