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家のため、スライムはかわいい。

土曜日の朝、まだ肌寒い空気の中テントを抜け出し、学食で朝食ランチを3人で食べた。

オニオは朝ものすごく弱い、クグレとナコットは得意なほうだ。

「オニオ、スプーンのくぼみが下になってて何もすくえてないよ」

「ああ、ん」

全然食事が進まないオニオ、朝から唐揚げ丼を食らうナコット。唐揚げ定食をタッパーに詰めてお昼ご飯にするつもりのクグレ。朝から交わす会話は意味を持たない音なのだ。何を話しているかすぐ忘れる。

オニオ抜きの2人で会話が進んでいく。

「今日は森で素材を探すんですよね」

「うん、敷地内にある欲しい素材に紐をつけて、それの寸法を書いた紙を先生に提出すればあとは先輩が加工してくれる見たい」

「案外、簡単ですね」

「私達は魔法使えないからね、自力でやるってなったら木一本切るのに1日かかっちゃうよ」


朝ごはんをとり終えて、学園校舎の奥の方の森に向かった。

足を進めるごとにちらほら素材を探している生徒の姿が見える、岩を選ぶ人や地層の粘土を選ぶ人もいたりするが、基本的に木を素材にする人が多い様子だ。

「クグレ〜、あの木見つからないよ〜」

「ホカホカの木ね」

「そうそれ、ホカホカの木」

「本当にそんな名前なんですか?」

「いや、木の名称なんて覚えてないから適当につけた! どう? かわいい?」

「オニオのセンスはよくわからないね」

「はは・・・」

脳が起きてきてオニオの元気な声が森にしんと響いた。

「てかさ! お腹すいたんだけど、なんで朝起こしてくれなかったの!」

「いや、一緒に学食行ったでしょ」

「え? クグレが嘘ついてバカにしようとしてない? ナコット本当?」

「スープを食べてましたよ」

「まじ?! まじかよ・・・」

本当にお腹が空いているようで聞こえるくらい大きなお腹の音が鳴った。

音を聞いたクグレは自慢げにカバンから今朝タッパーに詰めた唐揚げ定食を出した。

「これってもしかして・・・」

「なに、嫌ならいいんだよ」

「いただきます・・・」

オニオの彷徨う右手が唐揚げを一つ手に取り口にそれを運んだ。

「冷めててもうまい!」

そんな話をしていると前方に森の色が緑から濃い緑に変わるのが見えた。

ニヤける顔が2人に見えないようにクグレが駆け出し、木の下に入ると幹に触れてみると、ほんのり優しい暖かさが肌を通して伝わってきた。

「あったよ。これがホカホカの木だよ」

そう言うとクグレに続いて、2人は木の幹に手の平を当てる。

「本当! さすがクグレ、これだよこれ!」

「うわ、本当にあったかいんですね」

ナコットの反応に気を良くしたオニオは自慢げに鼻をあげ、腰に手を当てて言った。

「この木は冬場でも地中の温度や太陽光を保温するから雪が積もりにくいし、私の地域の昔話で真冬の猛吹雪の中、旅人がこの木の隙間に入って一晩耐えた逸話もあるんだよ!」

「それ懐かしいな」

「そんな話が・・・。でも、そんな保温力のある木ならめちゃクチャ虫とかいそうですけど」

「「・・・」」

それから3人で、なるべく状態の良さそうな木に目印になる紐を結びつけ、寸法を用紙に書いた。

ナコットは虫が平気なようで、クグレとオニオが虫で騒ぐ度にポケットからペッタンを出して虫を食べさせて、愛おしそうにペッタンを見つめていた。予定していた本数と予備を数えて、ひと段落がついた。

「これくらいでいいかな・・・、よしこの紙を提出すればあとはいいかな、帰り際に学園よってウーロンテア先生のとこに行こう」

「終わったー!!」

「地味に疲れましたね、帰りたいです・・・」

無駄に虫に騒いだせいもあるのか、オニオとクグレは疲れ気味だ。

みんなで重くなった体を引きずって森の中を引き返していると、急に雲がかかったように当たりが薄暗くなった。

「なんか暗くなりましたね」

「今日の天気雨だったっけ?」

「いえ、そのような占いは出てなかったはずです」

「だよね、曇りになっただけか」

ナコットとクグレが話をしていると、目の前にスライム落ちてきてオニオが言った。

「あれ、こんなところにスライム?、迷い混んだのかな」

「ね、敷地内はモンスター入れないはずなのに」

3人ともスライムぐらいならビビりもしない、それは誰でも倒せてモンスターの中で一番弱く、わっ!と声を立てれば勝手に逃げていくからビビる必要もないのだ。

「わっ!!」

オニオが手慣れたように大きな声をあげてスライムをどこかにやろうとするが、逃げる気配がしない、

もう一度オニオが先ほどより大きな声に加えて足音も立てて大きく「わっ!」と言っても動く気配がない。

3人は首を傾げて近づくと更に上からスライムがボトリと落ち、それが合図かのようにボトリボトリと沢山の落ちてきた。流石に焦って魔法呪文を唱えようとオニオが少しずつ近寄るとオニオが言った。

「これスライムじゃなくてただの液体だ!」

「なんだ、液体か・・・少しひやっとしましたね」

クグレはスライムが落ちてきた方、上を向くとそこには大きな口内が見えて叫んだ。

「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

それにびくりとしたオニオとナコットもクグレの視線と合流するように視線をずらす。

「「「ああああああああああああああえええええううううえああああああああ!!!!!!!」」」




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