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第8章 みそ汁とバイクのコンビネーションは教科書に載せるべきだ

 一つの戦艦が、バルモレンスクに向けて近づいてきていた。


それもある程度近づいた瞬間に、船員の約半数は艦を降り、護衛型の小型船に乗り込んでシャルロットのいる船に接岸しようとする。


―「緊急事態発生! 当艦に謎の艦隊が護衛艦を展開させ接近中! 総員ただちに戦闘配置に着け!」―


フランソワの号令が艦全体に響きわたり、兵士たちはせわしなく動き始める。


だが、気づいた頃には敵と思われる集団はすでに煙幕を張りつつ、バルモレンスクの視界を奪い、その隙をついて船に乗り込んできているようだった。


「誰だ? この私のサーベルで斬られたいやつは…。 行くぞクロード! 我々の強さを思い知らせてやるのだ!」


「了解ですお父様中将!」


彼らは侵入してきた敵のいる艦尾に向けて兵士とともに疾走する。


それが罠とも知らずに…


侵入した兵士たちがほとんど船に乗り移った頃、一人の変態ががら空きになった船頭に飛び、黒いゴスロリ服を握りしめた。


「待ってろ、シャルロット。 必ずお前にこのゴスロリ服を、いざゴスロリ!」


おそらく彼の周りを囲んでいるのは選抜された精鋭部隊らしく、素早い動きで艦内の護衛兵たちを倒してゆく。







「タスタニフ、日本では魚を生で食べるってホント?」


「はい、それはもう、新鮮なままいただくのでございます。」


のんきなおしゃべりをしているシャルロットは、怪しい仮面集団が近づいていることなど全く予期していなかった。


「いました艦長! あの刺身を新鮮なまま食おうとしている女の子です! スカートがあとちょっと短かければと、残念に思いました!」


「何者だ! バかな、敵はあの二人がとめているはず…」


シャルロットはすっかりおびえて老人の影に隠れている。


「だ、誰、あなたたち。」


アンドリューはにやりと笑った。


「シャルロット、やっと会えた。 さあ、このゴスロリ服を着てもらおう!」


「ひゃほーーーーー艦長を胴上げしろーーーーーーっ!」


彼がそう宣言した瞬間、部下がわいわいと無駄に騒ぎ出した。


「そうだーーーっ世界中の女の子にゴスロリ服を! あのボリューム! あの繊細優美な純白なレースとフリルの煌めき! 覚えているかーーーーーー! 我々には幼い知性で満たされた空間を作るという使命があるのだーーーー!」


「お嬢様に何をさせる気だ!」


タスタニフは謎の集団に立ちはだかった。


「黙れ神聖キャベツじじい! もっと刺身と窓枠の痛みを知れ! 毎日ごしごし拭かれたり、斬られたりする苦痛が貴様にはわからないのか? これからは和風料理はやめて、もっとクリームをなめまわすことだな!」


シャルロットはアンドリューの指摘に彼は百パーセント変態だと思った。


「もう一人のお父様、気持ち悪い…」


「さあ、シャルロット、このゴスロリ服を着てくれ!」


「た、タスタニフ、ねぇってば!」


「し、神聖キャベツじじい…わからぬ、理解できぬ…」


彼はひどく落胆していた。


「いやあああああーっ! お父様ーーーーーっ!」


その時、彼女の断末魔をフランソワは確かに聞きつけた。


「この私としたことが! クロード、ここにいる奴らはすべて我々の目をあざむくためのおとりに過ぎん! お嬢様が危ない!」


二人は体力の許す限り猛スピードで船頭を目指した。


だが二人が見たのは思わぬ光景だった。


文、文、文!


「ようやくきましたな、お父様中将。」


フランソワが見上げるとヨアヒムがいつぞやのバイクにシャルロットを乗せて、ついでに妙な仮面をかぶった男を一人で乗せていた。


そして、ゴスロリ服を着せられて涙ぐむシャルロットと、そのまわりには何人もの仮面の兵士たちのくたばった姿があった。


「そのバイク、治ったんですか?」


しかし、あとから入ってきたクロードの質問に、ヨアヒムは意外な言葉をかけた。


「黙れロリコンが! ガソリンまみれのマラリアめ!」


「えっ?」


お次はフランソワからも同じような言葉を浴びせられ、クロードもひどく落胆した。


「そうだぞ、ロリコンが! 汚らわしいキャベツめ。」


不敵な笑みでフランソワがあざける。


「なぜだああああああ! 明らかに警察と医者の言葉じゃないですよーーーー!」


ついにはタスタニフまでもが起き上がって言った。


「この汁を吸い上げるそうめんの気持ちがお主にはわからぬのか! 吸え! このシャンドレー産のみそ汁を!」


「いやああああああーっ!」


彼はみそ汁を強制的に吸わされて気絶した。


「クロードひどい! 私のみそ汁で気絶した!」


シャルロットはあまりの彼の反応に機嫌を悪くしたが、同時にゴスロリ姿をクロードに見られずにすんだために安心した。


「お似合いですよ、提督。」


フランソワの言葉ながら、彼女は頬を紅く染め、シャルロットの眉は複雑に波打っている。


「しかし、なぜこんな服を? それにこのみそ汁はお嬢様が?」


「うん! びっくりした? 私、ずっと前から練習してたのよ。」


その割には気絶しているクロードを見て、フランソワは後ずさりした。


「どこへいくお父様中将。 貴様も吸え!」


「宰相、ご勘弁を!」


「…。」


「うわあああああん! お父様中将も気絶したーーーーーっ!」







熱い。


何やら口の中が異様なぬめりで満たされているのがわかる。


そう、このとき彼の体にはみそ汁という名の怒りの血液が、まさに身体中を支配していた。


―「子供を奪ったクロードを今すぐ殺してやりたい!」―


しかし、本能に従っただけの自分が、殺しなどしたところで、キャベツは決して認めはしないだろう。


「って、なんで私が人さらいなんですかーーーーーっ! それにさっきからキャベツって何なんですか! そこには社会という文字が入るはずでしょう!」


そして…


つぶれろ! 我がバイクで! そして真の男ならば、タイヤではなく、バイクの車体そのもので潰れろ!」


文文文文文文文文文文文!


 この日、一人の変態がわけの分からない欲望のために艦に侵入し、一人のロリコンがみそ汁とタイヤの前にもろくも崩れ去った。


 「こら作者! そんな支離滅裂な展開が許されると思っているのか!それにブンブン目の悪くなりそうな文字の並べ方するな!


しかし、作者の耳くそはかつてないほどに膨張していたために、何も聞こえるはずもなく、特に苦労の絶えない男の声を遮断する能力を秘めていた。


 「ばっちり聞こえてんじゃないかーーーーーっ!」


 「くそっ! 今回は失敗したが、次こそは必ず!」


 正気を取り戻したアンドリューは、いや、こいつはすでに常時正気ではないが、とにかく一度艦内から退却することにした。


 そう、シャルロットを一層ゴスロリにするために、新たなコスチュームの開発に着手することにしたのである。


 また、ソワンというひひじじいは、のんきに紅茶をすすっていた。


 「誰がひひじいいだ! 今回俺は非番だ! それと、諸君。 作者が言ったからといって、キャベツやみそ汁を粗末にするなよ?」


  「よくわかっておるではないか、ひひじじいよ。 ではお主にもこのシャルロットお嬢様特製、シャンドレー産のみそ汁を吸わせてやろう。」


「しまった。」


ソワンはこの言葉を発したことを後悔した。


「吸え! そして悶えろ! この作者のパソコンのように!」


「いつの話だーーーーーーっ! っていうか、作者! どんなパソコンの使い方を…うえぇえぇえぇえぇ!」


ースペシャル企画の予告ー


「はははははははは!」

「なにいきなり中国時代劇の黒幕のような声で笑っているんですか、宰相。」

「もうすぐ血知の日だと思ってな。 お父様中将の反応が楽しみじゃのう。」

「へ? 父の日ですよね?」


だが宰相はあくまでも自分の主張を通したかったようだ。

「バカ者が。 お父様中将が純粋な愛に感動すると思うのか? 奴はそういう男ではない。 お前と、ねぎぬたを箸でつつくお前いがいはな。」


「だから血知の日なんですか?」


宰相は箸でたくあんを強く挟み込んだ。


「そう、このしたたるたくあんの汁のように、確実にお前の顔を黄色く染めるだろう。」


「つまり血知の日だから、私を断罪しまくると言いたいのですね? でも問題はお嬢様ですよ。 ちゃんと中将にプレゼントを作っていればいいんですが…。」


「案ずることはない。 お嬢様はすでにクリスマスよりも強力な、―シャルロットのかわいい血知の日―、なるものを計画中だとおっしゃっていた。」


クロードはショックを大いに受けた。

「何やらかわいいものとそうでないもののギャップが激しいようですが…。」


「とにかく、この果てしなくしょうもない物語を読む者たちよ、刮目せよ!」

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