027・聖王騎士団
こっそりタイトル変更しました。
これからも変更したり、元に戻ったりする可能性もありますが、まだまだ試行錯誤中の作品という事でどうかお許し下さいね。
また、いつもアオイたちの物語を読んで下さって、皆さん、本当にありがとうございます♪
目前の草木を散らして姿を現したのは、体長5メートルもある巨大カマキリたちだった。
(キラーマンティスか!)
Bランクの魔物だ。
威圧感のある巨体に、前回、戦った時の恐ろしさを思い出す。
しかも今回は、
「3体だと!?」
その現実に、アーディスカも驚きの声をあげた。
突然の魔物の襲撃に、けれど『聖王騎士団』は慌てた様子も見せずに、即座に隊列を組みながら3体の魔物と対峙した。
アクレリオ兄上が指示を出す。
「1体につき7人で対処しろ! 残りの9人は周辺警戒を怠るな!」
『はっ!』
厳しい訓練の成果か、騎士たちはすぐに行動を開始する。
3組に分かれ、7人が1つの集団となってキラーマンティスへと突進した。
『キシャアアッ!』
魔物たちも、巨大な鎌を振り上げ応戦する。
残った9人の騎士も周辺を警戒しつつ、同時に、各組に3人ずつがすぐ仲間のサポートに入れる体制を作っていた。
(いい動きだな)
ちょっと感心してしまう。
馬上の戦闘に慣れていない僕とアーディスカは、すぐに馬を降りた。
「下がっていろ、アオイ」
ガシャッ
兜を被り、剣と盾を構えたアーディスカが僕の前に立つ。
ニアも馬から飛び降りて、
「アオイ様は、ニアが守るなのです!」
と、両手の爪を長く伸ばしながら、赤毛の冒険者の隣に立った。
こっちも頼もしい。
けれど、そんな僕ら3人の前で行われたのは、一方的な展開の戦闘だった。
ガシュッ ザキュン
『キシャア!?』
騎士たちの攻撃で、キラーマンティスの巨体が傷だらけになっていく。
(ほほう?)
聖王騎士たちは、思った以上に強かった。
というか、戦い方が完璧だ。
魔物の正面で2人の騎士が注意を集め、その隙に左右と後方から5人の騎士が攻撃して、その巨体に傷を与えていた。
魔物が向きを変えたら、役目を交代。
冷酷なほど堅実に、正確に、魔物にダメージを積み重ねていく。
キラーマンティスの動きは、すぐに鈍くなり、あっという間に体液を撒き散らしながら、2体が絶命した。
残る1体も、
「はっ!」
ダキュン
アクレリオ兄上の剣が頭部を切断して、重い音を響かせながら、その巨体が大地に倒れ伏した。
(やるなぁ)
これが『聖王騎士団』の実力か。
あっさりと倒された3体のキラーマンティスに、アーディスカとニアも驚いた顔をしている。
2人の出番はなかったね。
というか、
(むしろ出番がある時は、相当、危険な状況になってそうだなぁ)
と思うのだった。
◇◇◇◇◇◇◇
「アオイ君、ちょっといいかな?」
(ん?)
戦闘が終わったあと、アクレリオ兄上に呼ばれてしまった。
近づくと、1人の騎士が太もも付近から血を流して、地面の上に座り込んでいるのが見えた。
どうやら負傷したらしい。
さすがに無傷の勝利とはいかなかったみたいだ。
「不覚を取ってしまってね。すまないが、アオイ君の力で治してもらえないだろうか?」
と兄上。
(ふ~ん?)
この騎士団には、実は『回復魔法』の使い手が2人いると聞いている。
でも、ここで指名されたのは『僕』だ。
どうやらアクレリオ兄上は、他の騎士たちに、僕の実力を見せておきたいと思っているようだ。
「わかった、いいよ」
僕は頷いた。
そして、小さな右手を、兄上に突き出した。
「?」
兄上は怪訝な顔をする。
僕は言った。
「お金」
「え?」
「僕は、アーデ以外を治す時は、お金をもらうって決めてるんだ」
「そ、そうなのかい?」
兄上は驚いた顔だ。
他の騎士たちは、顔を見合わせている。
アーディスカは、ちょっと焦った顔だ。
「ア、アオイ」
何かを言いたそうな目で僕を見つめてくる。
でも、ここは譲らない。
僕がお金をもらうのは、相手の心に打ち込む『楔』なんだ。
対価もなしに『回復魔法』を使えば、相手は、それが当たり前だと勘違いをしてしまう。怪我をしても、代償もなく治せるのだと錯覚してしまう。
それは危機感を鈍らせる。
自分から怪我をする危険を犯して、結果、死んでしまうかもしれないんだ。
(そんなこと、させない)
僕の力は、人を死なせるためにあるんじゃない。
小さくても、対価を。
それがきっと、その人の心を間違わせない『楔』となるはずなんだ。
…………。
譲らない意思を、兄上も、僕の瞳から感じたみたいだ。
ため息をこぼし、
「わかった、いくらだい?」
と聞いてくる。
「5ゴル」
「安いな!?」
兄上や騎士たちは、また驚いていた。
チャリン
呆れた様子で、僕の手のひらにゴル硬貨を落としてくれる。
(毎度)
それを布袋にしまう。
その上で、僕は改めて、負傷している騎士へと近づいた。
「…………」
「…………」
「…………」
周りの騎士からの視線を感じる。
それを無視して、小さな手のひらを騎士の太ももにある傷へと向けて、意識を集中した。
パアアッ
足元に、光る魔法陣が展開。
両腕には、光のラインが2~3本走り、手のひらが輝きだした。
「癒しの光」
ピカッ
美しい回復光が傷口を覆い、その傷はあっという間に塞がってしまった。
『おお……っ』
見ていた騎士たちから、どよめきが起こった。
その目で見て、ようやく僕が本当に『回復魔法の使い手』なのだと納得してくれたみたいだ。
「いい腕だ」
アクレリオ兄上も頷いている。
僕が褒められて、アーディスカは嬉しそうな顔をしていた。
ニアも胸を張って、「アオイ様ならば当然なのです!」と得意げな様子だ。
(ふむ)
僕を見る騎士たちの目が変わった。
それを感じる。
どうやらアクレリオ兄上の計算通りみたいだ。
(ま、いいけどね)
僕は、息を吐く。
それから、自分を見つめてくる全員を見回して、
「ほら。怪我も治ったんだから、みんな、早く先に行こう?」
と、首をかしげて促した。




