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回復魔法使いアオイの転生記 ~お姉さん剣士を未来の勇者に育成しよう!~  作者: 月ノ宮マクラ


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23/35

023・過去と現在

 10日後、レイモンドの町に『聖王騎士団』が到着した。


 その数、30騎。


 聖王国ライトレアが誇るという騎士団は、今回、『迷宮攻略』のためにこの町まで来てくれたのだ。


 町の通りは、多くの見物人でごった返している。


 僕ら3人も、その一部だ。


「ふわぁ、ピカピカなのです!」


 ニアは瞳を輝かせる。


(うん、そうだね)


 馬上の騎士たちは、皆、煌びやかな銀色の鎧と純白のマントを身につけていた。


 どれも高価そうだ。


 馬たちだって、重そうな鎧を装備している。


 騎士たちの装備は、やはり『冒険者』たちの物と比べると、装備品としての格が違うと思えた。 


 …………。


 う~ん、強そうだ。


 騎士たちの強さは、1人1人がBランク並だと噂されている。


 ちなみに、ここレイモンドで1番の『冒険者』がBランクなんだよね。


(それが30人、か)


 そうして見ていると、


「きゃあ、アクレリオ様よ!」

「素敵!」

「あ、こっちを見たわ!」


 見物している女性たちから、黄色い声援が上がった。


(? アクレリオ?)


 その視線を追いかけると、騎士団の先頭を進んでいる1人の騎士が見つかった。


 この騎士団の隊長かな?


 他の騎士より、少し豪華な鎧を着ている。


 年齢は、20代と若そうだ。


 赤毛の髪をしていて、整った顔立ちには、意志の強そうな金色の瞳が輝いている。


 うん、素直に格好いい。


 歓声をあげる女性たちの声に耳を傾けると、彼はAランク並の実力者であり、単騎でグリーンドラゴンを倒したこともあるとか。


(ふ~ん?)


 グリーンドラゴンは知らないが、きっと、その強さは相当だろう。


 それを1人で、か。


 あの若さも考えると、まるで物語の『英雄』みたいな人物だ。


 気づけば、あのアーディスカも、目前の通りを進んでいく赤毛の騎士様を見つめている。


 その唇が動いて、


「……兄上」


 そう小さく呟いた。


 …………。


 ……はい?



 ◇◇◇◇◇◇◇



 アーディスカが『話したいことがある』というので、僕は、彼女の宿屋を訪れた。


 ニアには、先に孤児院に帰ってもらった。


 なので、部屋には今、僕とアーディスカの2人だけだった。


「…………」

「…………」


 椅子に腰かけたまま、アーディスカは黙っている。


 その間、僕はベッドに座って、彼女が自分から話し始めるのをずっと待ち続けた。


 やがて、


「……私は……去年まで『聖王騎士団』に所属していたんだ」


 と口にした。


(そうなんだ?)


 その事実に、ちょっと驚く。


 けれど、アーディスカは自嘲気味に笑って、


「といっても、私は『騎士見習い』だったんだがな……」 


 と続ける。


 僕は頷いて、そのまま話を続けるように促した。


 それから聞いたこと。


 実は『グリント家』は聖王国の貴族であり、アーディスカ・グリントは貴族の子女なのだそうだ。


 そして、その3つ上の兄がアクレリオ・グリント。


(あの騎士様か)


 アクレリオ・グリントは、幼少時より剣才に優れた少年だった。


 将来も嘱望されていた。


 そんな兄が、アーディスカは誇らしく、大好きだった。


 兄も、妹の自分を大事にしてくれた。


 2人は、とても仲の良い兄妹だったんだって。


 やがて、アクレリオは15歳で騎士となるため、見習いとして『聖王騎士団』の所属となった。


 翌年には、正式に『騎士』に叙勲された。


 その2年後、15歳のアーディスカも尊敬する兄を追いかけ、家族の反対を押し切って、自らも『騎士見習い』として『聖王騎士団』に入団した。


 兄と共に活躍し、人々を守る。


 それがアーディスカの夢だった。


 そうして彼女も『騎士』となるため、日々の厳しい訓練を重ねていったそうだ。


 けど、


「……身の程知らずだったよ」


 と、アーディスカは自嘲する。


 聖王国ライトレアの誇る『聖王騎士団』は、見習いであっても皆、実力者の集まりだった。


 その中で、


「私は……落ちこぼれだったんだ」


 訓練の成績は最下位ばかりで、見習い同士の模擬試合では1勝もできない。


 周りの目も、冷ややかだった。


 特に兄は、史上最年少で『騎士』となった神童アクレリオであった。


 当初、アーディスカにかけられた期待は大きく、けれど、その反動もあって、期待外れだった彼女に向けられる視線は、余計に厳しいものになってしまったのだ。


 …………。


 自身への絶望。


 孤独。


 未来への焦燥と不安。


 色々なものがアーディスカを苛んだ。


 けれど、彼女はがんばった。


 周囲に、どれだけ落胆されようと、蔑まれようと、自身の目指した夢は変わらない。


 必死だった。


 必死に歯を食い縛って、3年もの間、がんばったのだ。


「けど……それが間違いだった」


 アーディスカは、どこか壊れたように笑って、そう言った。


 周囲の反応とは裏腹に、兄であるアクレリオは、アーディスカのことを常に励まし、庇ってくれていた。


 当時、彼は騎士団の『部隊長』に抜擢されるかという時期だった。


 これも最年少記録。


 そのアクレリオ・グリントの輝きは、けれど、悲しいことに一部の人々の暗い感情も刺激していた。


 そして、アーディスカは退団を示唆された。 


 実力がない者を『聖王騎士団』に、いつまでも置いてはおけないという理由だった。


 アクレリオは、そんな妹を庇った。


 その結果、


「兄上は、無能な妹を庇って『公私混同』の罪に問われた。そして『部隊長』としての話も立ち消えになりそうだったんだ」


 それは、一部の人々の策だった。


 けれど、アーディスカにとっては衝撃だった。


 自分の存在が、大事な兄アクレリオの足枷となっていることを、ようやく自覚してしまったのだ。


「もっと早く気づくべきだった……」


 アーディスカは、顔を手で覆う。


 その声には、苦い後悔が滲んでいた。


 …………。


 そして、アーディスカ・グリントは、すぐに自らの意思で『聖王騎士団』を辞めた。


 夢を諦めて。


 それまでの自分を、努力を否定して。 


 彼女は実家にも戻らず、放浪し、そして5ヶ月前にこの『レイモンドの町』へと流れついて、『冒険者』となったのだそうだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「結局、私は逃げてしまったのだ……兄から、自分から、全てから」


 アーディスカは、そう言った。


 その表情は、壊れてしまいそうな危うさがあった。


 …………。


 全てを聞き終えて、僕は、アーディスカを見つめていた。


 そして、


「逃げるのは、いけないことなの?」


 と、首をかしげた。


 アーディスカが顔をあげ、僕を見る。


 僕は言った。


「アーディスカが逃げてくれて、僕はよかったよ。だって、だから僕は、アーディスカと出会えたんだから」

「……アオイ」


 彼女は、驚いた顔をしていた。


 ギュッ


 小さな両手で、彼女の手を握る。


「大丈夫」


 そう笑った。


「アーデは、これから強くなる。騎士よりも、誰よりも……。必ず、僕がそうしてみせる」


 だって、君は未来の『勇者』なんだ。


 騎士なんて目じゃない。


 君は、世界を救うんだ。


 大勢の人々を守るんだ。


 僕の真っ直ぐな視線を、アーディスカは見つめ返した。


 そして、


「ア、アオイ……」


 泣きそうな顔をする。


 ギュウ


 まるで幼い子供がすがるように、僕の小さな身体を抱きしめてくる。


 大丈夫。


「アーデは強くなるよ」


 ポン ポン


 その背中を、優しく叩く。


 触れ合うアーディスカの肌は、とても熱くて、小さく鼻をすする音がずっと聞こえていた。


 しばらく、そうしていた。


 やがて、アーディスカが身体を離す。


「……ありがとうな、アオイ」


 こぼれた涙を手で払いながら、彼女は、少し恥ずかしそうに笑った。


(ううん)


 僕も笑顔を返す。


 そんな僕の顔を、アーディスカは潤んだ瞳で見つめていた。


 その時だ。


 コンコン


(ん?)


 突然、部屋の扉がノックをされた。


 思わず、アーディスカと顔を見合わせてしまう。


「だ、誰だろうな?」


 少し気恥ずかしくなったのか、彼女は、なんだか頬を赤くしながら立ち上がった。


 扉へと向かう。


「はい?」


 そう言いながら、扉を開けた。


 途端、アーディスカは硬直した。


(え?)


 彼女の目の前に、背の高い赤毛の騎士様が立っている。


 彼は、小さく片手を上げた。


 柔らかく微笑んで、


「やぁ、アーデ。……久しぶりだね」


 そう穏やかに言う。


 アクレリオ・グリント――アーディスカの実の兄が、なんと妹の部屋を訪問してきたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 騎士団に身内が居るのは想像出来ましたが部隊長でしたか。 複雑な心境ではありそうですが、不仲説ない事は救いですね。 [一言] 宿に兄ちゃん登場。  アクレリオ…
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