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宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
アスター魔法学校 1年後期
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 9月。

 今日から、また学校が始まる。

 午後には、始業式が講堂で行われる。それまでに、学校の寮に行って、荷物の整理も終わらせなければならない。



 朝食を食べながら、翠玉が、

「僕、多分明日あたりから脱皮が始まると思うんだ。だから今日、学校に行く途中、森で2人とはわかれる」

 と言った。


 脱皮が1日〜2日後に近づいてくると、あとどのくらいで動けなくなるか、何となくわかるようになる。



「わかった。じゃあ、寮のガーネットの部屋についたら、空間魔法で扉を出して、繋げておくね」

 と私が言うと、ガーネットが、

「翠玉、本当に1人で大丈夫か?やっぱり、黄玉が傍に居た方が良いんじゃないか?」

 と心配そうに翠玉に尋ねた。

「大丈夫だよ。あの森は、王族以外は許可が無いと入れないんでしょ?この間、陛下に僕の脱皮についても話したし、入ってくる人なんて居ないよ。だから、そんなに心配しなくて良い」

「わかった。でも、毎日会いに行くから、何かあったらすぐに言ってくれ」

 翠玉は、ガーネットの言葉を聞いて、

「毎日じゃなくても良いんだけど」

 と苦笑していた。



 朝食を終えると、料理人が、

「本日の昼食にお召し上がり下さい」

 と言って、お弁当を渡してくれた。

 ありがたく受け取って、マジックバッグに仕舞った。


 ガーネットはすぐに制服に着替えて準備を終え、荷物を持って城の外に出た。



 今回も、メルとテオが城の前で私達を見送ってくれた。

「ガーネット殿下、黄玉様、翠玉様、お気をつけて」

「お3方とも、無理は駄目ですよ」

 そう言って、メルとテオは一礼した。

「ありがとう。おそらく来月の始め頃、黄玉と翠玉の衣装の調整のため、一旦戻ってくることになるだろう」

 ガーネットがメルとテオにそう返して、学校に向けて出発した。



 今回も、歩いて森の中を通り抜けて学校へ行く。

 荷物は、今回は私が持った。

 翠玉は途中でわかれるので、荷物を持つわけにはいかず、最初、ガーネットが、

「俺の荷物なんだから、俺が全部持って行く」

 と言っていたが、

「でも、主が荷物を持って、従魔が何も持っていない、というのもどうなの?」

 と私が言うと、渋々渡してくれた。



 森の真ん中にある、泉の前に着いた。

「僕はここに居ることにするよ。1か月離れるけど、無理はしないでね。特に姉さん!魔力の使い過ぎは駄目だからね!」

 と翠玉に言われた。

「……わかってるよ。学校では魔石を作ることは無いだろうし、そんなに魔力を使うことなんて無いと思うよ?……多分」

 と私が言うと、翠玉とガーネットは揃ってため息をついた。

「翠玉、俺がちゃんと黄玉のことは見ておくから、大丈夫だ」

「うん、よろしく」

 ……信用ないなぁ。まあ、自分でも、絶対無い、とは言えない。



 翠玉をその場に残して、私とガーネットは学校に向かった。

 学校の門が見えてくると、今回も学校の前の通りに馬車がたくさん並んでいた。

 私達は、その脇を通り抜けて、寮へ向かった。


 寮に入る前に、学校内を自由に移動する許可の証である、首飾りを身につけていることを確認した。

 つけていても気にならないので、夏休み中もずっとつけていた。


 特に問題無さそうだ、と私とガーネットで確認してから、寮の中に入った。

 入ってすぐ、正面にある受付の前に行くと、寮の管理人であるジョンが、部屋の鍵を渡してくれた。

「前期も思ったが、君達は寮に来るのが早いな。馬車はかなりの列だったと思うが?」


 生徒はたくさんいるのに、私達の事を覚えているんだ。

 そんな事を考えていると、ガーネットがジョンの質問に答えた。

「私達は、城から歩いて来ている。馬車の列には並んでいないんだ」

「そうか。それと、隣の従魔、前期のときにも思ったが、かなり強いな。前期のときより、此方に伝わってくる魔力が少なくなったが、魔力制御でも覚えたか?……ああ、別に詮索するつもりはない。ちょっと気になっただけだ。引き留めて悪かった。部屋は前期と同じ場所だ。場所はわかるか?」

 ガーネットは頷いて、私達は部屋へ向かった。



 歩きながら、

「さっきの管理人、何が言いたかったんだ?」

 とガーネットが首を傾げていた。

「よくわからない。でも、本人が言ったように、ちょっと気になっただけなんじゃないの?あんまり気にしなくて良いと思うけど」

 私がそう答えて、2人で首を傾げた。



 前期と同じ、3階右奥の突き当りの部屋へ行き、鍵を使って扉を開けた。

 部屋に入ってまず、持ってきたテーブルや椅子、寝具、食器、衣服などを、部屋の中に配置していった。


 配置が終わると、私は空間魔法を使って、「空間接続の扉」を出した。

 目の前に引き戸の取っ手が現れたので、まず取っ手を鑑定をして、「登録された使用者」の欄に私と翠玉、ガーネットの名前だけがある事を確認した。

 欄を見ながら、ルリタマだけで扉を使うことは、あまり考えられないけど、まあ、一応登録してあった方が良いかな、と思って、そこにルリタマの名前も追加しておいた。



 空間接続の扉の確認を終えたので、ちゃんと繋がっているかどうか確かめるために、扉を開けてみた。

 すると、目の前に森の中心にある泉が現れた。

 翠玉が、扉の前に来て、

「あれ、姉さん?もう寮の部屋に着いたんだ」

 と言って、扉を通って此方に来た。

「うん。部屋に着いて、家具とかも部屋に配置し終えたよ。だから、空間接続の扉も今のうちに繋げておこう、と思って」



 私は、翠玉とガーネットに、この空間接続の扉の使用者に、ルリタマも登録したことを伝えた。

「ルリタマまで使えるようにする必要、あるかな?まあ、良いけど」

「ルリタマだけでこの扉、開けられるのか?」

 ……確かに。

 ガーネットの言う通り、ルリタマだけでこの扉を開けられるのか、試したことは無かった。


 なので、ルリタマをマジックバッグから呼んで、

「ルリタマ、この扉、1人で開けられる?」

 と尋ねた。

「できるぞー!」

 と言うので、一旦扉を閉めた。


 ルリタマは、取っ手に両手を掛けて、羽をぱたぱたさせながら、横に引っ張った。

 すると、ちゃんとルリタマだけでも、扉を開けることができた。

「どうだー!ボクだって1人で開けられるぞー!」

 ルリタマは、開けた扉の前でふんぞり返っている。



「……ちゃんと開けられるんだ。てっきり、開けられなくて、自分で込めた力の反動で、部屋の端まで吹っ飛ばされると思ったのに」

「翠玉、それは流石に酷くないか?……まあ、俺も開けられないだろう、とは思ったが」

 翠玉とガーネットがそう言うと、

「何を言うー!ボクだって、ボクだってこれくらいちゃんと開けられるぞー!……大変だったけど」

 とルリタマは怒っている。



 やっぱり、扉を開けるのは大変だったんだ。

 もう少し、扉を軽く開けられないかな?と思って、私は一旦扉を消して、もう少し軽く開けられるよう、念じながらもう一度扉を出した。


「ルリタマ、もう一度この扉を開けてみてくれる?」

 私がそう言うと、ルリタマは、

「あるじ、何か変えたのかー?まあ、開けてみればわかるかー」

 と言って、両手で取っ手に手を掛け、扉を横に引っ張った。


 すると、今度はさっきより短時間で開けることができた。

「おー!さっきより軽い!これなら楽に開けられる!」

 ルリタマは、嬉しそうに開けたり閉めたりしている。



「黄玉、何をしたんだ?」

 ガーネットにそう尋ねられたので、

「ルリタマが苦労せず開けられるようにするために、扉を軽くしたい、と念じながら扉を出し直したの。ちゃんと軽くなったみたいで良かった」

 と言った。

 隣で聞いていた翠玉が、

「姉さん、ルリタマを甘やかし過ぎじゃない?」

 と訊いてきたので、

「軽くしようと重くしようと、使うのはここに居る私達だけなんだから、皆が苦労せずに開けられる方が良いでしょう?」

 と言うと、

「まあ、良いか」

 と苦笑していた。

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