軽音楽部 部室にて
宮田さんはというと、同じ美少女でも吉田さんとはタイプが違って美人でモデルのような一見して近寄りがたい雰囲気を持っている。その一方、着替え中にも関わらず鍵を閉め忘れ健康男児にその着替えを見られ「むぎゃー!!!」と発音するあたりお察しだが、ちょっとした茶目っ気があるため、高嶺の花でありつつ適度にスキがあり、それが起因して頻繁に告白される。
吉田さんもモテるためよく告白されているようだが、宮田さんはその比ではないようだ。
俺からすると可哀そうというか、しんどいのだろうなと思ってしまう。
だから宮田さんへ告白したそうな男子が俺のところに来て間を取り持ってほしい的な依頼は
すべからくお断りである。
一度、そんな行動をとっていたら以前に三坂から
「佐藤先輩、宮田先輩の事、好きなんですかー?私、佐藤先輩だったらお似合いだと思うので応援しちゃいますよ!」
「いやいやなんでやねん。」
「だって、先輩、宮田先輩に告白しようとする男子の事、ガードしてるじゃないですか。そんなことする理由って好きだから以外ないじゃないですか。」
など、あらぬ誤解を生んだことがあるが、“宮田さんの立場に立って考えれば告白受けることはうれしいかもしれないが断ることは宮田さんとしてもしんどいだろうと、そもそも俺を介して告白しようとすること自体がよくない”と懇切丁寧に説明したところ、なんとか納得してくれた。
告白する側の気持ちが本気なら、俺ごときがガードしたところで、直接本人に言いに行くだろうしな。
で、三坂は何がはまったのかあれから俺を見つけるたびに恋バナをしたがるようになった。
今日も三坂と目があったとたん・・・・
「佐藤先輩って好きな人いるんですかー?気になる人でもOK!」
「なにが“OK”だ!いないっつうの」
といったように、三坂は何かと俺の恋愛事情の探りを入れてきて、俺はほとほと困っている。こいつの恋愛脳に効く薬はまだ開発されんのか。
「えー!花の高校生ですよ?気になる人もいないんですか?先輩モテそうなのに、ある程度」
「ある程度は余計だわ!」
まあ、別にモテなくてもいいのだけれどな。それこそ宮田さんのようにモテるのなど苦痛以外の何ものでもないだろう。そもそも恋愛って意味あるの?とか思っている俺だ。俺にとって恋バナなど気を抜くと「恋愛などくだらない」とか爆弾を投下しかねない、センシティブな話題なのだ。
さすがにそんなこと言ったら周りの奴らが引くことくらいはわかる。そんな事を思っていたら、、、
「えっと、佐藤くんの、その、好きなタイプってどういう人なの?」
なんと唐突に宮田さんがこの会話に参入してきた。あれか、HARDモードからEXPERTモードにレベルアップか?やめて頂きたい。
「おおぅ。そう・・・・そうだな。三坂でないことは確か」
「先輩、それ失礼なやつ!うぇ~ん、学~」
「先輩、自分、彼女をけなされて怒るべきなのか、先輩のタイプがりっちゃんじゃなくて、ほっとすべきなのか複雑っす」
「鈴木、慎太には罰として、俺にジュースおごらせておくから許してやってくれ」
「いや、冗談すよ!佐藤先輩のこと尊敬してますし、、、、というか、それ伊藤先輩が得しているだけでは??」
鈴木ごめん。けれど、けなしてはいないよ。逃げるために三坂を出汁に使わせて頂いた次第だ。後悔はない。その後、三坂は宮田さんに慰めてもらっているようで、2人で話していたので、祐樹と鈴木と空き教室に行き、セッションで音遊びしながら時間を過ごし、今日の部活は解散となった。
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◆宮田涼音 視点
見られた・・・見られた、見られた!
着替えている所見られた!
うぅ・・・・・恥ずかしすぎる。自業自得とは言え・・・・
まあでも、佐藤君だったのは・・・・まだセーフかな。伊藤君はアウトだけど。
私は男の子が苦手だ。自分でいうのも何だけれど今まで、沢山の人から告白されてきた。
もちろん勇気を出して頑張って告白してくれた人もいる。
けれど、記念受験みたいなノリで告白する人もいるし、会話もしたことのない人から告白されることも多かった。
昔から「かわいい」とか「綺麗」とか言われてきた。自意識過剰かもしれないけれど、きっと皆、「私」ではなくて「私の形」が好きなんだと思った。そう思うとなんだか気持ち悪くて、悲しくて徐々に男の子というだけで嫌だなと思うようになっていった。
佐藤君に対してもそう。最初の頃は普通に話そうと思ってもつい冷たい対応をしていたと思う。佐藤君がほかの男の子から私への告白を止めてくれていたことも知っていた。正直助かっていたけれど、佐藤君から私への好意の裏返しなのだと思って、警戒を強めていた。
だけど・・・・最近は佐藤君のことを他の男の子とちょっと違うのかもしれないと思い始めていた。
上手く表現できない。ただ、私の事を異性というか一人の人間として見てくれている気がする。きっとそれは誰に対してもそう。ほかの男の子から私への告白を止めてくれていたことも、単純に私の事を心配してくれての事だった。
佐藤君は恋愛関係の話題で自分の事をあまり話さない。それも今までは浮ついてなくて安心する理由の一つではあった。ただ最近ではそれも徹底されすぎていて逆に気になってしまう。
今も立夏ちゃんが佐藤君の気になる人がいるか話題をふっている事に聞き耳を立てていると、、
「佐藤先輩って好きな人いるんですかー?気になる人でもOK!」
「なにが“OK”だ!いないっつうの」
やっぱり・・・なんとなくはぐらかしている気がするんだ。
それにクラスでは吉田さんと楽しそうに会話しているのをよく見かける。
あんなにかわいい子と話していて、気にならないとか・・・本当かなと疑えてくる。
そう思うと、なんだかモヤっとした。
「えっと、佐藤くんの、その、好きなタイプってどういう人なの?」
気が付くとそんなことを口走っていた。
私は別に佐藤君の事が好きなわけではない。彼が誰の事が好きでも、別に、私には関係無い。
ちょっとだけ気になるだけだ。そう心の中で整理しながらも、心臓の音がやけにうるさい。
「おおぅ。そう・・・そうだな。三坂でないことは確か」
ちょ、何てこと言うのよ。立夏ちゃんが泣きまねしながら鈴木君に助けを求めているのを「一片の悔いなし」みたいな顔して笑っている。言われた立夏ちゃんも、鈴木君も、伊藤君も皆、楽しそうだ。
けれども、やっぱりはぐらかされてしまった。立夏ちゃんも同じことを思ったみたいで、ちょこちょこと私のところにきて愚痴を言うかのように口を開いた。
「うーん、佐藤先輩って自分の恋愛事情、本当に教えてくれないですよね。先輩の事が好きな子がいるんですけど、何とも対策の打ちようがなくて困っちゃいます」
「えっ、、佐藤君って1年生の中で人気なの?」
「人気かどうかはわからないですけど、あまり接点がないはずのうちの友達が気にしてるくらいなので、隠れファンとかいるのかもです。先輩、歌とかギターとか上手だし、なんだかんだ優しいですから。」
そっか、まあそうよね。別に私には関係ないけれど、私でも佐藤君がいい人なのはわかる。ちょっとエッチでおバカだけど、ちゃんと「私」を見てくれる。
なんだかすっきりしない気持ちと鳴りやまない心臓の音が居心地悪くて
(・・・別に、私には関係のないことだけど)
心の中で何度目かのセリフをつぶやいて、深く考えないようにしようとベースを手に取って練習を始めた。