ペッタンは魔術獣、タッパーは持ち歩く。
カウンターからトレイを受け取り隅の方のテーブルに着いた。
ナコットは席に着くと、もう一度ピッタンを胸ポケットから取り出し、注文した魔術獣専用フードの皿の近くに置くと、ピッタンはモゾモゾと動く芋虫を舌で引き寄せ食べた。
その様子をオニオは苦笑いして見つめて言った。
「芋虫食べるんだね・・・。ナコットさんはえっと、なんて言ってたっけ」
聞きたいことがうまく出てこないオニオに付け足すように、クグレが言った。
「ナコットさんは竜族系の家柄って言ってたけど他にもナコットさんと違う系統の獣士もいるの?」
「あ、うん。沢山いるよ。他にも水獣族とか、妖精族とか、細かく分けたら数えきれないよ」
「そうなんだ、じゃあナコットさんの家ではみんなお世話する竜が決まってるの?」
「うん、みんな持ってる。この子はママとパパの竜の子なの」
オニオは適当に巻いたパスタを口に押し込んで興奮気味に言った。
「魔術獣使いってどうして竜を持つの?」
「そうですね、魔法を使う際に竜を通すことで、効果や威力を上乗せすることができるから強いんだよ。個体によるけど竜の細胞には常に魔法を一定量蓄えてあるから、それを借りることができるの」
「え! それめちゃくちゃ強くない? なんでみんな魔術獣持たないの?私も欲しいんだけど!」
オニオは興奮しているようだ。
「んー、さっき言った魔術獣の力を利用するのは難しくて、使えるようになるまでかなり時間かかるの」
「そうなんだ・・・」
「相性さえ良ければすぐに使うこともできるけどね」
「まじ?!」
「そうそう見つからないけどね・・・」
落ち込むオニオにナコットは苦笑いした。
「ナコットさんはいつからペッタンの世話してるの?」
「記憶にないけど生まれてからすぐにお世話する魔術獣つけられたらしい」
「そんな昔から・・・」
「うん、読み書きを覚えさせられると同時に魔術獣の勉強させられてきたけどね」
家柄でいいなと思ったオニオもナコットのこの言葉と表情に、大変な家柄でもあるのだと察した。
「あれ、クグレめっちゃご飯余ってるけど、食べきれるの?」
クグレのトレイを見ると白米だけが盛られた茶碗が二つだけあった。
「これはタッパーに入れて夜中か朝に食べようかと思って」
「へ、へー。しっかりしてるね」オニオは反応に困った。
「なんでみんな黙ってるの? あ、これ2人の分もあるからね」
「あ、ありがとうございます」
「ビンボー症か!」
「ええええええええ! 節約だよ!」
「節約大切だと思います・・・」
クグレの節約は周りからしたらビンボー症なのかもしれないとクグレは思った。
「無料って聞くとつい・・・」
オニオは大きく笑い、ナコットは小さく笑った。クグレははにかんだ。
「「「ごちそうさまでした」」」