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詩織の恋の切っ掛け / 詩織の嫌なところ / 柚葉の決意

◆吉田詩織 視点


「祐樹、先に帰っていいよ?この状態の慎太君、ほっておけないから。ご家族の方帰って来られるまでいたほうがいいかなって」

「・・・いや、さすがに吉田一人置いておけないだろ。それにお前、慎太の家族と会ったことないんだから、ちょっと気まずいっしょ。そのうち妹ちゃんが帰ってくるだろうからそれまで、俺が残るよ。今日はお前先に帰りなー」

「そ、そうだよね。そしたら祐樹ごめんね?慎太君の事、よろしくお願いするね。」


さすがに下心出ちゃったかな。し、心配してたのは本当だよ!って誰に言い訳してるんだろ。恥ずかしい。まあ、わかるよね。私が慎太君の事、気にしている事。


高1の時にカラオケボックスでやったクリスマスパーティーの時の事だった。当時はあまり慎太君と話したことなかったけれど、祐樹と仲が良かったからせっかくだからお誘いしたのだった。


そのクリスマスパーティーは参加者がさらに友達を呼んで沢山の人が来ていたのだけれど、他校の生徒で不良っぽいチャラチャラした人たちも参加してて、彼らに絡まれて私は連れていかれそうになったことがあった。


----------------


パーティーの終わりくらいでドリンクバーに飲み物を取りに行くと、何人かチャラチャラした不良っぽい人たちが付いて来た。


「詩織ちゃんだっけ?ちょーかわいいじゃーん!めっちゃ好みだわ!いや、好きだわ!」

「おー、タケちゃん、ついに恋に芽生えちゃった?応援しちゃうよ?」

「うわ、青春だわ!アオハルだわー」

「お前ら、詩織ちゃん俺のだからな!とりま、このままデート行ってくるわー」


いきなりぐいぐい来て、正直怖かったけど私、こういうの結構はっきり言うタイプだからちゃんと断ったの。だけど・・・

「ごめんなさい!私、いきなりは無理っていうか、軽い感じでデートとか行かないから!」

「軽くないよー。めっちゃ真剣。一回ホテル行こうよ!マジ、俺に惚れるから!」

「タケちゃんの誘い断るとかないわー、何ならみんなで違うパーティタイムしちゃう?」

「お、いいじゃんいいじゃん!」

「だから俺のだって言ってるべ?」


みたいな感じで全然話聞いてくれないし、腕つかまれて本当に怖かった。そんな時、


「頭おかしいんじゃないか?おまえら?サカってるんじゃねーよ。好き?恋?青春?引く。どん引きじゃすまないほどに引く。」


って慎太君があらわれたのよね。なんだか慎太君、ニコニコした顔で目が笑っていなくて、絡んできた男子よりむしろ一番雰囲気怖かったのを覚えている。


「あ”あ”!!?なめてんのかてめー!!」

「なめてねーよ。汚いじゃん。お前の事なめたら腹壊すとかじゃすまないって。きめぇな。取りあえず警察呼ぼうか?そこに監視カメラあるだろうが。目ついてねーの?」


いや、慎太君、目!目!見開いてるから。瞳孔開いてるから。怖いから!


「っっっ!!クソ、テンション下がったわさすがに、マジ空気読めねーなこのガキ」


うわ、男子の喧嘩ってこんな怖いの?とか思ってたら、その人たちが暴れて一瞬ヒヤッとする場面があったのだけど、すぐに祐樹が駆けつけてくれて、他の男子をまとめてくれて、皆で追い出してくれた。その後ぼそっと慎太君が、


「いや、怖。なにあの人達、怖。」


って慎太君言っているのを見て、私笑っちゃったのよね。だって、さっきまで慎太君が一番怖かったから。


私って単純だなーとか思うけど、ドラマみたいに不良っぽい人たちから守ってくれてその時から、慎太君は私にとって特別な存在だった。


---------------


私は慎太君の家を出て駅に向かおうとすると、たまたま隣の家から出てきた女の子と目があった。かわいい子だなと思ってぼーっと見てると、その子はすごく驚いた顔をしてこちらを凝視しているようだった。


誰だろうと思って軽く会釈をすると、すこしの間をおいてその子が遠慮がちに近づいてきて話しかけてきてくれた。


「こんにちは。えっと、いきなりごめんなさい。隣に住んでる佐々木柚葉と言います。その、小雪ちゃんの友達ですか?」

「え?小雪ちゃん?あ、慎太君の妹さんかな?えっと初めまして。私は吉田詩織といいます!今日、慎太君、風邪ひいちゃってすごい熱出てたからお見舞いに来ていたんです。」

「そ、そうなんですね。慎太・・・風邪・・引いて・・・・」


最後のほうに何か小声で話していたけれど、良く聞き取れなかった。


「解熱剤も飲ませましたし、今は良く寝ていますので大丈夫だと思います。」

「そ、そうなんですね。ごめんなさい。いきなり話しかけて、し、失礼しますね。」


この子ももしかして、慎太君の事、好きなのかな。。。と、思った。そう思った時モヤっとして本当は祐樹もいる事や友達であることを伝えようかと思ったけど、私の嫌な部分が素直に伝える事を阻んで、噓じゃないけど意図的に言葉を省略して話してしまっていた。


そんなことを考えながら話していたら、女の子はそのまま行ってしまった。


(もし好きなら、好きな人が寝込んでいたらお見舞い行くよね?お隣さんということは気心も知れてるだろうし。ちがう・・・のかな?)


・・・なんて、何考えてるんだろ、私。ちょっと自己嫌悪だぁ。いけない、いけない!あれね、今日はなれない事して気持ちの浮き沈みが激しいや。早く帰って、ゆっくりお風呂に使って気持ち落ち着けよう。


そう思って、私は駅に向けて歩き始めた。


-------------

◆佐々木柚葉 視点


心臓の音がドキドキして苦しい。あの子、慎太の新しい彼女さんだろうか。ううん。そうじゃなきゃ、1人で慎太のうちに来ない・・・よね・・・。嫌だ・・・そんなの嫌だよ・・・。


1年前、私が慎太にお別れを言った時、慎太はこんな気持ちだったのかな?苦しいよ。


・・・・違う。慎太はもっと・・・もっとだったはずだ・・・。だって、お付き合いしてたのに私は慎太を裏切って他の人の事を考えてしまったんだから・・・・


慎太は何も・・・何も・・・裏切ったり筋違いの事をしていないもの・・・・。もう、元通りにはなれないのかな。


・・・それも違う。まだ、さっきの子が彼女さんだと決まったわけじゃない。それに元通りでなくてもいい。新しく、慎太と絆を結ぶんだって決めた。もし、慎太が他の女の子と一緒になっても。私は諦めないって決めたもの。


慎太の事、一番に考えて動いていくって・・・・苦しくても、悲しくても、行動しなきゃいけない時はちゃんと行動して、待たなきゃいけない時はちゃんと待つって決めたんだから。


私、いま、とっても重いんだと思う。それでも私は、慎太の事、誰よりも好き。愛してるから。その気持ちだけは嘘を付けないから・・・・。


ちゃんと向き合うんだ。前に進もう。

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