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「あの…、私は黄玉さんと先生に質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
1人の女の子がそう尋ねた。
「構いませんよ」
と私が言い、先生が頷くと、
「前期のときに作って頂いたこのマジックバッグ、使用者を登録することはできませんか?そういうことができる、と本で読んだのですが、自分ではやり方まではわからなくて……」
と言った。
すると、他の子もそれに同意して、
「私も、できれば使用者登録がしたいです」
「僕も登録したいです!」
と次々に声が上がった。
「どうして使用者登録がしたいのか、訊いても良いですか?」
と私が言うと、最初に質問した子が教えてくれた。
マジックバッグは、普通、それを専門に扱う店で買う。しかし、普通のバッグは銀貨数枚で買えるが、マジックバッグとなると、小さい物でも値段が金貨1〜2枚と高い。
しかも、そうした店にある物は、ピンからキリまであり、値段の割に入る量が少なかったり、すぐ壊れてしまったりする物もあるらしい。この良し悪しは、「鑑定」のスキルを使わない限り、判別できない。
なので、貴族であっても、中々良いマジックバッグには巡り会えない。
そんな中、私が前期にクラス全員に作ったマジックバッグは、大きさの割に入る量が多く、耐久性と強度も上がっていて、かなり質が良い物だったらしい。
そのせいで、家で他の家族に、勝手に使われたり、とられそうになったりと、色々と問題が起きたそうだ。
私がマジックバッグにしたバッグは、学校指定のバッグだったため、このバッグが無いと、学校で困る。
だから、他人に使われないよう、使用者登録をしたい、との事だった。
説明を聞いて、私が納得していると、先生が、
「……これはきっと、生徒達にとっても勉強になるな。よし、授業の一環として、報酬は学校から出させる。だから、黄玉!全員分のマジックバッグへの使用者登録を頼む」
と言われた。
「え…。先生もできるんですから、先生もやって下さいよ」
と私が言うと、
「それでも良いんだが、マジックバッグは、できる限り製作者と登録を行う者が同じである方が良い。その方が、マジックバッグの強度が上がるんだ。なぜそうなるかは、未だ研究中だが」
と言われた。
なので、私は「鑑定」を使って、全員分のマジックバッグに、それぞれ使用者の名前を登録した。
登録を続けている間に、ルリタマは教室内を見て回るのに飽きたのか、
「ボク、マジックバッグに戻るぞー」
と言って、私のマジックバッグに入って行った。
私が登録をしている間、先生は使用者登録のやり方を説明していた。
「使用者登録は、“鑑定”のスキルを使える者しか行うことができない。そして、“鑑定”のスキルが使えれば、誰でも使用者登録できる、というわけでもない。“鑑定”で使用者登録をするにはまず、それができるところまで、スキルの練度を上げなければならない」
そこまで先生が説明したところで、生徒が質問した。
「先生!スキルの練度なんて初めて聞きました。他のスキルにもあるのですか?」
「ああ。どうやらあるようだ。だが、このスキル練度については、まだわからないことも多く、教えられることは少ない。……人や魔物も鑑定できれば、わかることも多そうだが。まあ、できないことを嘆いても仕方ない」
先生が、最後にぼそっと言った。
……私は、人や魔物の鑑定もできるんだけど。でも、スキルの練度がわかった試しはない。いつかわかるようになるのかな?
昼食の時間を知らせる鐘が鳴った。
一旦、マジックバッグの使用者登録を中断して、午後、続きを行う。
私はガーネットと共に、寮の食堂へ行き、昼食を摂った。
昼食を終え、午後の授業の開始を知らせる鐘が鳴った後、マジックバッグの使用者登録を再開した。
その間先生は、時間割を変更して、魔法の授業をしている。
3時間目が終わる頃、全員分の使用者登録を終えた。
「先生、全員分のマジックバッグへの使用者登録、終了しました」
と私が声を掛けると、
「そうか!ありがとう。さて、では4時間目は、使用者登録をされたマジックバッグを、他人が使おうとするとどうなるか、実験だ」
と言って、先生は生徒達に、互いのバッグを交換させた。
「全員、他人のバッグが手元にあるな?では、そのバッグを開けてみてくれ」
先生に言われて皆、バッグを開けようとしたが、バッグの留め具を外そうとしても、留め具が動かず、開かなかった。
「先生!留め具が全く動きません」
という声があちこちから上がり、
「では、持ち主に返して、ちゃんと開くか確かめてくれ」
という先生の指示で、皆はバッグを交換して、自分の物を開けてみた。
すると、簡単に留め具が外れ、バッグを開けることができた。
「今おこなったように、使用者登録のしてあるマジックバッグは、他人には開けられない。出来の良いマジックバッグだと、何度か試すと、留め具から手を弾かれるようになる。恐らく、今皆の手元にあるマジックバッグも、何度も他人に開けられそうになると、留め具から手を弾かれるぞ」
と先生が説明した。
他人のマジックバッグ開けようと、何度も留め具を触ると、手を弾かれるようになるんだ。そんなに何回も、開かないかどうかを試したことは無いから、今まで知らなかった。
「ちなみに、この手を弾かれる強さは、繰り返す度に強くなっていく。こうした防犯機能は、製作者と登録を行った者が同じ方が、付きやすい。だから、今回も黄玉に全てのマジックバッグの使用者登録を行って貰った」
と先生は付け加えて説明した。
そんな効果があるんだ。防犯機能がちゃんと付くなら、確かにバッグの製作者である私が登録して良かったかも。
生徒達は、他の人にマジックバッグを貸してもらい、本当に手を弾かれるか、試している人も居た。
「さて、今日の授業はここまでとする。気をつけて寮に帰ってくれ。ああそれと、黄玉とガーネットは、後で職員室に来てくれ」
と先生が言い終えると、丁度鐘が鳴った。
私は、ガーネットと共に、職員室に向かおうとしたが、他の生徒達が集まってきた。
「黄玉さん、マジックバッグと使用者登録、ありがとうございました!」
「おかげで安心して使えますわ。本当にありがとうございます!」
とそれぞれお礼を言ってくれた。
「それは良かったです。私は、レムリア先生の助手として、後期も教室やレムリア先生の研究室に居る事が多いと思うので、これからも一緒に色々と学ばせて頂きます。よろしくお願いします」
と一応、挨拶をすると、
「「「こちらこそ、宜しくお願いいたします」」」
と皆で声を揃えて応えてくれた。
挨拶をして教室を出て、職員室へ向かった。
「やあ、生徒達とも良い関係が築けそうじゃないか」
と、職員室に入ると、レムリア先生が声を掛けてきた。
「先生、すぐに教室から出ていかれたと思ったのですが、聞いていたのですか?」
「ああ。私が居ない方が、会話しやすいかと思って、教室を出て少し聞いていた。中々、慕われていそうだな」
と先生に言われた。
「それなら嬉しいです。……ところで、今日は助手の仕事はありますか?」
と私が尋ねると、
「いや、今日は無いな。今日はこれから、授業で聞いた事をまとめなければならないからな。皆の話も、黄玉の話も、とても興味深いものだった。この話をまとめて、これから何を研究するか、検討するつもりだ。……さて、今日の分の報酬を渡さないとな」
先生はそう言って、小さめの革の袋と書類を渡してきた。
「ここに、報酬が入っている。確認してくれ。1つにつき金貨3枚、24人分だから、72枚。更に、授業を手伝ってくれた分の報酬が金貨1枚だから、締めて73枚だ。それと、これらの報酬について書かれた契約書だ。確認して、ガーネットと共にサインをしてくれ」
……ななじゅうさんまい?嘘でしょう!?
「せ、先生、いくら何でも、多すぎでは」
「いやいや、少ないくらいだ。鑑定のスキルは、使える者が少ない。だから普通、使用者登録は高額で、1つにつき金貨4〜5枚はする。だから、これでも少ない方だ。本来ならば、今回もそれくらい払うべきだが、学校の資金事情で済まないな」
と言われた。
「黄玉、諦めてちゃんと受け取れ。払った労力に対しての報酬だ」
とガーネットにも言われて、私は、先生から報酬の入った袋と書類を受け取った。
袋の中を確認し、ちゃんと金貨が73枚あることを、ガーネットと共に確認して、書類4枚も内容を2人で確認して、サインをした。
「よし。では、書類は私と学校と黄玉とガーネットでそれぞれ保管する。今日はこれで終了だ。気をつけて帰ってくれ」
と言われ、書類と袋をマジックバッグに仕舞って、職員室を後にした。




