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宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
夏の長期休暇
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 話が途切れた所で、メルとテオが夕食を運んできた。

 …そういえば、お昼ご飯を食べていなかったんだ。流石にお腹がすいた。


「今日、森で鑑定をするのに熱中して、お昼を食べ忘れたんだよね。食べなかったお昼ご飯、どうしよう?」

 と、私が言うと、また翠玉とガーネットがため息をついた。そして、2人で何か相談し始めた。


「…やっぱり、姉さんは1人にしない方が良いな」

「俺もそう思う。…なあ翠玉。今日でもう学びたい事は学び終えたのか?」

「うん、大体終わった。…来週からは、僕達も姉さんと一緒に森に行く?」

「ああ、俺もそう提案しようと思ったんだ。そうしよう」


 翠玉とガーネットは此方を振り向き、

「来週からは、僕達も姉さんと一緒に行くから。ここの騎士達から学びたいことは、学び終えたし」

 と翠玉が言った。

「え〜、でも森に行っても私は、ひたすら魔法やスキルを試しているだけだから、多分退屈だよ?」

 そう言ったが、

「俺達の事は気にしなくて良い。俺も剣術は、学びたい事は学び終えているし。それに、黄玉の魔法を見るのは、俺達にとっても良い勉強になる。だから、一緒に行かせてくれ」

 とガーネットに言われた。


 その後も、少し言い合ったが、結局私が折れて、来週からは一緒に森に行く事になった。


 用意された夕食を食べ、食べ忘れたお昼ご飯は、マジックバッグに入れて置いて、別の日に食べることにした。



 夕食後、翠玉とガーネットのマジックバッグにも、使用者登録をしておいた。

 明日は何をしよう、と考えていると、ガーネットが、

「黄玉、翠玉、明日は、一緒に会って欲しい方が居るんだ」

 と言った。

「構わないけど、誰に?」

 と私が尋ねると、

「…俺の母上だ。今は、療養している。この間、父上と話したときに、母上の容態が今は安定している、と聞いたんだ。そのとき父上に、黄玉と翠玉と共に、母上に会いに行って良いかを尋ねた。そうしたら、ぜひ会いに行って欲しい、と言われたんだ。だから、一緒に来て欲しい」

 とガーネットに頼まれた。


 ガーネットは週に一度、1人で国王陛下に会いに行っている。

 この面会のときは、私も翠玉も、親子水入らずの時間を邪魔しない方が良い、と考えて、部屋で待っていることにしている。

 おそらくそのときに、お母さんに会いに行く許可を取ったんだろう。


 私も翠玉も、ガーネットのお母さんに会ってみたかったので、良いよ、と言うと、ガーネットは嬉しそうに、

「ありがとう!母上に会うのは、俺も久しぶりだし、その上俺の一番の友達を紹介できるなんて、嬉しいよ」

 と言った。

 私達は、明日に備えて、早めにベッドに入って眠った。



 夏の長期休暇17日目、光の日。

 今日は、ガーネットのお母さん、つまりこの国の王妃殿下に会いに行く。

 朝食を食べてから、城の中を移動した。

 今まで来たことのない、城の東側の方へ来た。


 この城は、南向きに建っている。

 東西に長く、尖塔がいくつもそびえ立っている。

 城の南東には、いつも行っている、森がある。

 ガーネットによると、森があるせいか、城の東側はいつも静かで、穏やかな雰囲気があるそうだ。この雰囲気が好きで、昔はよく、本を持ってきて、日がな一日、この辺りで本を読んでいたらしい。



 しばらく歩いて、扉前でガーネットが立ち止まった。

「ここが、母上のおられる部屋だ。2人は別に、畏まる必要も無いし、部屋の中でもいつも通りで良い。……なあ、母上に尋ねられたら、2人が宝石竜だって、言っても良いか?」

 私も翠玉も良いよ、というと、

「わかった、ありがとう。…さて、部屋に入ろうか」

 と言って、扉をノックした。

 部屋の中からの返事を待って、ガーネットが扉を開けた。



 部屋の中には、レースのカーテンが掛かった窓から、柔らかな光が差し込んでいた。

 白を基調とした家具で揃えられ、全体的に優しい雰囲気があり、穏やかな空気が流れていた。


 部屋の真ん中にある円卓に、ドレスを身に纏った美しい女性が1人、席についていた。女性は、ガーネットと同じく、黒い髪と赤い瞳だった。おそらく、この女性がガーネットの母なのだろう。

 女性の後ろには、側仕えの女性が1人、控えていた。



 私達が部屋に入ると、座っている女性が、

「久しぶりね、ガーネット。会いに来てくれて嬉しいわ」

 と、ガーネットに話し掛けられた。

「お久しぶりです、母上」

 とガーネットは挨拶を返し、テーブルについた。

 私達も、ガーネットと共に、テーブルについた。


 すると、王妃殿下は、

「黄玉様、翠玉様、お目にかかれて光栄です。私は、ガーネットの母、パイロープ・アステシラーです。お2人の事は、陛下より聞き及んでおります。息子を助け、守って下さっていると」

 と述べられた。王妃殿下の言葉を聞いて私は、

「此方こそ、いつもガーネットには助けられていますし、様々な事を教えて貰っています。私にとって、素晴らしい主です」

 と答え、翠玉も、

「ガーネットは、いつも僕達の事を考えてくれる。僕にとっても、素晴らしい主だ」

 と答えた。

 王妃殿下は私達の答えを聞いて、

「とてもありがたいお言葉、嬉しく思います」

 と述べられた。


 私達の話が一段落すると、王妃殿下はガーネットと話し始めた。

 ガーネットの通う学校の事、夏休みに入ってからの生活の事、色々な話をしていた。

 ガーネットも王妃殿下も、終始楽しそうで、私もその様子を隣で見ていて、楽しかった。



 ガーネットと王妃殿下の会話を隣で楽しんでいたら、あっという間にお昼になった。

「よろしければ、昼食もご一緒にいかがですか?」

 と、王妃殿下に尋ねられた。

 提案は嬉しかったが、療養中である殿下の体調が心配だった。

 ガーネットも同じように思ったようで、

「母上、どうか我々の事はお気になさらず、お休み下さい。今は体調が優れているとはいえ、疲れてしまっては、あまりお体に良くありません」

 と言った。

「…ありがとう、ガーネット。優しい息子に育ってくれて、私は今とても嬉しいわ。私は大丈夫よ。食事は皆で食べた方がおいしいもの。これから、陛下もこの部屋に来て下さるの。たまには、家族揃って食事がしたいわ。どうか、黄玉様と翠玉様もご一緒に」

 殿下にそう仰られたら、断る訳にはいかない。なので、お昼は王妃殿下とともに頂くこととなった。



 少し待つと、国王陛下もお出でになった。

 陛下が、王妃殿下の隣の席についたところで、食事が運ばれてきた。


 料理は、食べる前に全て、テーブルに並べられる。一皿ずつ運ばれてくるわけではない。


 綺麗にセッティングされた所で、食べ始めようとしたが、何となく、出された料理が気になった。なので、全員分の食事を鑑定した。

 鑑定の練度が上がったせいか、複数の対象を一度に鑑定できるようになった。

 鑑定の結果、スープやメイン料理、パンに問題は無かった。が、サラダの鑑定結果が、「毒」となっていた。



サラダ 効果:毒

 根菜と葉物野菜を使ったサラダ。

 野菜自体は新鮮でとても美味しい。が、使われている調味酢に毒が入っている。食べるな危険!

 この毒を取り込んだ場合、しばらく全身に痺れの症状が出る。運が悪ければ、死に至る。



 何を知りたいかを思い浮かべながら「鑑定」を使うと、知りたい情報だけが出てくるようになった。

 今回は、毒が入っているかどうかだけが知りたかったので、サラダ自体の説明は少ない。


 鑑定結果を見て、慌てて、

「料理に手を付けないで下さい!」

 と叫んだ。

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