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回復魔法使いアオイの転生記 ~お姉さん剣士を未来の勇者に育成しよう!~  作者: 月ノ宮マクラ


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029・オーク戦

「下がっていろ、アオイ!」


 ガシャン


 兜を被り、剣と盾を構えたアーディスカが僕の前に立つ。


 両手の爪を伸ばしたニアも、


「アオイ様には、指1本触れさせないなのです!」


 ジャキッ


 その尻尾を逆立てながら、アーディスカの隣に並んだ。


 更に、そんな僕らを守るように30名の『聖王騎士』たちが前に出て、迫りくる『オーク』の群れを迎え撃った。


 互いの武器、防具の衝突音が響き、肉のぶつかる重い音が弾ける。


 雄叫び。


 断末魔。


 様々な叫び声が、この空間に木霊した。


 …………。


 1対1の実力は、Cランクの『オーク』よりBランクの『聖王騎士』の方が上だ。


 けれど、数は『オーク』の方が上回っていた。


 戦況的には、まだ互角。


 徐々に『聖王騎士団』が有利になっている気はするけれど、予断は許さないだろう。


 そして、戦いの中で負傷する『騎士』も出始めた。


(ん……)


 僕は、小さな両手を突き出した。


 パァアッ


 足元に、光り輝く魔法陣が展開。


 両腕に2~3本の光のラインが走り抜け、両手のひらが輝きだす。


「癒しの光!」


 ピカッ ピカッ


 美しい回復光が放たれた。


 それを受けた『聖王騎士』たちの傷は、あっという間に消滅する。


「おお……っ!?」

「こ、これは……!」


 彼らは驚いた顔だ。


 僕は叫ぶ。


「怪我はいくらでも治します! さぁ、戦って!」


 彼らは僕を見る。


 すぐに頷いて、


「すまない!」

「感謝するぞ、少年!」


 力強く答えると、すぐに戦線に戻っていった。


 ガンッ ギィン


 激しい戦闘が続く。


 僕は、そちらへと両手を伸ばし続けて、


「癒しの光!」


 ピカッ ピカッ ピカッ


 負傷した騎士が現れたら、片っ端から治していく。


 かすり傷でも関係ない


 とにかく、少しでも身体が傷ついたなら、即座に『回復魔法』を使いまくった。


 そんな時、


『プギィイッ!』


 騎士団の防波堤を抜けて、1体のオークが僕の方に突っ込んできた。


(!)


 まずい!


 僕は、慌てて『金属の円形盾』を構えようとした。


 でも、その前に、


「させん!」


 ガギィン


 盾を構えたアーディスカが前に出て、振り下ろされた鉄斧を受け止めた。


 激しい火花が散る。


 その隙に、ニアが霞むような速さで魔物の背後に回った。


「にゃあっ!」


 ザシュッ


 長く伸びた爪が、オークのアキレス腱を切断する。


『ピギッ!?』


 バランスを崩して、オークは片膝をつく。


 その瞬間、アーディスカの剣が、動きの止まったオークの首を薙ぎ払うように振り抜かれる。


 ヒュコン


 剣閃が走り抜けた。


 オークは驚いた顔をし、その頭部が床へと落ちた。


 ゴトン


 鈍い音が響く。


 それを見て、騎士たちのアーディスカとニアを見る目が変わった。 


 オークは、Cランクの魔物。


 本来、Fランクの『冒険者』が倒せる相手ではなく、けれど、2人はあっさりとそれを成したのだ。


(ふふっ)


 強いだろ、うちのアーデは?


 近い内に、聖王騎士そっちよりももっと強くなるんだからね。


 心の中で自慢する。


 とはいえ、当のアーディスカ本人は、そんな余裕はないようで、オークたちの動きに集中していた。


(頼もしい護衛だね)


 その安心感を味わいながら、


「癒しの光!」


 ピカッ


 僕は再び、負傷する騎士たちを即座に治していった。


 …………。


 …………。


 …………。


 やがて、アクレリオ兄上が群れのボスらしき頭1つ大きな『オーク』を倒して、勝敗は決した。


 生き残った魔物は、『迷宮』の闇へと逃げていく。


(ふぅ……)


 僕は、大きく息を吐く。


『おおおおーっ!』


 騎士たちは勝鬨をあげていた。


 今回の戦闘は、無事、僕らの勝利で終わったようだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「さすがだね、アオイ君」


 戦いが終わったあと、兄上にそう声をかけられた。


(ん?)


「あれだけの魔物との戦闘で、負傷者が1人もいない。こんなことは初めてだよ」


 本当に感心した表情と声だ。


 そう。


 でも、僕としたら、いつも通りだ。


「使った『回復魔法』の回数は覚えているから、あとでお金、まとめて払ってよ?」


 ちゃんと釘を刺す。


 彼は「あぁ、わかったよ」と苦笑しながら頷いた。


 それから、


「まだ魔法を使う余力はあるのかい?」


 と聞かれた。


「もちろん」


 あと100回でも1000回でも問題ない感覚である。


 それを伝えると、兄上だけでなく、周りにいた騎士たちも目を丸くして僕を見つめていた。


 兄上は微笑む。


「そうか。では、これからも頼りにしてるよ」

「うん」


 僕は頷く。


 頼りにしてるのは、こちらも同じだ。


 この『深青の迷宮』を攻略することは、きっとアーディスカに与えられた『勇者の試練』だと、僕は思っている。


 そのためには、まだ『聖王騎士団』の協力が必要だ。


 ギブ・アンド・テイク。


 そのためなら、僕の方は、いくらでも『回復魔法』を使ってあげるよ。


 …………。


 やがて、僕らは、再び移動を開始した。


「アオイ、疲れていないか?」


 歩いていると、アーディスカが心配してくれた。


 僕は笑った。


「うん、大丈夫」

「そうか」


 彼女も微笑んだ。


 そんな赤毛の剣士を見つめて、僕は言う。


「さっきは凄かったね、アーデ。あのオークって魔物を、1太刀で倒しちゃうんだから」


 彼女は苦笑した。


「自分でも驚いたよ。ただ『アオイを守らなければ』と思ったら、不思議と力が湧いてきてな」


 そう言いながら、右手を見つめている。


(……ふ~ん)


 思いを力に……って、奴なのかな?


 僕は言う。


「じゃあ、これからも守ってね?」

「あぁ」


 アーディスカは微笑み、力強く頷いてくれた。


(……ん?)


 その時、いつもなら口を挟んでくるニアが、浮かない表情をしていることに気づいた。


 ニア?


「どうしたの?」


 問いかける。


 ニアの獣耳は伏せられていて、尻尾も力なく垂れている。


「なんだか、嫌な予感がするのです……」


 え?


「この先、どんどんと危険が増えていく気がするなのです。正直、ニアはこれ以上、先に行きたくないなのです」


 思わぬ言葉に、アーディスカと顔を見合わせてしまった。


 でも、ニアの声は真剣だった。


 …………。


 僕は背伸びして、ニアの頭を手で撫でる。


「大丈夫。僕がいるよ」

「…………」

「ね?」

「……はい、なのです」


 彼女は息を吐き、ようやく微笑んでくれた。


 うん。 


 気を取り直したように、僕らは『聖王騎士団』と共に歩みを進める。


(嫌な予感……か)


 廊下の奥の闇を見つめた。


 軽く頭を振って、不安を振り払うと、僕は、その闇へと向かって足を踏み出していった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ この先に待ち構えている危機に対しても反応する辺り、野生の勘の仕事ぶりが凄まじいですね。 [一言] 正直、アオイの言いたい事も分からなくは無いのですが、其れで…
[一言] 猫のかんは当たる
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