4. 周りを見る少年
俺は先日授業中に立ち上がるというミスを犯してしまった。
そのせいで鳥男(高飛び飛べないくせに鳥になりたいとか言ってるやつ)にまで馬鹿にされる始末だ。
悔しいという言葉しか浮かんでこない。
俺は自由を手に入れたかっただけなのに。
今回はしっかりと周りを見よう。
そう決意した少年は、自分の周りを常に気にしながら歩くようになった。
いずれ、あの禿げた教師からは授業中注意されることもあまりなくなった。
俺は生まれ変わったんだ。
本当にそんな気分だった。
そして少年はいずれ、周りを見ることに集中しすぎて、自分を見失ってしまった。
高飛びの授業、熱血体育教師が鳥男にキレていた。
少年は鳥男を嘲笑った。
少年は、学年で誰も飛べたことがないという高さにバーを設置した。
みんなが少年に注目する。
周りをよく見ていた少年は、近くで熱血教師も見ていることに気がついた。
これに成功すれば、成績も上がる。
そう確信した少年は、一切ためらうことなくバーに向かって走って行った。
少年の記憶は、そこで途絶えた。
少年は目を覚ました。
そこは保健室であった。
保健の女教師が、少年に言った。
「あなた、高飛びに失敗して落ちたのよ。それも、クッションの引かれていないところに。さっき見たら、右足を骨折していたわ。今日は早退して病院に行きなさい」
少年は何が起こっているのかわからなかった。
そこに、熱血教師も保健室へやってきて、言った。
「お前は何も言わずに飛ぶんだからな。飛べるか飛べないかなんて、お前の成績を見ればわかるよ。さっきは止めようとして行ったのに」
熱血教師は呆れたように息を吐き、少年に言った。
「そんな大きな怪我して、お前は馬鹿か? もっと自分を見つめなさい。あぁ、あと、もう一つ。
中西、お前の体育の成績、2から1に落ちたぞ」
少年は保健室の天井を見つめながら、周りを見るだけでは自由になれないことを思い知り、成績が下がったショックでもう一度気を失った。