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宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
黄玉と翠玉
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 まず、そもそも宝石竜とは、どのような生き物なのかを学ぶことにした。

 この世界には、宝石の鉱床となっている火山がいくつかある。

 宝石竜は元々、そうした火山の宝石が露出しているところを住処とし、そこで卵を産む。そのため、卵の見た目は宝石に紛れるように、カラフルで透明な殻になっている。

 しかし、この卵の見た目は、森や洞窟に隠れ住むようになった今、人間に発見されやすく、生存率を下げる要因になっている。この、宝石竜が森や洞窟に隠れ住むようになった原因には、人間が深く関わっている。


 数百年前、人間は宝石竜が住処としていた宝石の鉱山に、足を踏み入れるようになった。

 それまで人間は、国の中や外で戦争を繰り返し、宝飾品に目を向ける余裕が無かった。

 しかし、戦争が終わると国の王侯将相は権威を示そうと、宝石を求めるようになる。戦争が起こる前は、宝石が富や権力の象徴となっていたからである。

 人間が、宝石竜の住んでいた鉱床を発見して宝石を採掘し、宝石竜も捕獲するようになった。

 このままでは人間に狩り尽くされてしまう、と考えた宝石竜たちは、擬態のスキルを身につけ、森や洞窟の深くに隠れ住むようになった。しかし、擬態のスキルを身につけるまでには時間が掛かり、全員が身につけられたわけではなかった。

 そうこうしている間にも、人間は宝石竜を狩り続け、現在では絶滅寸前といえるほど、数が減っている。保護しようとしている国も存在するが、その他の国や冒険者たちが積極的に狩っている。また、保護しようとしている国でも、貴族が冒険者たちを雇って狩る、という事件が起こるなど、中々保護は進まない。


 こうした、宝石竜についての知識を学んだ後は、まず擬態のスキルを自由自在に使えるようになることを目指した。

 スキルは持っていても、使い方が分からなければ意味が無い。でも、前世が人間だったおかげか、人間への擬態は5日くらいでできるようになった。

 人間に擬態できるようになると、お母さんは人間の町に連れて行ってくれた。その町の図書館で本を読んだり、お母さんに分からないことを何でも訊いたりして、どんどん知識を増やした。

 訓練の方も、お母さんから教わって使える魔法を増やしたり、魔物と戦ったりして力をつけた。

 この世界の魔法は、基礎魔法と、基礎魔法から発展した発展魔法がある。

 基礎魔法は、火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、光魔法、闇魔法の6種類。この6種類をそれぞれ発展させたり、組み合わせたりしたものが発展魔法。

 発展魔法で現在知られているものには、雷魔法、氷魔法、植物魔法、空間魔法などがある。

 私はまず、基本の6種類を使えるようにしようと頑張った。


 半年後、久しぶりにステータスをみてみよう、と思って、『ステータス』と念じてみた。


ステータス

名前:黄玉

種族:宝石竜(幼体)

Lv 13(/50)

体力 250/250

魔力 150/150

攻撃  E

防御  D

魔攻  C

魔防  D

素早さ F

知力  C

運   S


称号

転生者、両親の宝物、空想癖、探求者


スキル

鑑定、言語理解、念話、擬態、飛翔、火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、光魔法


 レベルや能力が上がってる!それに新たな称号やスキルが増えてる!新しい称号とスキルの詳細を1つずつ見てみよう。


探求者

様々なものに興味を持ち、貪欲に知識を得ようとする者に与えられる称号。


空想癖

現実には存在しない様々なものを空想し、空想することが日常になっている者に与えられる称号。この称号があると、魔法を使った結果を想像しやすくなる。


飛翔

空を飛ぶためのスキル。このスキルが無いと、たとえ空を飛べる種族であっても、上手く飛ぶことができない。


火魔法

火に関する魔法。日常生活で火をおこしたり、攻撃に使ったりできる。


水魔法

水に関する魔法。この魔法で生み出した水は飲用可能。


土魔法

土に関する魔法。土で壁を作ったり、土を耕したりできる。


風魔法

風に関する魔法。飛翔のスキルを補助するために使われることもある。


光魔法

光や治癒に関する魔法。暗い場所で明かりを灯したり、怪我や病を治したりできる。


 探求者は、図書館でいろんな本を読んで、お母さんに気になったものを何でも訊いたからかな。

 魔法は、お母さんから教わって使えるようになった。魔法を使うには、使った結果、どうなるかをはっきりとイメージすることが一番大切なんだって。イメージ次第で色々な使い方ができる。

 例えば、光魔法で怪我を治すとき、治った状態をはっきりと思い浮かべながら使うと治せる。でも、イメージが確定していないと、何も起こらない。だから、結果をイメージしやすくなる、という効果のある空想癖という称号は、ちょっと嬉しい。

 飛翔のスキルは、お母さんと飛ぶ練習をして得た。最初は飛んでもフラフラとしていたけど、だんだん安定して飛べるようになった。飛べる種族でも、しっかり練習してスキルを得ないと、中々上手く飛べないんだな。

 訓練を始めて半年くらいでここまで成長できたけど、これが早いのか遅いのかは分からない。でも、確実に知識も力も増えてる。この調子でまだまだ頑張らないと!


 昼間は森の中で魔物と戦って力と経験を得たり、人間に擬態して町の中を歩きまわったり、図書館で本を読んで知識と経験を得る。夜はお母さんと一緒に話をしたり、魔法を教わったりして新たな知識と魔法を得る。こうした生活を続けて、2年が経った。



 ある日の朝、起きて、今日は町に行こうかな?それとも森の中に行ってみようかな?と悩んでいると、住処にしている洞窟の奥からピシッ、と音が聴こえた。


 そちらに行ってみるとお母さんが居た。

『お母さん、今の音は?』

『この卵にヒビが入った音よ。もうすぐ孵るの。一緒に見守りましょう』

 お母さんと並んで座って、卵が孵るのを待った。

 卵は、あちこちにヒビが入っていたけど、完全に殻が割れるまでにはしばらく掛かりそう。

 私が孵ったときは、卵の殻にヒビが入ったと思ったら、すぐ上から下まで真っ二つに割れたんだったな〜。


 自分が卵から孵ったときのことを考えていたら、その間にヒビが大きくなり始めた。なんとなく応援したくなって、

『頑張れ〜、もうちょっとで出てこられるよ!』

 なんて声をかけていたら、お母さんが微笑ましそうにこっちを見ていた。

『会えるのが楽しみ?』

『もちろん!一緒に勉強したり、遊んだりできたら嬉しいな〜』


 そんな話をしていると、急に卵のヒビが大きくなって、遂に殻が割れた。

 ドキドキしながら待っていると、殻の中から緑色の竜が出てきた。

『お母さん、孵ったよ!』

『えぇ、…良かったわ、無事に生まれてきて』

 お母さんは、子に顔を寄せて、

『生まれてきてくれてありがとう。あなたは…男の子ね。…顔や体が綺麗な緑ね…。あなたの名前は翠玉(すいぎょく)よ。これから、よろしくね』

 卵から孵った竜は、顔、体、爪が緑で、瞳や手、足、尻尾が黄色だった。色の間はグラデーションになっている。そして、角は透明だった。

 私も、翠玉に話しかけてみた。

『翠玉、私はあなたのお姉ちゃんよ。黄玉っていうの。これからよろしくね』

 翠玉は、しばらくキュウ、キュウ、と鳴いていたが、眠ってしまった。私は、気になったことを訊いてみた。

『お母さん、翠玉って名前には、どんな意味が込められているの?』

『翠玉も、あなたの名前と同じように石の名前なの。この石は、人間にとって叡智や生命の象徴なの。様々なことを学んでこの世界を好きになって、健康に長生きしてほしい、と願って付けたのよ』


 少し気になったことを聞いてみた。

『お母さん、仲間を殺した人間が生み出した言葉とか、物の意味を使うのは嫌じゃないの?』

『確かに、人間は仲間を殺し、私達を絶滅に追い込もうとしている。だから人間が憎いとも思う。でも、だからといって人間の全てを憎むのは、何か違うと思うの。今まで見てきた中で人間は、人間同士でも争い、勝った方は負けた方から何もかも奪い、気に入らないものは破壊してきた。それにより失われた文化や技術も多い。だから今、人間の文化や技術は、同じところを行ったり来たりしているように思うの。憎んで破壊するばかりでは、何も進まない。むしろ、破壊すればするほど、破壊する側も傷つき、衰退していく。人間を見ていてそう思ったから、私も憎むばかりではなく、たとえ憎い相手でも良い所は自分に取り入れよう、と考えられるようになったの。あなたも、広い心と視野で物事を見れるようになってほしいわ』


 …お母さんの話は、考えさせられることが多くて言葉が出なかった。そして、仲間を殺されたからといって、人間の全てを憎んではいけない、という考え方は、見習わなければいけないなと思う。

 元々、私は人間だったせいか、今のところ人間に対してあまり悪い感情は持っていない。

 でも、もしお母さんや、翠玉を人間に傷つけられたら、どうなるかはわからない。だから、この話はしっかり覚えておかないといけない、と思った。

 お母さんといろんな話をしていたら、暗くなってきてしまった。この日は、森でとれた果物と、狩った魔物の肉を夕飯に食べて眠った。

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