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宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
アスター魔法学校 1年後期
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 先生は皆からの質問全てに答え終えると、

「では、この時間はここまでとする。4時間目は地理だ」

 と言い、ちょうど3時間目終了の鐘が鳴って、休憩に入った。



 そして、4時間目。

「今日はここまで、宝石竜について学んできた。ではここで、パイルト共和国について学んでみよう。皆はパイルト共和国に対して、どんなイメージを持っている?手を挙げて、その場で答えてくれ」

 まず、ガーネットが手を挙げて、

「私の持つパイルト共和国のイメージは、宝石が権力の象徴で、宝石のような見た目の宝石竜を積極的に探している国、というものです」

 と答えた。


 すると、皆次々に手を挙げ、一人ずつイメージを答えていった。

 内容は、鉱石がたくさん産出されるとか、鉱物や金属の加工品がたくさんある国とか、貴族の権力争いが激しい国、というようなものだった。

 私は、夏の長期休暇中、城の図書室で調べた事と大体同じだな、と考えながら、皆の答えを聞いていた。



 先生は大体の意見を聞き終えると、

「そこまで。答えてくれてありがとう。皆の言うように、パイルト共和国は、様々な鉱物や金属が産出し、それらを加工した物を輸出している。そして、稀に採れる宝石を、貴族達が権力の象徴として集めている。パイルト共和国は、内部にいくつかの国があり、国内の貴族の中から貴族が代表者を選び、代表者の合議で国が統治されている。だから、代表者同士、権力争いが絶えないようだ」

 とまとめた。


「では、次に地図でパイルト共和国の位置を確認してみよう」

 先生が、大きな地図を掲げ、壁に貼った。



 地図には、左下にアステシラー王国が描かれている。南北に長く、西側は海に面している。

 そして、アステシラー王国の北東の方、間に2つの国を挟んだ先に、パイルト共和国がある。

 地図で見ると、いつも私達が王城から学校まで、行き来するときに通り抜けている森は、ちょうど国境の上で途切れている。そして、国境を挟んだ先の2つの国とパイルト共和国にも、森が広がっている。この3国の森も、国境のところで途切れている。ちょうど、国境の上だけ木が無くなっているから、人間が切り開いたのかな?ということは、もともと4国に跨る大きな森だったのかな?



 色々と考えつつ、地図を見ていると、

「パイルト共和国は、この国から見て北東の方向に位置する。山が多いため、国全体の標高が高い。この山々から採れる鉱物が、この国の主な資源だ。冬は寒く、夏は周辺国より気温が低いため、夏は観光客が多いようだ。寒さが厳しいため、作物はあまり育たず、食料は輸入が多い」

 と先生は説明した。


「さて、ここまでで質問は?」

 皆が、手を挙げて先生に質問している。

 皆の質問が終わったところで、私も手を挙げた。

「珍しいな。黄玉、何が気になった?」

 と先生に尋ねられたので、

「アステシラー王国の王城の近くの森は、元々パイルト共和国とその間の2国の4国に跨る、大きな1つの森だったのでしょうか?国境の上だけ木が無いので、人間が切り開いたのかな、と考えたのですが」

 と質問した。


「ああ、その通りだ。国境の上は、警備のために森を切り開いたが、元々1つの大きな森だった。昔、パイルト共和国の山々にも、宝石竜が居たらしい。だが、パイルト共和国の人々は宝石竜の結晶や鱗を手に入れるため、竜を狩った。パイルト共和国から逃げた宝石竜達は、この大きな森に逃げ込んで、森の奥深くで暮らしたらしい。だから、この森は我が国では、王族が管理する聖なる地とされている。今も、実は宝石竜が住んでいるのではないか、と考える人も多い」

 と先生は教えてくれた。


 そして、ちなみに、と付け加えた。

「この学校を囲んでいる森も、この聖なる森の一部だ。まあ、道を通すために切り開いたから、王族の管理する森とは分かれているが。この国を建国したシラー様は、宝石竜のアスター様から様々な知識を授かったので、もし森に宝石竜が居るなら、この国の学生達に知識を授けて欲しい、と願って森の傍にこの学校を建てた、と伝わっている」



 そういう理由で、あの森は王族が管理しているのか。陛下やガーネットから、王族の管理する森だと聞いてはいたけど、今まで理由を訊いた事は無かった。

 頷きながら納得していると、

「他に質問はあるか?」

 と尋ねられた。

「いえ、もうありません。ありがとうございました」

 と私が答えると、ちょうど授業終了を知らせる鐘が鳴った。



「今日はここまでだな。皆、気をつけて寮へ帰ってくれ。あ、黄玉は、助手として仕事を手伝ってくれ」

 と言われたので、私は先生について教室を出た。

 翠玉とガーネットは、私が助手の仕事をしている間、図書室で本を読んでいることにしたようだ。



 レムリア先生と共に研究室に入ると、扉に鍵を掛け、先生が何か魔法を使った。

「今使った魔法は、防音のための魔法だ。扉に鍵も掛けたから、誰かに話を聞かれる心配は無い。黄玉、話せる事だけで構わないから、今日の授業で私が話した事と事実は、どのくらい差があるか教えてくれないか」

「わかりました。でも、先生が授業の中で言っていた事の中に、事実と異なる点は特にありませんでした。あ、でも、“宝石竜が、竜の中でも宝物への執着が強い方である”というのは、本当かどうかわかりません。他の竜には会った事が無いので」

 他にも、竜は実際どのような成長過程を辿るのか、卵はどのようなものなのかなど、先生に尋ねられた事に、一つずつ答えていった。



 しばらく質問攻めにされる羽目になったが、先生は聞きたい事を聞けて満足そうに何度も頷いていた。

「しかし、宝石竜の卵がカラフルだとは、思いもよらなかったな。まあ、元々の住処が宝石の露出した火山なら、その方が景色に紛れて良かったんだろうな。そうした場所から離れて暮らすようになった今では、その見た目は自然界では不利だろうけれど」

 と、先生は卵の見た目に一番驚いたようだった。



 先生からの質問攻めが終わって、今は何時くらいかな、と外を見ると、既に日が沈んでいた。

「しまった。まったく時間を気にしていなかった。……でも、話していたのは3時間くらいか。段々と日が短くなってきたな。それはともかく、今日はここまでだ。色々と聞かせてくれてありがとう。報酬は銀貨6枚だ」

 先生から報酬を受け取り、魔法を解いて貰って翠玉とガーネットを呼んだ。そして、先生に挨拶をしてから3人で寮に戻った。



 寮の食堂で夕食を摂り、部屋に戻ると、

「今日の宝石竜の授業、僕にとっても興味深かったよ。この国での宝石竜の扱いや、いつも行っている森の事とか、初めて知る事も多くて、面白かった」

「俺も、宝石竜の生態や竜にとって宝物がどういうものなのかが、改めてわかって良かった。逆鱗に触れると、竜は烈火の如く怒って、周りを攻撃しながら暴れ回る、と本で読んだことがあるけど、宝物が傷つけられても、同じように怒るんだな。俺も、色々と気をつけないといけないな」

 翠玉とガーネットが、そう言った。

「私も、今日の授業は楽しかった。元は1つだったあの森を、隅々まで探索したら、仲間が居るのかな?なんて考えて、ちょっとわくわくしたよ。まあ、ガーネットと離れるのは嫌だから、他国の森にも行ってみようとは思わないけど」

 私も授業の感想を2人に伝え、その後も寝る直前まで宝石竜について話した。

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