009・神心(ケチャ様視点)
「――さて、アオイはどうするかな?」
元の世界へと帰っていった小さな少年を思って、ボクは静かに呟いた。
……いや、
(もう決まっているかな)
自分の考えを訂正する。
「だって、あの子は、筋金入りのお人好しだからね」
つい笑ってしまった。
アオイは、前世の世界で、見知らぬ猫を反射的に助けて死んでしまうような人物なのだ。
反射的に、だよ?
しかも、転生した世界でも、与えられた力で見知らぬ人々を癒している。
(これをお人好しと言わずに、何というんだろうね)
クスクス
また笑みがこぼれてしまう。
アオイは、きっとアーディスカと一緒にいてくれることを選択してくれるだろう。
「うん」
ボクら『神々』が干渉できるのも、これが限度だ。
他の世界では、誰1人試練を越えられず『勇者』になれなくて、そのまま滅んでしまった例もある。
それは避けたい。
だから、
(頼むよ、アオイ)
その小さな手に、希望を託す。
…………。
……ん?
どうしたんだい? もしかして、『君』もアオイが心配なのかな?
「そっか」
必死に訴えられて、ボクは苦笑した。
(うん、そうだね)
どうしても、君がアオイの力になりたいというのなら、君の望んだ願いを叶えてあげるよ。
それでアオイを手伝ってあげて。
さぁ、行っておいで……。
…………。
…………。
…………。
うん、これでよしっと。
その子の旅立ちを見届けて、ボクは微笑んだ。
「おっといけない、そろそろ時間だ」
他の『神』たちとの会合が始まってしまう。急がないと間に合わなくなってしまうよ。
やれやれ、忙しい。
でも、愛しい子らのために、ボクもがんばらないとね。
さて。
ボクは背中の翼をはためかせると、『次元の扉』を開いて、その光の中に入っていった。