晴天の雨
僕は学校からの帰り道、うんと遠回りして散歩して帰ることことにした。なぜならば信じられないくらいの快晴だからだ。散歩せずにはいられない。
具体的には学校近くのコンビニに寄り、河原の土手を通り、商店街を散策し帰宅するコース。
コンビニを経由し、河原の土手を気分よく歩いていると、ポツポツと水滴が僕の額にあたる。
雨?雲一つない空なのに?
晴天の雨である。なぜか雨が降っている。太陽の光で虹も出ている。小降りの雨なので、濡れることはあまり気にならない。むしろ、幻想的で、これはこれで良い天気だ。
僕は変わらず気分良くズンズンと散歩をしていく。しかし、雨はドンドンと降る。小雨だったのに、あっという間に大雨となった。
僕は傘を持っていなかった。ちょうど河原の土手を超え、商店街まできた僕は、導かれるように、雨に当たらない商店街のアーケードに避難する。避難した頃には、雨は、ますます強くなっていた。そして、雨は弱まることなく悪魔的な強さになっていく、まさに豪雨である。
バケツをひっくり返したような雨という言葉があるけれども、この雨は海がひっくり返ったかのようだ。僕は商店街のアーケードの中にいて、直接には雨に濡れないのだけれど、雨の水しぶきが風に吹かれ、僕がいるアーケードの中も霧雨のようになっている。
こんなに雨が降るのはいつ以来か。僕は考えたのだけれども、思い出せない。きっと初めての経験だし、伝説のノアの洪水のような豪雨だ。そして、なぜか雲はない、晴天の雨である。こんな摩訶不思議なことがあるのかと思うものの、事実目の前であるのだから世の中は何が起こるかわからないものだ。