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女神 / 仲直りしたからな / 涼音の葛藤

◆宮田涼音 視点


化粧ポーチ片手にトイレの鏡の前で自分の姿をチェックした。お化粧も変じゃない・・・わよね。


「私、矛盾してる。」


わかってるのよ。普段、自分の事を外見で判断されることを嫌悪しているくせに、佐藤君に少しでも良く見られたいと思ってる。・・・いや、そうじゃないわ。身だしなみを整えるのは当たり前の事だもの。何も間違ってない。


「よし」


鳴りやまない心臓の音を気にしないようにして、部室に戻った。


--------------


「慎太君、お待たせ。」

「慎太君?」

「ひゃ!」


っ!!ま、間違えた!!私の妄想が・・!妄想の中ではいつも、慎太君って呼んでるから・・・恥ずかしい。ちなみに私は涼音って呼んでもらってる。


「い、いえ・・伊藤君がいつもあなたのこと、慎太と呼んでるから耳に残ってたみたい。間違えたわ」

「うん?そうか?別にどっちでもいいぞ」


いいの!?だ、ダメよ。なんだか下心あるみたいに見えるじゃない。


「・・・と、とにかく行きましょ?佐藤君。」


バンドの楽譜は学校の近くの本屋さんには売っていない。どちらかというと楽器屋さんのほうが多く取り揃えられている。で、学校の近くに楽器屋さんがないため、何駅か乗り継いで目的地に向かおうと、今、電車に乗っているのだけど・・・


隣!隣に座ってる!電車の揺れでたまに当たってしまう腕が何だか熱をもってあつい。


話そうと思って、佐藤君の事を見ると、ちょっと長いまつ毛や、すこし厚みのある唇、話すと動く喉仏、少し汗ばっている首筋・・・


「うん?あれ?聞いてますかー?宮田さん?」

「はい!!!」

「おぉ?元気いいですね?」

「きゅ、急に話しかけるから、びっくりしただけよ」

「いや?ずっと話しかけてたけど?あれか、俺の独り言だったか。そのパターンか」


いけない、ちょっと変な目で見ちゃってた。自分でついて来ているのだから何も言えないけれど、何だか展開が急すぎて、あっぷあっぷしちゃう。


「えっと、何かしら?佐藤君。」

「いやさ、バンドのグループ名どうしよっかなと思ってさ。宮田さん、何か案ある?」


・・・


「そ、そうね。ポピー何てどうかしら?英語綴り、P・O・P・P・Yで『Poppy』」

「おお、いいんじゃないか?響きも悪くないし。グルチャで聞いてみるわ」


すぐに佐藤君は携帯でグループチャットに入力を・・・って


<我らが女神(宮田さん)からご神託を賜った。喜べ。我らのグループ名は・・・『Poppy』(ポピー)で決定だ!!!>

<おお!女神様!女神さまがご降臨された!!!>

<女神様だー!宮田先輩からのご神託・・・!ありがたやありがたや!>

<俺も、宮田先輩のご意見に賛成っす!>

<皆、恥ずかしいから!ちょっと佐藤君!>

<はっ!!何でしょうか女神様!!>


少し恨めしそうに佐藤君をにらむと、良い仕事した、みたいな顔してた。なんだか恥ずかしくて、佐藤君の横腹を肘で少し強めに突っついておいた。


--------------

◆佐藤慎太 視点


おや、電車降りてから宮田さんと物理的に距離あけられてんな。ちょっとふざけすぎたか。宮田さん、聞くところによると男嫌いらしいからな。


普段気を使ってるんだけど、バンドメンバーとのグループチャットってことで調子に乗って弄ってしまった。失敗したか。いや、次から気を付けよう。


バンド活動って謎に人間関係の問題多くなりがち説が俺の中にあるんだよな。まあ、音楽って自分の心をさらけ出す的なところあるから、主義主張のぶつかり合いで問題起きやすいって事だと思うけど。


ま、用心するに越したことはなかろう。


「宮田さん、俺は楽譜コーナー見て来るから、ピックとかだっけか?見てきていいよ。終わったら出口集合で」

「え、ええ。いえ、そんなにかからないから、一緒に見てもいいんじゃないかしら?」

「ん?いや、別行動のほうがすぐに終わるだろ。この後すぐに戻って練習しなくちゃだからな」

「そ、それはそうね。」


おし、さっさと終わらせますかね。


-----------------

必要なものを無事揃えて宮田さんと学校へ向かう途中、話題は対バンが中心となった。


「誰が出場するんだろうなー。あと順番が気になる。最初とかトリとかは勘弁だな」

「想像すると、緊張するわね。練習がんばらなきゃ。その、歌は佐藤君とハモるところがあるから・・・2人で練習しなきゃいけないわね。」

「そうだなぁ、時間もないし詰め詰めでやらないとな。ハモリのとこは三坂にキーボード引いてもらって、音取りながらだなぁ。」

「・・・」

「鈴木は今回、結構しんどいだろうから練習見てやんなきゃな。場合によっては、1曲くらい俺、祐樹、宮田さんでのスリーピースの曲に入れ変えて、負担軽くしてやったほうがいいかもしれん。・・ん?宮田さん?」

「あ、いえ、当日・・。当日は佐藤君、誰か呼ぶのかしら?」


そうだなぁ・・・


「まあ、クラスの連中には声をかけるとして、あとは中学校時代の友達と・・」


・・・・うん、まあ、仲直りしたからな。あいつの事だから、こっちから話しかけないと中々通常運転に戻らんだろうし友達紹介するって言ったからな。


「あとは、幼馴染かな。妹も誘えば一緒に来るだろ」

「・・・佐藤君って幼馴染いたんだね。幼馴染・・・くん?」

「ああ、ずっと引っ越してないからな。佐々木柚葉っていう女の子だな。同い年だよ」

「へー・・・」

「おお、めっちゃ興味ないやつやん。まあ、当日にでも紹介するよ」


何だか食いつき悪いな?食わず嫌いかな?うちの女神様ったら好き嫌いは良くないことよ?ちゃんと食べなきゃ大きくなれないんですからねっ!


-----------------

◆宮田涼音 視点


佐藤君との帰り道、対バン当日の事を色々話している中で練習の事を触れてみた。


「想像すると、緊張するわね。練習がんばらなきゃ。その、歌は佐藤君とハモるところがあるから、2人で練習しなきゃいけないわね。」


役割的にハモリの練習しなきゃならないから、必要だからね?ちゃんとスケジュール合わせなきゃだし。


「そうだなぁ、時間もないし詰め詰めでやらないとな。ハモリのとこは三坂にキーボード引いてもらって、音取りながらだなぁ。」


むっ。練習、2人でって言ったじゃない・・・!別に、2人が良いっていう意味じゃないけど!こんな事、普段言わないのに。


・・・下手だったとは思うわよ?アピールなんてしたことないし、いや、アピールじゃないけど!それでも何か、こう、何かないのかしら?別に・・・何かしてほしいわけじゃないけれど。何だか釈然としない。


何だかふつふつと自分の世界に入ってしまっていて佐藤君が言っている事が頭に入らないでいると


「・・・・・練習見て・・・・・スリ・・・・・かも・・・・・宮田さん?」


佐藤君が私を呼んだ。・・・って何を言っていたのか聞いてなかった。えぇと・・そうだ。


「あ、いえ、当日・・。当日は佐藤君、誰か呼ぶのかしら?」

「まあ、クラスの連中には声をかけるとして、あとは中学校時代の友達と・・」

「あとは、幼馴染かな。妹も誘えば一緒に来るだろ」


幼馴染、何かしら、聞きたいような聞きたくないような。でも気になる。


「・・・佐藤君って幼馴染いたんだね。幼馴染・・・くん?」

「ああ、ずっと引っ越してないからな。佐々木柚葉っていう女の子だな。同い年だよ」

「へー・・・」


思ったより冷たい声がでてしまった。


「おお、めっちゃ興味ないやつやん。まあ、当日にでも紹介するよ」


・・・興味なくないわよ。


(何でこんなにモヤモヤしてるのかしら)


ダメね。私、すごく面倒くさくなってる・・・。こんなに面倒くさい女だったかしら、私・・・。気を付けないと、最近自分の心が乱高下して上手くコントロールできていない。自分を見失って八つ当たりなんてしたら、目も当てられない。


佐々木柚葉ちゃん、か、ちゃんと仲良くなろう。


(それに、佐藤君と柚葉ちゃんがどうだって、別に、私には・・・)


いつものように、“関係ない”って心の中で唱えて、気持ちを落ち着けようとしたけど、今日はどういうことか、心が乱れるばかりで、まったく静まる気配がなかった。

涼音は普段はもっと落ち着いている子なんです。

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