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三文詩人の参拝記  作者: 萩原 學
出雲
9/13

出雲大社周辺 因佐神社

出雲大社の西にある海岸を稲佐の浜と呼んでおり、沖合に弁天島、近くに因佐神社が鎮座する。最近になって砂浜が延び、沖合にあった弁天島が今では砂浜の一部と化して有難味は減った。弁天とは宗像の女神市杵島姫命の本地仏をいう。

挿絵(By みてみん)

ここの砂を採って出雲大社奥にある素鵞社に奉納すれば、社の砂を持ち帰って良いのだそうで、御守りになるとか(2017年当時)。そんな面倒な真似はしなかったし、伝染病が怖い今ではどうなったか。

出雲大社から稲佐の浜へ至る道の途中に大歳社が鎮座するのは、別の機会に取り上げる。

挿絵(By みてみん)

近くに上宮かみのみや及び下の宮が鎮座するのは、おそらく日御碕神社のコピーで、式内社ではない。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

式内社因佐神社へは、民家の軒先をしばらく歩かねばならない。途中に屏風岩があって、この岩陰に対談したという。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

因佐神社は、今では岸辺からやや離れるが、嘗ては近くに在ったのだろう。建御雷神を祀る。

挿絵(By みてみん)

記紀にある國譲りの段を再掲する。


【古事記】此二神(天鳥船神 + 建御雷神)出雲國伊那佐(いなさ)【伊那佐三字以音】 の小濱に降りちまして。十掬劒(とつかのつるぎ)拔き、さかしま浪穗(なみのほ)に刺し立て、其の劒前(けんさき)に趺坐し。其の大國主神に問ひまおすは

「天照大御神・高木神の命を以て、之に問ひ使はさる。汝の宇志波祁流(うしはける)【此五字以音】葦原中國は、我が御子の知らす國、言依り賜ふ。故、汝が心の奈何なかは。」

【日本書紀】二神(經津(ふつ)主神 + 武甕槌神)、是に、出雲國五十田狹(いたさ)小汀(おばま)降り到ちます。則ち十握劒とつかのつるぎ拔き、さかさま地に植ゑ。其の鋒端(ほこさき)(あぐら)して大己貴神に問ひのたまはくは

高皇産靈尊たかみむすびのみこと皇孫(すめみま)(くだ)され、此の地君臨(しろし)めむとおぼす。故、先に我二神、驅除平定に遣はさる。汝がこころ何如いかんまさに須べから避らむや」


よく解らないのが『拔十掬劒逆刺立于浪穗』の部分で、日本書紀は『則拔十握劒倒植於地』つまり『剣を地面に植えた』とするが、敵の面前に穴を掘って剣の柄を入れ埋め直す… などと悠長な真似をする筈もなく、抜き身を地に突き立てたというのだろう。

……何のために?塩分豊富な海岸の砂に、金属剣を突き立てた?鋼製なら1発で錆びる。青銅製にしても錆びないものではない。1人で剣を抜いても、相手が抜いていたら脅しにならないし。構えるのでなく地面に突き立てたのでは、「脅しだな」と受け取られて終わりでは?

そもそも上陸戦では、攻める戦力が防禦側の10倍ないと勝てない。船一艘に2人乗りでは、商売にもならない。おそらく元の話では、2神がそれぞれ軍勢を率いてきたのだろう。押し寄せた上陸班が一斉に抜き放ち振りかざし、波の穂よろしく白刃を並べる。こうでないと、見ただけで戦意喪失する訳がない。中国式の史記なら「千騎万兵」とか、過大にでも華々しく盛り上げる場面、ところが記紀はそうはしない。合戦以外に有り得ない場面でも、個人戦に収めようとするから、よく解らない文章になったのではないか。想像に過ぎないが。


という訳で記紀を見る限り、出雲を制圧した神に見える。ところが、因佐神社は式内社であるのみならず、出雲國風土記も『伊奈佐乃社』と記すので、既に出雲の神として祀られていたことになる。

こういうところが日本の神らしく、正邪・神魔の二項対立に終わらないカオスな信仰なので、結論を急ぐと足を取られるだけであろう。理解出来ないまま、拝礼だけは済ませた事であった。

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