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回復魔法使いアオイの転生記 ~お姉さん剣士を未来の勇者に育成しよう!~  作者: 月ノ宮マクラ


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30/35

030・予兆(アクレリオ視点)

(……アオイ君は、想像以上だね)


 その力を見せつけられた俺は、そう驚嘆せざるを得なかった。


 俺の名は、アクレリオ・グリント。


 この『深青の迷宮』の攻略のため、派遣された30名の『聖王騎士団』を指揮する部隊長だ。


 今回の派遣で、俺は1人の少年に出会った。


 それがアオイ君だ。


 この子の出自、経歴は不明だ。


 もしかしたら、魔物災害による孤児かもしれないが、現時点ではわからない。


 彼を知ったのは、偶然だ。


 派遣されたレイモンドの町には、妹のアーディスカが暮らしていた。


 アオイ君は、そんな妹に雇われて『冒険者』としての仕事を手伝っている少年だったんだ。


(は……?)


 最初に、その噂を聞いた時は、信じられなかった。


 彼は、稀有な『回復魔法の使い手』で、日々、『冒険者』たちを癒しているという。


 そこまでは、いい。


 それは珍しいけれど、あり得る話だったから。


 けど、その回数がおかしかった。


 1日30回以上。


 毎日、それだけの『回復魔法』を使いながら、けれど、魔力切れを起こす予兆もないというんだ。


 ――あり得ない。


 魔法は、1日5~10回が平均と言われている。


 宮廷魔法使いであっても、20回が限度だ。


 それなのに……。


 俺は、アオイ君を調べてみた。


 けれど、いくら調べてもそれは事実であり、レイモンドの『冒険者ギルド』が聖王都に送った報告書によって、裏付けも取れてしまった。


「いったい、何者だ?」


 興味を持った俺は、直接、アオイ君に会うことにした。


 …………。


 アオイ君は、大人しそうな10歳の男の子だった。


 見た目は、可愛らしい。


 けれど、その瞳には、年齢以上の聡明さを感じさせた。


 ただ、この子はアーデに、思った以上に懐いているようだった。


(……ふむ)


 俺は、それを利用して、『深青の迷宮』の攻略にアオイ君も同行させることにしてみたのだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 本来、『聖王騎士団』の任務に民間人を同行させることはない。


 けれど、今回は嫌な予感がした。


 攻略するべき『深青の迷宮』は、まだ若いはずなのに、何度も『冒険者ギルド』が編成した『迷宮攻略隊』を退けている。


 レイモンドの『冒険者』の質は悪くない。


(何かが、おかしい……)


 これは、ただの勘だ。


 だが、その『何か』をどうにかするためには、『アオイ君の力』が必要だと感じたんだ。


 …………。


 実際、アオイ君の活躍は素晴らしかった。


(いや、それどころじゃない)


 アオイ君の見せてくれた才能は、俺の想定を遥かに超えるものだった。


「癒しの光!」


 その声と共に、美しい回復光が輝く。


 それによって、負傷した騎士たちは回復し、次々と戦線に戻っていく。


 重傷、軽傷、関係ない。


 小さな傷が1つでもあれば、アオイ君は『回復魔法』を使ってくる。


 その回数は、100回を超えた。


 あり得ない回数だ。


 おかげで、何度かの戦闘を経たあとでも、騎士団には1人も負傷者がいなかった。


 それだけではない。


「清浄の光!」


 アオイ君は、ポイズンワームとの戦闘で、毒を受けた騎士の治療もしてしまった。


(……嘘だろう?)


 我が目を疑ったよ。


 まさか複数の『回復魔法』を使いこなすなんて、いったいアオイ君は、どれほどの才能の持ち主なのか……?


 騎士団にも2人の『回復魔法』の使い手がいる。


 けれど、彼らの顔色は真っ青だった。


 ……さもありなん。


 本来、『回復魔法』とはギリギリまで温存され、難局を打破するための切り札として使われる力なのだ。


 それが従来のやり方、騎士団の戦法だ。


 なのに、アオイ君の存在は、その常識を破壊してしまっているのだ。


 …………。


 アオイ君本人は、涼しい顔をしている。


 まだ余力があるのだ。


(……末恐ろしい子だね)


 もしかしたら俺たちは、1000年の歴史に残るような『伝説の偉人』の幼少期を目撃しているのかもしれない、なんて思ったよ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「アオイ、疲れていないか?」

「うん」


 アオイ君とアーデが話している。


 その後ろには、猫系の獣人であるニアという少女もいた。


(……アーデ)


 その姿を見つめる。


 アーデは、俺にとって、幼い頃から大切な妹だった。


 好奇心旺盛で、でも、少し臆病で、いつも俺のあとをついて来るような可愛い子供だった。


 15歳で、俺は『聖王騎士団』に入った。


 その3年後、アーデも俺を追いかけて『騎士見習い』として騎士団に入ってきた時は、さすがに驚いた。


 アーデは、正義感が強く、真面目な性格だった。


 その反面、不器用でもあった。


 彼女は、誰よりも訓練に励み、努力を重ねていたけれど、それを実戦に落とし込むセンスがなかった。


 …………。


 アーデが苦しんでいたのは、知っている。


 けれど、助言はできなかった。


 アーデが強くなるために必要なのは、もう理屈ではなく、ただ時間だけだとわかっていたからだ。


 だが、それは間違っていたかもしれない。


 当時の俺は、史上最年少で『聖王騎士団』の『隊長』に抜擢される寸前だった。


 反対する者もいた。


 そして、その矛先はアーデにも向けられたんだ。


 アーデは追い込まれ、結果として、俺を守るために『聖王騎士団』を退団してしまった。


 俺がその事実を知ったのは、アーデが辞めたあとだった。


 ……兄失格だ。


 その負い目もあったからか、アーデを追いかけられなかった。


 俺が何かをしようとしても、それは余計に傷ついたアーデを苦しめるだけだろう。


 俺は、彼女の所在だけを知り、ただアーデを見守ることしかできなかった。


 …………。


 今回の派遣は、その転機だったと言える。


 久しぶりに再会した妹は、やはり、まだ心の傷に苦しんでいるみたいだった。


 だが、


「はあっ!」


 ザキュッ


 迷宮での魔物との戦いを見て、驚いた。


 騎士団にいた頃とは、見違えるほど、アーデは強くなっていた。


(そうか)


 これまでに積み重ねてきた努力と経験が、ようやく花を咲かせ始めたようだった。


 よかった……。


 そのことに、俺は深く安心してしまった。


 ふと気づけば、アーデは、隣にいるアオイ君に、明らかな信頼の眼差しを向けていた。


(なるほど)


 どうやらアーデの開花を促したのも、アオイ君のようだ。


 本当に不思議な子だね。


 アオイ君と一緒にいるアーデは、この『迷宮』の中でも笑顔をこぼしていた。


 そこにかつての陰は、どこにもない。


 …………。


 アーデは、ようやく自分の居場所を見つけたのかもしれない。


 そんな妹の姿に、俺は、小さく微笑んだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 アオイ君の活躍もあって、『深青の迷宮』の探索は順調に進んだ。


 すでに2階層を踏破。


 残るは、最下層のみとなっている。


「やっ!」


 ドシュン


 俺は剣を振るって、目前に立ち塞がっていた『クリムゾンオーガ』を倒した。


 重い音を立て、紅い巨体が倒れる。


 ズズン


(ふう……)


 周囲を見れば、他3体の魔物も無事に倒されたようだ。


 アオイ君の『回復魔法』によって、負傷した騎士たちも全員、万全の状態へと回復していく。


 …………。


 この『深青の迷宮』は、若い割に、あまりにも魔物が多い。


 現れるのも、Dランク以上の魔物の集団ばかりだ。


(なるほど)


 これまで『冒険者』たちが攻略できなかったのも頷ける。


 アオイ君がいなければ、俺たちもここまで順調に、1人の脱落者も出さずには来れなかっただろう。


 やはり、いつもとは『何か』が違うようだ。


 …………。


 再び探索を再開すると、すぐに最下層への階段を見つけた。


 俺たちは、その暗闇へと降りていく。


 ガシャン ガシャン


 自分たちの足音だけが響く。

 

 やがて、降り切った廊下の先にあったのは、高さ5メーガン以上もある『金属製の扉』だった。


(ここが最奥か)


 経験上、そう理解する。


 この奥にある『魔核』を破壊すれば、迷宮攻略は完了だ。


 その時だった。


「駄目なのです、アオイ様!」


 ニア君の声がした。


 振り返ると、アオイ君の腕を掴んで、必死に首を左右に振っている彼女の姿がある。


「この先の気配は、まずいのです! 絶対に行っては駄目なのです! 引き返しましょう、アオイ様!」


 その声は真剣だ。


 ニア君も、まだ粗削りな部分はあるけれど、Cランクの魔物とも渡り合える相当な実力者だった。


 その彼女が怯えている。


 獣人には、人にはない『危機察知能力』があるという。


 …………。


 アオイ君とアーデは、戸惑った顔だ。


 俺は改めて、目の前にある金属製の巨大な扉を見上げた。 


「引き返すわけにはいかない……か」


 苦笑する。


 俺たちは、この聖王国を守るための『聖王騎士団』だ。


 息を整え、前を見据える。


「よし、行くぞ」


 ガシャン


 皆に号令をかけた俺は、その金属の扉の向こう側へといくために、自身の両手を押し当てた。

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書籍1巻
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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ アーディスカが現在の状況に至るまでの流れを第三者視点で語られた事。 [一言] アクレリオ、お子様なアオイを利用している事を認めているのですね……。
感想一覧
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