第二話:羨ましげな日常風景
岸 守は、25年もの間コールドスリープによって眠り続け、《賢人会》を名乗る秘密結社によって命を救われ、《戦闘員》に改造された。
そのおかげで取り戻した日常には、記憶の中の父と同年代となった兄の娘である姪っ子の御剣 刀華が寄り添っていた。
「刀華ちゃん、守くん、おはよっ!」
「おはよう~」
声をかけてきたのは、近所に住むという幼馴染みの少女たち。
幼稚園の頃からずっと仲良し三人組は、朝はいつも三人揃って登校しているのだという。
そこには防犯の意味もあるが、単に仲良しだから一緒にいて苦にならないのだそうだ。
朝から元気いっぱいの空手少女、名繰 ほのか。
気弱でおとなしいけれど心優しい少女にしか見えない少年の朝倉 優樹 。
小柄な二人とは印象が異なるものの、飛び抜けた美人の刀華。
三人はいつも仲が良いそうで、刀華の従兄弟という説明をすんなり受け入れて俺とも仲良くしてくれている。
だからこそ、学校でも孤立せずに済んでいるのだが……。
正直、優越感になど浸ることはできないわけで。
いやその、やっかみとかではなく、むしろ同情を向けられるやつ。
なんせ、どんだけ惚れても、近親者だから刀華とは結婚とかできないって言うと、だいたいは達観したような目で肩を叩いてドンマイ言われる。
では、ほのかは? となると、仮にそうだとしても、気づくと思うか? 生殺しになるぞ? というと、やっぱりドンマイ言われる。
じゃあ、優樹は? と、最後はそうなるが、男子だぞ? で、やっぱりドンマイ……とはならず、オレならイケるぜ! とポーズを決めるアホもいるので、ちょっと人目のつかないところで話し合いしたこともあった。
姪っ子やその幼馴染みたちを、男女問わず狙ってるやつが多くて困る。
しかし、ちょっかいだそうとするやつは多くても、実際に三人の誰かと付き合うつもりのあるやつは、意外と少なかったりする。
というのも、三人の親は、会社経営者とか資産家とか由緒正しい旧華族とかで、近づこうとするだけで黒服のマッチョメンに人気のないところに連れていかれてお話するって噂がたってるから、男子はビビって近寄らなかったりする。
女子もまた、適正距離を計ってるからさっぱりとした関係というしな。
昨年途中から編入したものの、意外と上手くやれている自覚がある。
テストで赤点を取ったことはないし、体育はまあまあの成績に抑えているし、教師から目をつけられていることもないと思うし、男女問わず険悪な関係はあまりないと思っている。
その証拠に、
「なあ、岸、昼飯一緒に食わねえ?」
と、男子からよく誘われるから。
まあ、美少女な幼馴染み三人ときゃっきゃしながらお昼をいただいている様子を見せられるよりは、精神衛生上よいからなのでは? 等と思ってる。
「岸の弁当箱、毎日手が込んでるよな」
「美味そう、少しくれ」
「愛妻弁当か~? 羨ましいなこの」
「リア充爆発しろ」
「ウリイィィィ…………」
みたいに、軽口を……ん? なんか変なのいなかったか?
ま、まあ、そんな感じで、普段の学校生活は順風満帆に過ごせている。
《賢人会》: 権力者、資産家、科学者、医者などで構成されているとされる集団。秘密結社を自称している。
《オーブ》研究の第一人者たちで、利用方法をある程度確立している。
また、《オーブ》出現の予兆を感知できるらしく、《怪人》と《戦闘員》を派遣して《オーブ》の回収に心血を注いでいる。
《オーブ》研究で得られた成果は、惜しげもなく発表することで、特に医療分野の発展が目覚ましい。
さらには、公海上に海上都市メガフロートを建造し、別の秘密結社に管理運営を任せていたりする。
その海上都市は、日本政府と提携しており、養殖のノウハウや必要な資材を政府から提供してもらう代わりに、養殖の魚介類を割安で提供させている。




