案の定の風邪ひき / 恋愛はただの毒 / まさかな
「・・・・風邪引いた」
学校を休んでベッドの中で独り言ちる。いやぁ、若者の体力で跳ね返せると思ってた。
というか雨に濡れて漫画みたいに風邪ひくと思わなかった。ベタすぎる。
それにしても柚葉のやつ、駅から家までとは言え、彼氏持ちのくせして別の男と一緒に帰るとか何考えてるんだろ。まあ、俺と付き合っていた時からそうだったと言えばそうだが、、、。
そんな不誠実な奴じゃないと思ってたんだけどな。
まあ、どうでもいいけど。
体調悪いからか、柚葉と会ったからか、思い出したくもない事が頭をめぐって離れず、余計具合が悪くなってきた。
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柚葉と別れた数日後、いつだったか駅で柚葉に紹介された田中ってやつが同じ駅で待ち伏せしていた事があった。やつは俺のところに来ていきなりまくし立ててきやがった。
「君、佐々木さんの彼氏だよね?君に言いたい事が会って待っていたんだ。率直に言おう、佐々木さんに近づかないでほしい。僕達、付き合う事になったんだ。付き合う前だったけれど、お互いに両想いだったこともわかっていたから、キスもしたし体も重ねてお互いの愛を確かめあっている。」
何を言っているんだと正直思った。彼氏・・・?振られたつうの。
キスもしたし体も重ねて?何だそれは・・・まさか浮気していたのかよ。キスはしていたけれど、柚葉の事を大事にして体を重ねるまでしたこともないのに、こいつとはしてたってのか。吐き気がする。
「佐々木さんは君に対して何も思ってない。ただ、君への筋を通せなくて、君の存在が彼女を苦しめているんだ。もう君の入り込む隙間もない。あきらめてくれ」
ああ、つまりなんだ?前に紹介したときはすでに出来上がっていて、こいつら2人して俺をバカにしてたってことか?
「僕としても、僕以外の男と佐々木さんが付き合っている事実は不快なんだ。君に黙って彼女を抱いた事は悪いとは思うが、これが結果だ。理解してくれ」
今まで柚葉と一緒にいて、そんな性悪な事をするやつだと思わなかったし、正直信じられなくもある。だけど、実際俺は振られている。駅で2人で一緒にいたのも見ていることも考えると、何が本当なのかわからなくなる。
・・・・いや、違うな。きっと本当なんだろうよ。俺が信じたくないだけで。
っは・・・ふざけやがって。
「人の彼女に手を出す下衆野郎が、わざわざご苦労だな。なんだ?嫌味かよ。すでに振られてるよ。まあ、浮気するような奴なんてこっちから願い下げだ。」
「え?振らて?いや、だったらなんで」
「あ?ごちゃごちゃうるせえな。邪魔だから消えろよ!」
本当にふざけてる。何が恋人だ。何が恋愛だ。何が大事な人だ。何が、何が、何が!!!
子どもの時からずっと一緒にいて、大切にしてきて、それなのに3カ月かそこらで出会ったこんな男と浮気されて。ふざけるなよ。なんなんだよ。
あぁ・・・そうかよ。これだけ長い間、互いを大事にしてきたはずの柚葉がこんななんだ。
好き?すぐ覚めて、別れて、今まで大事にしていた相手の関係や過去の思い出なんかを投げ捨てるだけじゃねぇか。
愛してる?詐欺かなんかの言葉か?その言葉に責任を持っているやつがどれだけいる?
恋人同士?なんの意味がある?その時間が長ければ長いほど、その先に待っているのは絶望だろ。
恋愛は素晴らしい?幸せだ?そんなのは嘘だ。そうだ、そりゃそうだ。そもそも高校生とかガキの分際で自分の事にすら責任も取れないのに、相手の事に責任なんて取れやしないんだ。
だから相手を、自分すらも軽視して、破局なんてものがゴロゴロ転がってるんだ。
何てことはない。あぁわかった。わかったよ。恋愛なんてくだらない?そんなもんじゃない。恋愛なんて覚悟も責任もなきゃ、ただの毒にしかならねぇ。
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気が付いたら寝ていた。
つか、頭重っ!
え?熱は・・・・・・・・・・・・・・・・・・39度7分??
うわ・・・やらかしてる。家から人の気配は・・・しないな。そりゃそうか
両親は仕事で遅いだろうし、妹の小雪は全日吹奏楽コンクールの支部大会に高1ながら出るって息巻いてたからな、今日も部活で遅いか。うち結構強豪だもんな。休んだら出してもらえないらしいし。
あぁ・・・・考えるのがだるい。ちょっとやばいかも。
これは・・・・あれだな、背に腹は代えられぬ。祐樹に助けてもらうか。
LIFEでメッセージを・・・と
<すまん。熱が40度近くあってやばい。解熱剤買ってきてくれないか。借りは返すから>
マジで身体、動かん。あ、返信来た。
<ちょ、マジか!家の人は?>
<いない。ちょっとやばくて・・・>
<おっけ!今すぐ行く!待ってろ!>
<ほんとごめん。マジで申し訳ない。>
<気にすんなって!いいから寝てろ!貸し借りとかも気にしなくていいから!>
<ついたら連絡下さい。スマン>
本格的にだめだ、ちょっと寝よう。
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◆伊藤祐樹 視点
慎太の奴、大丈夫かな?とか昼休みに思っていたらいきなりLIFEからの通知が届いた。
って、体温40度近く?全然大丈夫じゃないじゃねーか!
「吉田!悪い!ちょっと慎太、熱やばいらしくてヘルプ来たから俺、早退するわ!先生に上手くいっておいてくんない?」
「え、慎太君、そんなに悪いの?」
「40度近くらしいのと、なんかLIFEでひたすら謝ってくるから、体調もメンタルもやられてるっぽい。つうわけで後のこと頼むわ!」
「ちょっとまって、私も行く。」
「え、いやなんで?」
「あんたじゃロクな看病できないでしょ」
「いや、解熱剤買っていくだけだし」
「それ看病にならないでしょ。いいから行くわよ!」
え、まぁいいけど。釈然としない。え?もしかして吉田?え?
「置いていくわよ!」
「いや、慎太の家、知らないだろ!」
まさかな。