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10/24

もうダメ / 温かな日々 / あの日の柚葉の本当の気持ち

◆佐々木柚葉 視点


慎太とメッセージのやり取りをした日。慎太との溝は想像よりあまりにも大きかったことに気が付いた。そして1年ものあいだ、慎太にそんなふうに思われていた事が受け入れられなくて、田中君に対する嫌悪感と、あまりのショックでトイレで吐き戻してしまった。


「頑張ってたんだけどなぁ・・・。」


自分の過ちから逃げずに、ちゃんとしようって・・・自分にできる事やろうって・・・。頑張ったんだけど・・・ダメだった・・・。泣いても泣いても、惨めで瞳からは涙がこぼれてきた。


「・・・もうダメなのかな。・・・もう、私・・・・」


これは罰なんだと思った。慎太を傷つけた罰。慎太に甘えきって、自分が弱い事への罰。


私がダメだから。全部・・・全部なくしちゃった。全部、私のせいで・・・。


自分の部屋に戻って、たくさん、たくさん泣いて、いつの間にか疲れて意識を手放していた。


------------------

私の両親は二人とも共働きでお家にいないことが多かった。慎太のところも同じで、そういう事もあってか、慎太と小雪ちゃんといつでも一緒にいた。


私は一人っ子だったけど、慎太と小雪ちゃんと家族みたいに育って、全然寂しくなかった。


慎太は私と小雪ちゃんの事をいつも守ろうとしてくれて、喧嘩したり笑ったり、辛い時も楽しい時も私たちを引っ張ってくれていた。


色々な事があった。家族ぐるみでのお花見。毎年一緒に行った夏祭り。運動会で慎太がリレー1番だったときは密かにかっこよくてドキドキした。初詣も毎年一緒に行った。いつもお互い何を神様にお願いしたか気にしてたっけ。


毎年季節は巡って、私たちは成長していって、いつのまにか私は慎太の事を好きになっていた。ううん。ずっと好きだったことを自覚した。その時はちょっと大変だった。


いつもみたいに慎太の顔が見れなくて、慎太は全然私の気持ちわかってくれなくて、ちょっと喧嘩しちゃったのを覚えてる。


まだ私たちは子供で、自分の心の変化に追いつけなくて、慎太はいつもは頼りになるんだけど、ちょこっとおバカなところがあって。でも、最後は慎太が「ゴメン」って言って寄り添ってくれた。


慎太が恥ずかしそうに「好きだよ」って言ってくれた時はとっても嬉しかった。


あの陽だまりのような温かな日々がとても愛しくて、今はとても悲しかった。

---------------


ブー・・・ブー・・・


携帯のマナーモードが鳴る音で目を覚ました。随分寝てしまったようで夕方になっていた。


「あ、携帯!」


もしかして、慎太かなと思って反射的に携帯を手に取ると、画面に赤塚美紀と表示されていた。


「あ、もしもし」

「よかったー、何度か柚葉に連絡したけど出なかったから!」

「ごめんね?ちょっと寝ちゃってたみたい」

「大丈夫、大丈夫!それより、どうしたの?今日。柚葉が休むなんて珍しいじゃない。」

「ちょっと、大事な用事があって、お休みもらったんだ。」

「なんだ!そうだったんだ。よかった!体調悪くなっちゃったのかと思ったよ」

「心配かけてごめんね?」

「大丈夫!・・・それより、柚葉何かあった?」


美紀ちゃんは、いつも私の事心配してくれるお友達で、2年生のクラス替えの時に一緒になって、席が隣同士だったこともあり、仲良くなった。


「ううん。何でもないよ?」

「・・・柚葉?いつも言ってるけど、無理はしないで。お願いだから」

「うん。大丈夫!」

「・・・ところで!今日のプリント持ってきてあげたよーん。最寄り駅まではこれたのだけど、柚葉の家知らないからさ!教えてちょうだいな!」

「え!駅にいるの?今?え、えぇと住所!住所伝えるね」


お家の場所を伝えて、電話で道案内しながらしばらくすると、美紀ちゃんがお家に来てくれた。


「やっほー!ここが柚葉の家か!これがプリントだよーん。ごめん、ちょっと雨に濡れちゃった」

「全然大丈夫!ありがとう、美紀ちゃん。」

「いえいえ!そういえば、大事な用ってのは終わったの?」

「うん・・・。終わった・・・かな」

「・・・・よし!お菓子買ってきたからさ!柚葉のお家、ちょっとお邪魔しちゃダメかな?」

「うぇ!?あ、大丈夫だよ?」


お友達がうちに来るなんていつぶりかな。一人でいると苦しくなっちゃうから、美紀ちゃんが来てくれて良かったな・・・。そう思って、私のお部屋に美紀ちゃんを案内すると、急に美紀ちゃんが私を抱きしめてきた。


「ど、どうしたの?」

「柚葉、大丈夫だよ?柚葉は一人じゃないんだから。」


いつもの美紀ちゃんと違って、すごく真剣な声で、すごく優しくて・・・びっくりしたけれど・・・今・・・優しくされちゃうと・・・我慢できない・・・


また、一粒二粒ととめどなく涙が溢れてきた。


「何でもなくないじゃない。もう、しょうがないんだから。大丈夫、大丈夫だからね」


私の頭を優しく撫でてくれて、しばらく抱きしめてくれた。それからしばらく経ってようやく落ち着くと、ゆっくりと私の事を待ってくれた。


自分のせいだと思って、何とか今まで人に頼らずに頑張ってきたけれども、自分だけではもうダメで、気が付くと美紀ちゃんに今までの事を話していた。


1年前にずっと一緒にいた幼馴染で恋人だった慎太と、高校が別々になって寂しかったこと。


入学したばかりの頃は勉強もクラスも色々上手く行かなくて、無理をしなくちゃいけなくて、慎太とのデートも断ってしまっていて苦しかったこと。


同じ部活の田中君が色々と気遣ってくれて、勉強を教えてくれたり、帰り道が一緒で最寄り駅まで送ってもらったこと。その時に慎太と出くわしてそれぞれの事を紹介したこと。


田中君の好意に気づいていて、それでも頼り続けて田中君が私の傍にいる事を、2人になることを許してしまっていたこと。そして、告白されたこと。


2人になる事は心のどこかで田中君を魅力的に思ったからじゃないかと考えた事。それが、慎太への裏切りだと思ったこと。そして慎太とお別れしたこと。


最後に、昨日慎太とのやり取りでわかった、田中君の嘘の事。取り返しのつかない溝ができてしまっていたことを伝えた。


伝え終わるころには、また涙が止まらなくなって、お顔が涙でぐちゃぐちゃになっていた。美紀ちゃんは最後までしっかりとお話を聞いてくれた。


「ねぇ、柚葉。慎太君への気持ちが揺らいだことはなかったんだよね?」

「・・・ない。一度も・・ない。・・・慎太は特別で、誰よりも深く繋がって・・いたから・・・甘えて・・しまっ・・うぅ・・」

「大丈夫だから。ゆっくりでいいから。もう一つだけ・・・、聞いてもいい?」

「うん・・・。」

「田中の事は好きだったの?」

「それは違うと思う。ううん・・恋愛という意味での好きという気持ちはなかった。・・・でも、田中君の好意に気が付いてて、それでも一緒にいて・・・それは私が・・・きっと」

「はいストップ!」


急に美紀ちゃんにデコピンされた。


「それはさ?友達に頼るのと何が違うの?田中は異性だから、彼がいるのに2人になるのは良くなかったと思う。頼る人が違ったかもしれない。・・・でもそれはきっと、柚葉もわかっていたんだよね?」


その通りだった。慎太がいるのに異性に頼ってしまった。それは自分が弱いからだとそう思った。私は声にならず、ゆっくりと首を縦に振った。


「でもね柚葉。きっと一番良くなかったのは、自分の心に嘘をついたことだと私は思う。ねぇ柚葉?田中君を頼ってしまった理由が“魅力的に感じた”というのは、本当?」


・・・それは、私が


「柚葉?自分を責める事で逃げないで。それが自分の心に嘘をつかせて、その結果として幼馴染君を傷つけてしまったんじゃないの?」


・・・・わから・・な・・


「柚葉!私の目をみなさい!ちゃんと逃げずに向き合うの!」

「・・ぐす・・・ひっく・・・・・・そうじゃない・・・。」

「なにがそうじゃないの?」

「わ、私は・・・田中君に・・・告白は嬉し・・かったけど・・男の子としての魅力は・・・感じたことなっ・・ない。私は・・・私は自分の弱さが・・・嫌で・・・だからっ!」


気が付いたらまた美紀ちゃんの胸のなかにいた。


「ごめんね?大きな声だしたね。柚葉?柚葉は頑張り屋さんだから、抱え込んじゃうから。」


私はあのとき・・自分が弱くて、そのせいで田中君に頼っちゃって、自分のなかの罪悪感に負けて、一番ダメな方法で慎太に甘えたんだ!それで・・それで慎太を傷つけて・・・


「私がっ・・・・私せいでっ・・・ぐす・・・私が弱いから!」


「違うよ。」

「違わなっ!」

「違うよ。そうじゃないよ?甘えていいんだよ。誰かを頼っていいの。全て自分で背負わなくていいんだよ」


どうして?・・・私が甘えたから・・


「柚葉は甘え方が下手だね」

「・・・わから、ない」

「そうなんだね。多分だけど、幼馴染君って柚葉の事、本当によくわかってたんだね。柚葉が何も言わなくても、わかってくれて、柚葉が甘え方下手でもどうにかなっちゃってたんだね。」


・・・確かに、慎太はいつも私の事、わかってくれていた。いつも、お父さんもお母さんも家にいなかったから、頑張らなきゃって思って、でも、苦しい時、いつもそっと慎太は助けてくれていて・・。


「だけど、お別れを言われたとき、幼馴染君は耐えられなかったのかもね。柚葉が好きすぎて。それはそれで、幼馴染君にも責任あるかもよ?」


美紀ちゃんはいたずらっぽく、それでいて凄く優しく微笑んでそういった。


「それとね、私、怒っているの」

「え?」


急に美紀ちゃんは低い声になってそういった。ちょっとだけ怖い。


「そもそも、この話、田中がほとんど悪いじゃない。あいつのせいで、どんだけ柚葉が!ただじゃ済まさないわ。」

「え、えっと」

「明日・・・田中の所に行くわよ。ふざけた誤解を責任もってあいつに解かせて、土下座でもさせないと気が収まらないわ」


田中君と会う事を考える身体が強張る。だけど、私も田中君に言いたい事がある。一人だと怖いけれど、美紀ちゃんと一緒だと思うと、すごく頼もしい気持ちになった。

柚葉は一人っ子で、普段は慎太と小雪がいたものの、夜は一人の事が多く、小さいころから家事もやるなど、頑張り屋さんでした。


お父さんとお母さんを困らせないように、いつしかわがままも言わなくなり、抱え込むのが普通になってしまっていたのですね。人に頼るのがとても下手な子が出来上がってしまったわけです。


そして、慎太はそのことに気が付いていて、柚葉の事をよく見るようになりました。柚葉が言葉にできなくても、いつでも助けられるようにと。


けれど、1年前のあの日の事は、慎太にとってもショックが大きすぎ、さらには田中君の嘘で混乱を極めてしまい、本来持っている本質を見抜く力が弱まってしまっていました。いや、まあ、田中君の嘘は悪質でしたね。


さて次回は田中君との話し合いです。どうなるでしょうか。

---------------------

追記

『幼馴染君にも責任あるかもよ?』の説明が薄いとのご指摘が多かったため・・・

書いたら書いたで炎上しそうで、ドッキドキですが、念のため!


美紀ちゃんは柚葉の事を心配して、やや視野狭窄になってます。


そして、昔から慎太は柚葉の事を大事にするあまり、柚葉の心を汲み取る能力が長けすぎていて、柚葉が人に甘える事が下手になってしまう一つの要因になってしまっていると美紀ちゃんは推測しました。(ちなみにここは正解)


なので、「責任」というのは甘え下手になった、という事にかかってます。


って・・・これじゃあ確かにわからん。作者、脳内完結してました。申し訳なひ。


とはいえ、あのセリフは柚葉の事を励ましたいという気持ち先行の言葉で、美紀ちゃんも冗談っぽく、本気で言っているわけではないのです。


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― 新着の感想 ―
[一言] どうにかして柚葉をヒロイン枠に戻したいんだろうけど 身勝手な理由で別れを告げておきながら とんでもない理論で庇いだてして枠復帰を図ろうとしても なろう界隈wじゃなかなか厳しいっすよ 頑張って…
[良い点] 楽しみに読まさせて貰ってます。 執筆感謝感謝です。 [気になる点] 今回は柚葉ちゃんとお友達ぶっ叩かれるだろうなー、と思ったら案の定だったw 私も以下気になる点を。 『1年ものあいだ、慎…
[気になる点] 主人公の何が悪いか分からない ヒロインが別れ際に言った好きな人が出来たが全てだな アレを嘘でしたすみませんで済ませるのはないわ、一年間も苦しんでるのに。後、妹がこのことを知らないせいか…
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