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僕(1)

 目を開いたら大惨事だった。

 大通りの交差点。バスは横転し、それに連なるように後続車や周りを巻き込んで大量の車達がひしゃげている。

 血を流し倒れている人達。悲鳴や怒号。目を背けたくなる景色の中、僕の視線は一点にくぎ付けになる。


「さとみ……?」


 少し離れた先。事故を起こした車達の傍で、彼女は崩れ落ち泣き叫んでいる。


「さとみ! さとみー!」


 僕は駆け出した。こんな所でじっとしていたら危ない。怪我だってきっとしているだろう。何が起こったかなんて全く分からないがそんな事はどうでもいい。僕はさとみの元に駆け寄る。徐々に彼女との距離が近づく。しかし、それと共に僕のスピードも緩んでいった。

 さとみは叫んでいた。ずっと同じ言葉を叫び続けていた。


「けいた! けいた!」


 さとみの傍に倒れている男がいた。頭から血を流し倒れているその姿は、一目見ただけでも絶望的だと言わざるを得ない状態だった。


「けいた! ねえけいた! ヤダ! 死んじゃヤダよ!」


 言いながら彼女は彼を揺さぶる。しかし彼が一向に目を覚ます気配はない。


「……さとみ」


 僕は彼女に呼びかける。


「ねえ、さとみ」


 もう一度。


「さとみ!」


 大きな声で。


 ――どうして?


 どうして、彼女は振り返らない。

 何度も何度も叫んだ。彼女の名前を。

 でも、彼女はやはり振り返らなかった。


「なあ、さとみ」


 交差点の大事故。

 僕の声が届かない彼女。


 ――これって、まさか……。


 考えたくもない、信じたくもない事実に目が向き始める。

 でも、それよりも気になっている事がもう一つある。


「けいた! けいた! けいた!!」


 ――さとみ。そいつ誰だよ?


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