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それから私と翠玉は、競い合うように、知識と力をつけていった。
そして、翠玉が人間に擬態できたこの年に、私は成体になった。
成体になったときに、体の大きさも大きくなった。人間に擬態したときの姿も、成体になった途端、人間の大人と同じ姿になった。といっても、身長が160センチくらいに伸びて、体型が女性らしくなっただけで、髪型や顔の形、髪や瞳の色などは変わらない。
ステータスはこんな感じ。
ステータス
名前:黄玉
種族:宝石竜(成体)
Lv 1(/100)
体力 1050/1050
魔力 820/820
攻撃 C
防御 B
魔攻 A
魔防 C
素早さ D
知力 B
運 S
称号
転生者、両親の宝物、空想癖、魔法の探求者、翠玉の宝物
スキル
鑑定、言語理解、念話、擬態、飛翔、火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、光魔法、闇魔法、発展魔法
成体になると、レベルの上限まで成長すると脱皮をして、レベルが1に戻るらしい。レベルが戻っても、ステータスの値は戻らない。
脱皮をするときは、しばらく動けなくなるみたいだから、レベルはそれが何時になるかを測る目安と考えると良いのかな。
体力や魔力、攻撃といったステータスも、最初と比べると随分と上がった。私は、魔法の方が得意というか、興味があるから、そっちの方がステータスの伸びが良い。
さて、次は称号の詳細を見てみよう。
魔法の探求者
魔法に強く興味を持ち、様々な魔法を学び、魔法に関する書物を読み散らしたことから探求者の称号が変化した。この称号と空想癖の称号があると、魔法を使った結果のイメージさえできれば、属性に関係なく全ての魔法が使える。
翠玉の宝物
翠玉から、宝物として想われているため、この称号が与えられた。
おお!魔法の探求者と空想癖って、すごい称号だったんだ!イメージできればどの属性でも使えるって、とっても嬉しい。
でも、うっかり魔力をたくさん使う魔法をイメージすると、魔力を使い切って動けなくなるから、これから更に気をつけないと…。魔力を使い切ると、目眩が酷くて気持ち悪くなるからな…。
それにしても、称号の説明の「読み散らす」って…。そんなに何でもかんでも読んだかな……、読んだか。町の図書館の本、全部制覇しようと思って読んでたからな〜。ちなみに町の図書館はそれなりに大きくて、数万冊はあった。
「翠玉の宝物」って、翠玉にとって私が宝物ってことだよね。…嬉しい!
でも、命懸けで守られるのはちょっと…。と思うから、嬉しいけど複雑。
翠玉の称号にも、「黄玉の宝物」ってあるのかな?あったら良いな。
さて、次はスキル。
闇魔法
闇に関する魔法。影を操ったり、他人の視界を奪ったりできる。
発展魔法
基礎魔法から発展した魔法、その全てを扱うためのスキル。このスキルは、空想癖と魔法の探求者、2つの称号を持つ者にしか発現しない。
闇魔法は、なかなか大変だった。影を操るとかどうやるの〜!とか、いろいろ悩みながら練習した。
発展魔法は、探求者の称号が魔法の探求者に変わったとたん、いろいろ使えるようになった。これにより特に良かったのは、暑い夏に氷を作れるようになったこと。
元々、宝石の鉱床となっている火山を住処としていたことから、人間よりはかなり暑さに耐性がある。でも、人間に擬態していると、暑さへの耐性は人間と同じになる。だから、氷魔法が使えるのは助かった。特に翠玉は、人間に擬態しているときは暑さに弱いみたいで、私が氷魔法を使えるようになって一番喜んでいた。
ちなみに、寒さには、竜の姿のときより人間に擬態しているときの方が耐性がある。宝石竜に限らず竜という種族は、火山を住処とすることが多いため、寒さに弱いらしい。ただし、お母さんによると、例外もいるそうだ。
成体になったからといって、私の生活が変化することは無かった。成体になっても宝石竜は家族で生活するし、巣立ちというものは無い。
でも、1つだけ変わったことがある。翠玉が今までより訓練の時間を増やしたことだ。私が成体になったことで、自分も早く成体になりたい、と思うようになったらしい。無理はしないよう、お母さんが諌めている。
私は、翠玉の対抗心を煽らないよう、あまり魔物と戦いには行かなくなった。でも、それが余裕があるように見えたのか、翠玉は苛立つことが多くなった。
しばらく、話しかけてもあまり言葉を返してくれない日が続いた。寂しいし悲しいが、成長には必要な過程なのだろう、と何も言わずにいることにした。
お母さんは、そんな私に特に何か言うこともなく、姉弟を見守ることにしたようだ。
それから4年後、翠玉も成体となった。生まれてから、成体になるまでに掛かった時間は、私が約3年半で、翠玉は約5年。お母さんによると、私も翠玉も、成体になるまでがとても早かったらしい。普通、10年は掛かるそうだ。
成体になって落ち着いたのか、翠玉は前と同じように、私と色々な話をしてくれるようになった。でも……。
「どうしたの?姉さん」
そう、成体になったとたん、「お姉ちゃん」ではなく「姉さん」と私を呼ぶようになった。
更に、人間に擬態した姿も、整った顔立ちと、肩までの長さのストレートヘアや髪の色は変わらないが、背が180センチくらいになり、細身ではあるが、筋肉がついた。
あんなに……、あんなに可愛かった翠玉が、可愛いいよりもかっこいいが似合うようになってしまった………。そう、嘆いていたら、
「ようやく姉さんにかっこいいって言って貰えた。前も言ったよね、可愛いよりもかっこいいの方が嬉しいって」
と嬉しそうに言われてしまった。翠玉が嬉しそうにしているからいいか。でもでも、可愛いかった翠玉が〜〜。まあ、翠玉が無事に成体になったのは嬉しい。
なので、翠玉が成体になったことに対して、
「翠玉、おめでとう!」
と言うと一瞬、きょとんとしてから
「ありがとう!」
とにっこり笑ってくれた。かっこいいという言葉が似合うようになったけど、やっぱり私にとって翠玉が、可愛い弟であることに変わりはない。
翠玉が成体になったので、私と翠玉の2人で町の冒険者ギルドに行くことにした。私と翠玉が冒険者として登録するためだ。お母さんは一緒には行かず、住処で待っている。
と、その前にマジックバッグを作ることにした。マジックバッグとは、中が4次元になっているバッグのこと。鑑定の説明はこんな感じ。
マジックバッグ
中が4次元になっているバッグ。大きさや重さに関係なく入れることができるが、生きたものは入れられない。入れたものの重さはバッグの重さに反映されない。バッグの中では、時間が経過しないため、入れたときの状態が維持される。入る量は作った者の技量による。
マジックバッグは、普通のバッグに空間魔法で空間を付与することで作ることができる。空間魔法についても鑑定すると、説明が次のように出た。
空間魔法
土と風、光、闇を組み合わせた発展魔法で、空間に関係する魔法。ワープをしたり、マジックバッグを作ったりできる。
これは発展魔法なので、私は使うことができる。ということで早速、買っておいた普通のバッグに空間魔法で空間を付与していく。
私の分と翠玉の分ということで、2つ作った。作っておいてなんだけど、私にもどういう仕組みでできているのか良くわからない。大きさや重さに関係なく何でも入るバッグになれ〜、と念じながら魔法を込めたら、できてしまった。
兎にも角にも、マジックバッグはできたことだし、今までに採った薬草やら狩った魔物やらを入るだけ入れて、冒険者ギルドへ行こう!
ちなみに、今までに採った薬草や狩った魔物は、全て1つのバッグに入った。嵩としては風呂桶3杯分ぐらいだったんだけど…。