001・転生
皆さん、こんばんは。
月ノ宮マクラです。
こちら新作になります。
皆さんに、少しでも楽しんでもらえたなら幸いです。
それでは、どうぞ、よろしくお願いします。
(――回復魔法が使えたらな)
ふと、そんなことを思った。
異世界の文明は、大抵、現実世界のそれよりも劣っていることが多いけれど、医療分野に関してだけは話が別だと思っていた
例えば、攻撃に関しては、現実世界には銃火器がある。
戦車や戦闘機、ミサイルなどを使えば、ドラゴンだって倒せるかもしれない。
核兵器なら国だって滅ぼせるだろう。
異世界の魔法にだって負けてない、と思った。
けど『回復魔法』だけは別だ。
怪我や病気を一瞬で治し、時には、死んだ人さえも生き返らせる――そんなの現代医療でも不可能だ。
それは、現実世界には存在しない本物の『奇跡』だろう。
だからこそ、
(回復魔法が……使えたら……な)
トラックに潰された自分の身体を見つめて、最後にそう……強く……思ったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
「いいんじゃない? じゃあ、これから転生する世界では『回復魔法』が使えるようにしてあげるよ」
自称・神様だという幼女が、そう言った。
気がついたら真っ白な世界にいて、そこには、この背中に翼を生やした幼女が空中に浮かんでいたんだ。
どうやら、これから転生するらしい。
ってか、
(転生する前に、使いたかった……)
そう思ってしまう。
幼女神様は、困ったように笑った。
「世界には、それぞれに定められた理があるんだよ。それを踏み越えるのは、ボクら『神』だって簡単には許されないんだ」
そうですか。
「まぁ、こうして便宜を図って転生できるのだって特別なんだ。感謝してよ?」
特別なの?
目を丸くして驚くこちらに、幼女神様は頷いて、
「君、死ぬ前に1匹の猫を助けただろう?」
え?
あぁ、そういえば……目の前で歩道から車道に飛び出した猫がいたんだよな。トラックが来てるのにさ……。
それに気づいて、反射的に助けようと車道に飛び出してしまったんだ。
(で、こっちが死んでしまった……と)
思い出すと、少し遠い目である。
クスクス
幼女神様は、可愛らしく笑った。
「その猫はね、実は『魂の霊格』が高かったんだ。それで、自分を助けた善良な人間の魂に、どうか救済を……って、強く頼まれてしまってね」
ふぅん?
つまり、猫の恩返し、か。
「そういうこと」
幼女神様は頷いた。
「で、これから君が転生するのは、いわゆる『剣と魔法の世界』だ。まぁ、色々と大変な世界なんだけど……どうか、がんばってね」
……えっと、
(何が大変なんですかね?)
不安になって、聞いてみた。
幼女神様は、ニコッと笑って「行けばわかるよ」とおっしゃるのみだった。
……そうですか。
「まぁ、望み通りに『回復魔法』は使えるようにしてあげるんだ。それだけでも特別扱いなんだから、それで許してよ」
はい。
「うん、いい返事だ」
幼女神様は、大きく頷いた。
それから、
「1つだけアドバイスをするなら、その世界で初めて出会った人間と離れないようにするといいよ。じゃないと、すぐ死んでしまうかもしれないからね」
と微笑む。
(もう死にたくないので、心に刻みます)
こちらもしっかりと頷いた。
幼女神様も満足そうに笑みを深くして、「そろそろ時間だね」と、その小さな手のひらがこちらへと向けられた。
ポワッ
手のひらが光り輝く。
「それじゃあ、次の人生もしっかりと生きるんだよ」
慈愛に満ちた声。
それに頷きを返すと、手のひらの輝きが強くなった。
視界が白い光に染まっていく。
やがて、その輝きは世界全てを包み込み、そうして、この『魂』は異世界へと転生していった。