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2050セカンドライフ ーVRファンタジー世界で青春をやり直す!ー  作者: えーいち
クロエとチュートリアル編
4/55

第03話 クロエに街を案内してもらいます!!

 外に出ると、そこは真ん中に立派な大きい噴水のある円状の広場の一角。

 

 「わぁぁぁぁぁぁ、結構人多いねー」

 「はい、ここが首都『アクロシティ』の中央噴水広場です。基本的なお買い物はこの広場に並ぶお店で大抵のものが揃えられるんですよ」

 

挿絵(By みてみん)


 行き交う人も多く、噴水のあたりには特に多くの人が集まっている。

 少し気になったのは、みんな衣装に時代的?世界的?な統一感が全くなく、和洋中カジュアルフォーマル民族衣装戦闘衣装その他諸々なんでもござれって感じなこと。

 上下や靴の組み合わせも入り乱れている人もいて、鹿鳴館的なボリュームある豪華な洋風ドレス着て下駄鳴らしながら歩いているのまでいる。

 

 「あ、いいなー、あの人の衣装かわいい」

 

 そんな中、わたしの視線の先、ネックから裾にかけて白から水色に変わるグラデーション、フリルとリボンを多くあつらえた肩出しワンピースを着て、付属のスリーブを両腕につけている小柄な女の子が目についた。

 

 「ご主人様の衣装も、すっごくかわいらしいです」

 「えへへ、ありがとうクロエ」

 

 そんな嬉しいことを言ってくれるクロエの頭をなでなでする。

 

 「って、頭なでないでくださいぃ、ご主人様ぁ」

 

 あと気になるのは噴水あたりの人だかり。

 クロエの頭をなでる手を止めて尋ねてみる。

 

 「ねぇクロエ、あの人だかりは何かあるの?」

 

 噴水あたりの集団を指してクロエに聞いてみる。

 

 「あれは『ご依頼掲示板』です。探し物やペットの散歩、荷物の運搬とか、素材の採取とか色々あるんですよ。」

 「討伐とかはないの?こう、モンスターをぺしぺしするようなやつ」

 「増えすぎたモンスターの討伐は騎士団の仕事ですので、この依頼掲示板には貼り出されないんですよー」

 

 人だかりに近づいてみると、噴水の脇に木製の掲示板が立てられていて、ざっと見て30枚くらいの紙が無秩序に張り出されていた。

 

 「お金を稼ぐのでしたら、こちらで依頼を請けるのが基本ですね。他にもNPC相手に商売するとかアルバイトするとかできますよ」

 「VRの世界でまでアルバイトするのはちょっとアレかなぁ?」

 「ウェイトレスとかメイド喫茶とか、ある方面の人たちに人気なアルバイトもありますよ」

 

 クロエの言葉で、わたしがウェイトレス服やメイド服を着て仕事してる風景を想像してみた。

 

 「すっごくいいね、それ。今度募集してるお店探してみよっかな。かわいい制服だったら洗濯と言って持って帰るのもいいし」

 

 って、もしかして『ある方面の人たち』って、わたしみたいなバ美肉ガチ勢ってことなのかな?

 

 「ではでは、ユーザさんが一番多く集まる南大通りに行ってみましょう」

 

 広場からは東西南北に伸びる大通りがあり、一際長く南へ伸びている通りの両脇にはズラりと露店のテントが並んでいる。

 

 「うわぁ、すっごい人混みね。クロエ、はぐれないように手つなご?」

 「あっ、はい。ご主人様、ありがとうございます。」

 

挿絵(By みてみん)


 クロエに手を差し出すと、少し顔を赤らめて目線を逸らしつつ、わたしの手にクロエの手を乗せてきた。

 その仕草にわたしはクロエの頭を目いっぱいなでてあげる。

 

 「あぁ~もう、やっぱクロエかわいい」

 「ご、ご主人様ぁ、や、やめてくださいよぉ」

 

 しばらくクロエの頭をなでなでしながら、露店を見回してみる。

 露店には古今東西色とりどりのかわいい衣装が並べられ、どれもこれもがわたしの目を釘付けにする。

 

 「欲しいなぁ、あの衣装もこの衣装も、かわいいのいっぱい集めたい!!」

 「あっ、はんっ……ご、ご主人さまぁ」

 

 わたしは露店に並べられた衣装に夢中になりながらも、クロエの長い髪をゆっくりと順方向になでていた。

 首から下の、広がりながら背中を覆っている髪がサラサラと指の間をすり抜けていくのが心地よい。

 同時にクロエも零れる言葉が何やら熱いものになっていき、顔を薄紅色に染め、目元や口元がとろんと惚けたような感じになっていた。

 

 「そ、そんなにやさしくなでられるとぉ……クロエ……もう……だめですよぉ」

 

 ただでさえわたしより背が低いクロエが少し前かがみになって、わたしにしがみつきながらの、半開きの唇にとろんとした目で上目遣い。

 これはもう破壊力抜群だった。

 

 「かわいい!もうかわいい!!クロエめっちゃかわいい!!」

 

 と、クロエを抱きしめたところでハっと我に返ってあたりを見回すと、わたしとクロエの周りに人垣ができていて、人垣を作っている人達は、微笑ましくニコニコとしている人が多かった。

 

 「あ、あはははは。ちょ、ちょっとごめんなさい、通ります通ります。ク、クロエ?あっちでちょっと座ってよっか」

 

 噴水広場の横、ご依頼掲示板と反対側のベンチでひと休み、クロエが落ち着いた頃を見計らって再び南大通りを歩く。

 

 「えっと……この通りに並んでる露店はユーザさんの露店ですね。大体のユーザさんは『ゴーレム』に店番させてどっか行ってたりログアウトしてたりしてるんですよ」

 

 クロエは落ち着きを取り戻したような口調ではあるものの、顔を赤らめて髪をくるくると指でいじりながら、わたしの手を握っている。

 大通りを歩きながら露店を覗いてみると、武具類や衣装類に値札が付けられて並んでいたり、よくわからない素材みたいなものが並んでいたり、中には……

 

 「ねぇねぇクロエ、首から値札ぶら下げた女の子が露店に並んでるんだけど、めっちゃ絵面悪くない?」

 「あれはパートナーを売ってるんですよ、ガチャ産の。戦闘とかで有能だったり、固有のアクセサリ付けててかわいかったりしますよ」

 

 あたりを見回してみると、隣の露店では目の位置に穴を開けた紙袋を被り、赤いフンドシを締めたマッチョな男性が、フリフリでもこもこなかわいい服を着て垂れた犬耳とふさふさの犬尻尾を付けた小さな女の子を露店から連れ出してる場面を目撃した。

 連れ出された女の子はバンザイしながら小さく飛び跳ねた後、ふんどし男性に頭を撫でられ、尻尾をふりふりしながら男性の手を握って一緒に人混みの中に消えていった。

 

 「うん、なんかこう事案ってレベルじゃない現場を見たような気がする」

 

 目の前の露店に目を戻す。

 品揃えは衣装類が多い中、十二単っぽい衣装にとんがった狼耳と、ふさふさの狼尻尾を付けて和傘を差した金髪で長い髪の小さな女の子のパートナーが一人。

 狼娘の首に下げられた値札には『1500ジュエル』とあり、美容室で狼娘の髪型と同じ髪型にセットしてもらう為の『狼娘のヘアカタログ』が『80ジュエル』、狼娘が着ているのと同じ十二単っぽい衣装には『20ジュエル』の値札がかけられている。

 

 「この世界の通貨は、通常のGoldと言うのと、いわゆる課金通貨のジュエルと言うのがあるんですよ。ジュエルで取引されるのは大体課金アイテムとかガチャ産のパートナーとか衣装とかですので、それ以外の生活品や雑貨類ですとかはGoldで事足りるかと思いますよ」

 

 その後はクロエと一緒に露店巡りしながら、露店で売られてるものの傾向や相場とかを教えてもらった。

 売られてるものの傾向としては、やはりジュエルで取引するガチャ品の衣装やパートナーの方が種類も豊富で数も多い感じがする。

 Goldで取引できるものは、強化素材や製造素材、非売品回復薬、イベントで手に入る衣装やパートナーと言った感じかな。

 まぁ、今はジュエルもGoldもないし、何も買えないんだけどね。

 

 「クロエ、ジュエルはどうやって稼げばいいのかな?」

 「ジュエルはご主人様のような定額制施設ユーザさんの場合ですと、この『クロニクル・ワールド』を盛り上げるようなことをSNSや動画サイトに投稿して『イイネ!』を稼ぐと貰えるんですよ。ご主人様の行動ログは、コンソールの『端末』で確認と再生ができるんで、そこからスクリーンショット撮ったり動画を編集したりできますよー。」

 

 と、説明をしながら歩きだすクロエ。

 しばらく歩いて東西に延びる通りとの交差点に差し掛かったあたりでユーザ露店の列がなくなり、それまで人混みで見えなかった大きな門が目の前に現れた。

 開いた門からは少し先にある小高い丘の上にまで街道が延び、街道の周りには草原、さらに周辺には森が広がっている。

 

 「わぁ、きれいな景色だねー」

 

 日本の都内ではちょっと見かけない自然あふれる光景に感動を覚える。

 

 「はい、こういう自然の風景が多いのがこのワールドの一番の魅力なんですよー。」

 

 しばらく自然の景色を堪能していると、小高い丘を越えてきた何かが、街道を高速で走りこちらに向かってくるのが見えた。

 その何かが迫ってくるにつれて、この世界では聴き慣れない、でも現実世界では聴き慣れた爆音が大きく聴こえてくる。

 

 「ちょっとクロエ、なにあれって!?」

 

 聴き慣れた爆音、見慣れた派手にデコレーションされた10トントラックを指さす。

 

 「大丈夫です大丈夫です、あれはライドパートナーの『デコトラ』です。ライドパートナーは馬とか狼とかグリフォンとかの騎乗できるパートナーのことですよ」

 

 デコトラは街に近づくにつれスピードを落とした後、門の目の前で一旦止まってからハンドルを切りつつバックして、街の外壁に沿うように駐車した。

 開始前にトリアが「時々『これってファンタジー?』なものとかもあるかもですが」とか言ってたけど、こういうことだったんだね、と妙に納得してしまった。

 

 「ちなみに、街中でのライドパートナー騎乗は基本的に禁止されていて、街中で騎乗するには事前に届け出が必要になってますので、ああやって門番に預けてるんですよー」

 

 門の外、街の外壁沿いにあるライドパートナー預り所を覗いてみると、デコトラの他に人力車、牛車、自転車、原付、バギー、マントをつけた二足歩行の大きな猫、たくさんの風船で浮いているブランコ、遊園地にあるコーヒーカップみたいなもの、何かを煮込んでいるひたすら大きい鍋など、やはり時代や世界観を無視した代物が多く見受けられた。

 

 「あ、あはは。これがトリアの言ってた『それも含めてファンタジーで基本なんでもアリ』ってことなのね。」


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