↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
アスター魔法学校 1年後期
80/507

80

「そういえばガーネット、学校に良い人は居ないの?」



 突然、殿下がガーネットにそう尋ねられ、ガーネットが噎せている。

「ゴホッ、…、は、母上、急になぜその質問を?」

「あら、ちょっと気になっただけよ?誰か居ないの?」

「……今の所、特には。黄玉と翠玉が居てくれればそれだけで十分、と思うので、あまり他人に興味が持てません」

「…そう。まあ、先は長いし、ゆっくり気の合う相手を見つければ良いのよ。陛下のように、学校を卒業した後、色々な所を旅してもきっと楽しいわよ」


 ガーネットは、考えてみます、と答えて、その後は黙々と食事を進めた。



「黄玉様と翠玉様は如何かしら?この国では、魔物と人間の結婚も認められているし、どなたか気になる方はいらっしゃる?あ!勿論、ガーネットでも良いのよ?」

 と、殿下が今度は此方に話を振ってきた。

「ガーネットは、友人として、主として、慕っています。それに、特にそういう相手を持つつもりは、今の所ありません。今は、翠玉とガーネットと一緒に居られることが幸せなので」

「僕も、ガーネットは友達であり、主として、大事に思っているよ。僕も今は、姉さんとガーネットと一緒に居られれば、それで良い」

 私達がそう答えると、

「あら、出過ぎた事を申しましたわ。お許しになって。でも、ガーネットを大切に思って下さって、嬉しいわ。ありがとうございます」

 と殿下は仰られた。



 食事が終わった後、私達は寮に戻ることにした。

「また、いつでもいらしてくださいね。ガーネット、いつでも、好きなときに帰ってくるのよ。別に長い休みでなくては帰ってはいけない、なんて校則にありませんもの」

 と仰り、殿下が見送って下さった。

「ありがとうございます。それでは、行ってきます」

 とガーネットが答え、私とガーネットは一礼して、寮に向かった。



 森の中を歩きながら、

「黄玉、さっきの母上との会話の中で、特に相手を持つつもりは無い、って、これから先ずっとか?…ああ、答えたくないなら、答えなくて良いんだが」

 とガーネットに尋ねられた。

「今の所、そのつもり。……ねえガーネット、この国は、宝石竜を保護しようとしているんだよね?」

「ああ。何代も前の王が、保護しようと決定して、保護するために、努力している。保護している、と情報を流したり、宝石竜の情報を集めたりしているが、今の所、この国に来た宝石竜は、黄玉と翠玉だけだ。それがどうした?」

「それだけ、情報を流したり、集めたりしているのに、ほとんど何も集まらない、ということは、もう種を存続させられるほど、宝石竜は多く無いんじゃないか、と思うの」

 私がそう言うと、

「相手は宝石竜じゃないと駄目なのか?」

 と尋ねられたので、私は、他にも理由があって、前置きして、

「前にガーネットが、“過去には、この鱗や結晶をめぐって、家同士や国同士で、争いも起きたそうだ。だから、もし宝石竜がアステシラー王国に居る、鱗や結晶がある、などと公言しようものなら、それらをめぐって、戦争が起こる可能性がある”って言っていたでしょう?戦争では、多くの命が失われる。宝石竜という種が、今後も戦いの種になるのであれば、いっそのこと、このまま絶滅すべきではないか、と思うの」



 翠玉とガーネットは、私の意見を聞いて、その場で立ち止まって考え込んだ。

 少し経って、翠玉が、

「僕は、まだ姉さんほどちゃんとした考えは無いけど、これから色々と考えてみるよ。でも、どんな答えになろうと、姉さんと離れる気はないから」

 と言った。


「別に、慌てなくて良いんだよ。私も、今の所、そう考えているだけで、私が生きている内に、人間が争わなくなれば、この考えも変わると思う。……まあ、難しそうだけど」

 私が翠玉にそう答えると、

「黄玉、俺達人間のせいで、そんな考えにさせてしまって、ごめん。俺も、これから、色々と考えてみる」

 とガーネットが言った。



 その後は、3人共黙ったまま、森を抜け、寮に戻り、少し早めに夕食を食べて眠った。



 翌日。

 いつも通り起きて、3人で寮の食堂で朝食を摂り、学校へ向かった。


「さて、今日は1、2時間目が魔法の授業だが、何か学びたい事はあるか?魔法に関する事なら何でも良いぞ」

 と、教室に入ってきたレムリア先生が言った。



 レムリア先生は偶に、その日の授業の内容をその場で生徒に決めさせることがある。

 生徒から、疑問や興味がある事などを授業の最初に聞き、あがってきた事に対して、答えたり説明したり、という形で、授業を進めていく。



 今日は、ガーネットが手を上げた。

「先生、従魔契約の歴史、従魔契約と奴隷契約の違い、従魔は、周りの人からどう見られるのかなど、従魔に関する事が知りたいです」

 先生はそれに頷き、

「では、今日の授業は従魔に関する事としよう」

 と言った。



「さて、まずは従魔契約と奴隷契約の歴史から語ろうか」

 と言い、先生が契約の歴史について説明し始めた。



 先生によると、従魔契約は昔からあり、魔物同士でも行われることがあるらしい。

 魔物同士では、弱い者が強い者とこの従魔契約をして、守って貰う代わりに身の回りの世話をするなど、互いに利害が一致するときに、この契約が使われる。また、魔物の中には、群れを作るときに、この契約を互いに結ぶ種もいるらしい。

 人間も、魔物と互いに利害が一致するときや、ずっと一緒に居たいと思ったときに、昔からこの契約をしてきた。

 しかし、従魔契約は、互いの同意がなければ、行うことができない。

 それを煩わしく思ったのか、人間は、それまで人間の犯罪者にのみ使えた奴隷契約と、従魔契約を研究し、魔物にも有効な奴隷契約を生み出してしまった。

 これにより、労働力として魔物が奴隷のように扱われ、近年では魔物と人間は、互いに相容れない存在となりつつある。



「かつては、人間も魔物も、同じ立場だったが、人間が魔物にも有効な奴隷契約を作ったせいで、人間が魔物より上だ、と考える者が増えてきている。この考えのせいで、魔物に乱暴なことをするから、魔物も人間を忌避し始めている。君達は、ちゃんと魔物がどういう存在なのかを学び、“魔物”という固定観念に囚われず、ちゃんと相手を見られるようになってくれ」

 と、先生は締めくくった。



「では次に、従魔契約と奴隷契約の違いについて話そう」



 従魔契約は、歴史について語ったときに述べたように、互いの同意がなければ契約できない。

 この契約では、どちらが主、というような明確な上下関係は、契約上は無い。互いの心理で上下が決まるだけで、此方に従わなければならない、などという決まりは、契約の中には無い。

 契約上は上下関係が無いので、主に従魔が反抗しても、特に問題は無い。

 また、従魔契約は、片方が契約を破棄したい、と思ったときに、勝手に破棄できる。

 これらのことから、従魔契約は、互いの同意や意思が重視された契約である、と言える。


 一方、奴隷契約は、明確な上下関係があり、主に絶対服従でなければならない。主の命令に反抗すると、主が契約時に予め決めていた罰が下る。

 そして、主となる者は、相手の同意無しに奴隷契約を結ぶことができる。そのため、無理矢理奴隷契約で奴隷として働かされている魔物もいる。

 また、主の方から一方的に契約の破棄はいつでもできるが、奴隷の方から契約の破棄は難しい。

 奴隷契約には、紙全体に模様が描かれた、専用の書類が必要で、その紙を破るか、跡形も無く燃やせば、奴隷からでも契約を破棄できる。しかし、大抵、主により厳重に保管されているので、奴隷は自分の契約書を手に入れることが難しい。これにより、奴隷側からの契約の破棄が難しくなっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。