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回復魔法使いアオイの転生記 ~お姉さん剣士を未来の勇者に育成しよう!~  作者: 月ノ宮マクラ


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034・魔剣

 それを見つけたのは、偶然だった。


 仰向けに倒れた巨人――その下にある床石の一部が砕けて、そこに空洞のようなものが見えたんだ。


(なんだろう?)


 ニアに背負われたまま、近づく。


 すると、瓦礫の下には、小さな石室があるみたいだった。


「これは、隠し部屋か?」


 アーディスカの驚いた声。


 ガラッ ガラン


 赤毛の冒険者が瓦礫を取り除くと、縦横3メートル四方の空間に作られた祭壇があった。


 祭壇の中央には、1本の剣がある。


 アーディスカが目を見開く。


「まさか……これは『迷宮の魔剣』か!?」


 迷宮の魔剣?


 僕は首をかしげる。


 アーディスカが言うには、『迷宮』は魔素を使って、内部空間となる『構造体』やそこに生きる『魔物』を生み出す。


 そして、


「同じようにして『武具』を生み出すこともあるんだ」


 とのこと。


 そうした武具は、大量の魔素を吸収した金属で生成される。


 それは通常の金属よりも軽く、強靭で、中には魔法の力を秘めた特殊な『魔法武具』にもなるそうだ。


(ふ~ん?)


 つまり、そうした剣が『魔剣』と呼ばれるのか。


 僕は頷いた。


「じゃあ、アーデ。あの剣、もらっちゃおうよ」

「あ、あぁ」


 アーディスカは『隠された石室』に降りると、祭壇にある剣を拾う。


 すぐに広間に戻ってくる。


 一見すると、普通の剣だ。

 

 カチャッ


 アーディスカは、ゆっくりと鞘から剣を抜く。


(お?)


 現れたのは、アーディスカの髪と同じ燃える炎のような『真紅の刃』をした両刃の剣だった。


 しかも、刀身が紅く輝いている。


「綺麗……なのです」


 その輝きに照らされながら、ニアが呟いた。


 うん。


 魔性の魅力というか、この剣は『普通じゃない』と素人の僕でも感じられた。


「…………」


 アーディスカの金色の瞳も、その輝きに魅入られている。


 3人で『真紅の魔剣』を見つめた。


 やがて、アーディスカが確かめるように剣を両手で握って、軽く振る。


 ヒュオッ


 紅い光の軌跡を残して、剣閃が走る。


 今までアーディスカが使っていた剣よりも、軽く、速く、とても扱い易そうだった。


「……いい剣だな」


 アーディスカも驚いたように呟いた。


「思った以上に、手に馴染む。まるで私のために作られた剣みたいだ」


 カシャッ


 そう言いながら、頭上に剣を掲げる。


 その姿は、本当に良く似合っていた。


 まるで昔から、その『真紅の魔剣』を使っていたような自然な雰囲気だった。


 …………。


 もしかしたら?


(今回の『勇者の試練』は、この剣を入手するのが目的だったのかもしれない)


 ふと、そう思った。


 未来の『勇者』に相応しい武器を手にするために。


 そのためにアーディスカは、この『深青の迷宮』に導かれ、あの『3つ眼の巨人』と戦ったのかもしれない。


 確証はない。


 けれど、アーディスカと真紅の剣の組み合わせは、それほどに似合っていた。


「…………」


 アーディスカは、手にした剣を見つめている。


 そこには、満たされた微笑みがあった。


 その『真紅の魔剣』も、赤毛の女剣士を自らの『主』と認め、喜んでいるみたいだった。


(勇者……か) 


 僕も笑った。


 これで、世界にはまた1つ希望の光が灯ったのだろうな、と思った。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その『真紅の魔剣』を手に入れたあと、僕らは兄上の所に向かった。


 広間は広い。


 兄上たち30人の騎士団は、3人1組で広間中に散らばって、あちこちを調べていた。


 薄闇の中、彼らの持つランタンの灯りが揺れている。


「アクレリオ、どう?」


 近づいた僕らに、兄上は振り返る。


 苦笑して、


「まだ『魔核』は見つかっていないよ。けど、この広間が最深部であることは間違いないから、すぐに見つかるはずさ。……おや?」


 兄上の目が丸くなった。


 その視線は、妹の手にある『真紅の魔剣』に向けられている。


「それ、どうしたんだい?」

「見つけた」


 そう答え、僕らは、この魔剣を発見した経緯を伝えた。


 兄上は「へぇ」と感心した顔だった。


 僕は言っておく。


「渡さないよ? これは、僕らが見つけたアーデの剣だ」

「ア、アオイ」


 アーディスカは焦った顔だ。


 でも、ここははっきりさせた方がいいと思った。


 今回の『深青の迷宮』の探索は、アクレリオ兄上を始めとした『聖王騎士団』の主導で行われたものだ。


 それを理由に、発見物を没収されてはたまらない。


 兄上は苦笑している。


「わかっているよ。君たちは『冒険者』であり、協力者だ。発見したのがアオイ君たちなら、それはそちらの所有物でいい」


 本当だね?


(よし、言質は取った)


 他に騎士2名にアーディスカ、ニアもいるから証人もばっちりだ。


 満足する僕。


 兄上は「アオイ君はしっかりしてるね」と笑っていた。


 と、その時、


「見つけたぞ、『迷宮の魔核』だ!」


 そんな声が広間に響いた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 声の聞こえた場所に、全員が集まった。


 そこは広間の最奥にある壁の一角で、その壁が崩れた中に、紫色の脈動するような光を放つ直径50センチほどの『球体』があった。


(これが『魔核』か)


 そこから放たれる光が、僕らの顔を照らしている。


 その『魔核』には、まるで血管みたいな筋が何本も絡みついていて、それが周囲の壁まで伸び、そこで壁と同化していた。


 ドクン ドクン


 脈動に合わせ、その血管に『魔核の力』が光として流れ込む。


 兄上が呟く。


「やはり、成長が早いな」


 50センチの大きさは、できたての『迷宮の魔核』のサイズではないそうだ。


 4~5年のサイズ。


「あるいは、短期間に、それだけの量の『魔素』が異常に集まってしまったのかもしれないね」


 との兄上の予想であった。


(ふ~ん?)


 もしかしたら『勇者の試練』としての特殊な事例だったのかもしれない。 


 まぁ、理由はいいか。


 どちらにしても、この『深青の迷宮』はこれでおしまいなのだ。


「アーデ」


 僕は、彼女の名を呼んだ。


 振り返った彼女に、


「この『魔核』は、アーデが破壊して」

「え?」

「最後の番人である『巨人』を倒したのは、アーデなんだ。誰よりも相応しい資格があるんだよ」


 その顔を見つめ、そう伝えた。


 アーディスカは、戸惑った様子だ。


 アクレリオ兄上を見る。


 兄上は、僕の言葉を認めるように頷いた。


 他の『聖王騎士』たちからも反対意見は出てこない。最後に見せたアーデの勇姿に、誰もが納得しているようだった。


「ほら、アオイ様のご指名なのだから、さっさとやるなのです」


 ペシッ


 ニアが、アーディスカの背中を叩いた。


 押し出され、『魔核』の前に立つ。


 困惑していたアーディスカだったけれど、僕らの視線を受けて、


「わかった」


 覚悟を決めたように頷いた。


 シャン


 新しく手に入れた『真紅の魔剣』を鞘から抜き放つ。


 紅い刀身が輝いている。


 それを振り被り、


「はっ!」


 アーディスカは、それを鋭く振り下ろした。


 ヒュコン


 これが魔剣の切れ味か、『紫色の球体』はあっさりと2つに切断され、その脈動を停止させた。


 ガラッ ガラン


 音を立てて、床に落ちる。


 絡みついていた血管は、萎れて灰色に変色し、ボロボロと崩れていった。


 ゴ……ゴゴゴッ


(お?)


 その『魔核』が破壊された直後、迷宮全体が激しく揺れ出した。


 地震か?


 いや……よく見たら、迷宮を構成している壁や柱などが『光の粒子』に分解していっている。


 周囲全体が輝いている。


「アオイ」


 ギュッ


 驚いている僕の身体を、アーディスカが抱きしめてきた。


「大丈夫だ、アオイ」

「うん」


 微笑む彼女に、僕は頷いた。


 兄上や他の騎士たちにも、慌てた様子は見られない。


 ニアは、ちょっと驚いたようにキョロキョロしていたけれど、危機察知に優れた彼女が逃げる様子はなかった。


 やがて、光が視界いっぱいに広がった。


 …………。


 …………。


 …………。


 次に気がついた時、僕らの目の前には、樹々の生えている森の景色が広がっていた。


 ここは『迷宮の入り口』があった場所だ。


 ブルルッ


 周囲には、30頭の馬もいる。


 僕を抱きしめるアーディスカ、ニア、アクレリオ兄上、29名の聖王騎士も一緒だった。


(なるほど、これが『迷宮の攻略』か)


 1人納得する。


 森を渡ってきた涼やかな風が、僕らの髪を揺らしていく。


 輝く赤毛の髪を柔らかくなびかせ、


「終わったな、アオイ」


 間近にあるアーディスカの美貌が、そう僕へと笑いかけてきた。


 …………。


 太陽みたいな笑顔。


 僕は「うん」と笑って答え、それから、青い空に向かって長く息を吐きだした。

ご覧いただき、ありがとうございました。


残すところ、あと1話!

次回にて一応の完結となりますので、もしよろしければ、皆さん、どうか最後まで見届けてやって下さいね♪

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[一言] 勇者の剣はやはり試練がないとな
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