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宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
黄玉と翠玉
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 気がつくと、透明でカラフルな球体の中に居た。


 あれ?昨日はベッドに入って寝たはずなのに…これは夢?


 そう思って頬を抓ってみようとしたが、手が人間のものではなかった。

 指は5本あるが、鱗のようなものがあり、手の大きさに対して爪も大きい。

 そして、手の色もおかしい。ガラスや宝石のように、透明な水色をしていた。爪の部分は同じように透明な黄色になっている。


 私…人間だったよね?それともやっぱり夢?明日も学校があるから早く寝よう、って昨日寝たはずなのに…。

 あれ?でも私、なんて名前だったっけ。………。名字も名前も思い出せない…。

 そういえば、手がこんなヘンテコなものになっているなら、体はどうなっているんだろう。


 見回そうとした瞬間、まわりを覆っていた球体にヒビが入り始めた。ピシッ、パチパチ、とガラスが割れるような音がして、パキンッと上から下まで一直線に割れた。


 球体が割れると、目の前に大きな竜がいた。体と翼は黄色で、顔や手足、尾は紫、黄色と紫の間はグラデーションになっている。

 『ようやく孵ったのね。無事に生まれてきてくれて嬉しいわ、私のかわいい娘』

 急に頭の中に声が響いた。

 何となく、目の前の竜が話したのかな、と思った。


 伝えたいことを念じれば伝わるかな、と思って念じてみた。

『あなたが私のお母さんなの?』

 すると、目の前の竜は目を大きく開いて、

『まあ!もう既に言葉がわかるのね。そうよ、私があなたの母。生まれて来てくれてありがとう。それにしても、体の色といい、あなたは特別な子なのかも知れないわね』

『体の色?何かおかしいの?』

『いいえ、おかしくないわ。私達の種族、宝石竜は普通、体の色が2〜3色なの。でも、あなたは5つの色を持っている。珍しいというだけで、何かおかしいということではないわ。だから不安になることなんてないのよ』


 目の前にいる竜は本当に母親だったようだ。そして、伝えたいことを念じれば伝わり、会話もできることがわかった。そして、どうやら私は珍しいらしい。


『お母さん、私に名前はあるの?』

『それを最初に教えるべきだったわね、ごめんなさい。あなたは黄玉(おうぎょく)よ。美しい黄色の瞳だから。そして、黄玉は石の名前なのだけど、人間には憂いを払い希望をもたらす、と信じられているの。だから、まわりに希望をもたらすような存在になってほしい、と思ってこの名前にしたのよ』

 さあ、今日はもう寝ましょう、と言われて寝ることにした。


 翌朝、起きると1人だった。

 お母さんは、側にいないようだった。今のうちに、自分の状況を整理しておこう。


 まず、私は人間ではなく、宝石竜という竜になっているらしい。そして、体の色が珍しいようだ。…自分じゃ全身は見えないから、よくわからないけど。

 昨日のお母さんの話から、人間が居ることもわかった。

 小説とかだとステータスが見れたりするけど、見れないかな〜?と思いながら、ステータスと念じていると、


ステータス

名前:黄玉

種族:宝石竜(幼体)

Lv 1(/50)

体力 50/50

魔力 30/30

攻撃  G

防御  D

魔攻  E

魔防  E

素早さ G

知力  C

運   S


称号

転生者、両親の宝物


スキル

鑑定、言語理解、念話、擬態


 見れた…。念じると、見れるんだ…。詳しく見てみよう。まず、種族から。


宝石竜

宝石竜という名の通り、見た目は宝石のよう。凡そ1000年くらいの寿命を持つ。しかし、この竜は死んでもその美しさが失われないため、人間の権力者たちが我先にと狩り、宝飾品に使われている。そのため、人間の王侯将相に乱獲され、近年は絶滅の危機にある。現在では寿命まで生きることができる竜は稀。


(幼体)

まだ生まれたばかりの幼体である証。ステータスも低く弱いが、宝石竜であるため鱗が硬く、防御力は高い。


Lv 1(/50)

この個体のレベル。()の数字が上限のレベル。レベルは魔物を倒したり、物を食べたり、知識を得たりすることで経験値を得て上がっていく。上限に達すると、(幼体)が消え、成体となる。この世界ではレベルが上がっても、上限に達しても、別の種族に進化することは無い。生まれたときの種族で一生を過ごす。


 身分の高い人には宝飾品として人気があるんだな…。って、そんな人気はいらない。

 幼体でも防御力が高いのは良かった。転んだり、何かにぶつかったりしても、ダメージが少なくて済みそう。元々、運動が苦手で鈍臭いからなぁ…。


 そして、レベルの説明。これ、転生者向け?進化の話とか、前の世界の物語みたいに別の種族には進化しませんよ、って書いてあるの、転生者じゃないと気にしないと思うけど…。まあ、わかりやすいからいいか。

 次は、なんとなく気になる称号を見てみよう。


転生者

別の人生を生きて、死亡し、その記憶を持って転生した者に与えられる称号。これがあると、経験値が倍になり、鑑定が使える。また、この世界の言葉が全て理解でき、話せるようになる。


両親の宝物

宝石竜は、自ら宝と定めたものを命懸けで守護する。両親から、宝物として想われているため、この称号が与えられた。


 転生者の説明…これを見ると、私は一回死んだことがわかる。何で死んだのかな…。考えても思い出せないし、思い出せてもあまり意味ないし、考えないようにしよう。

 両親の宝物は、お父さんとお母さんに、大切に想われているってことかな。命懸けで守護するって、前世で西洋の、ドラゴンの伝説にあったような…。それと同じなのかな。

 次はスキル。


鑑定

鑑定したい対象を意識して鑑定と念じる、あるいは唱えると、対象の情報がわかる。生物であればステータスや種族の特徴、物ならば性質や特徴などを見ることができる。


言語理解

学んだことのない言語であっても、理解し、話したり書いたりすることができる。人間ではない宝石竜がこのスキルを所有しているため、人間の言語も魔物の言語もこのスキルにより理解・使用ができる。


念話(母親からの遺伝)

母親から受け継いだスキル。伝えたい内容と伝える相手を強く意識することで、声に出さずとも会話ができる。これは、種族、言語に関係なく、伝えたい相手に伝えたい言葉を伝えることができる。念話を聴くことは誰でもできるが、念話で伝えるにはこのスキルが必要となる。


擬態(父親からの遺伝)

父親から受け継いだスキル。他の魔物や動物、人間そっくりに変身する能力。


 さっき、あまり疑問を持たずに種族や称号とかを詳しく見てたけど、この鑑定のスキルがあったから、詳しく見れたのかな。

 言語理解は便利。前の世界で英語は成績が地の底を這っていたからな……。勉強しなくても理解できる上に、話すことも書くこともできるなんて。前の世界でこのスキルがあったらよかったのに…。

 念話は(母親からの遺伝)、擬態は(父親からの遺伝)って出てる。スキルって遺伝するものなんだ。念話により、話さずとも伝わるのは便利なのかな?今の所声を出してもキュイ、キュイ、と鳴き声になるだけで、喋れそうもない。擬態は…どうやるんだろう?


 さて、スキルの確認はこんなもんかな。ステータスの体力やら魔力やらの確認もしておかないと。体力と魔力は…少ないかな。

 アルファベットは何なのか鑑定してみると、これはステータスの高さを表しているようだ。

 Sが1番高くて、その下にABCDEFと続き、Gが1番低いらしい。

 私のステータスは、全体的に低いけど、知力はそこそこ、運はとても良いみたいだ。知力は前の世界の知識や経験があるからかな。


 さて、だいたいステータスの確認は終わった。

 …別の世界で人間として生きて死んで、この世界に転生してきた転生者であることを、お母さんに話すべきかな、それとも話さない方が良いかな…。お母さんが帰ってきてから、話すかどうかを決めよう。


 自分について、確認と整理は終わった。…まだお母さんは帰ってこないな。

 そういえば、今居る場所の確認は何もしていなかったな。改めて周りを見ると、ここは洞窟の中だ。暗いから正確な広さはわからないけど、そこそこ広い。


 少し奥に行ってみると、自分と同じくらいの大きさの透明でカラフルな球体があった。中に、緑色の竜が居るのが見える。でも、中の竜は私の半分くらいの大きさに見える。

 そういえば、似たようなものを最近見たような…。

 そうだ!昨日、私はこの中から孵ったんだ。つまりこれは、宝石竜の卵?

 …考えてみたら、鑑定のスキルがあるんだから、それを使えば良かったんだ。では早速、『鑑定』


卵(宝石竜)

宝石竜の卵。卵の殻はとても硬く、孵化するときが来るまで、どんな衝撃が加えられてもヒビすら入らない。宝石竜は卵から孵るまでに、基本的には2〜3年、長ければ5年くらい掛かる。


 鑑定のおかげで、宝石竜の卵と確定した。でも、孵るまでに最低でも2年かあ。この卵はあとどのくらいで孵化するんだろう。早く孵るといいな。

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