3. 期待の少年
俺は両親の希望だ。
俺が何をしても、両親は俺に期待する。
自分の好きなことを応援してくれるって、良い親だなぁ。
友人はそんなことを言うけれど、俺はそうは思わない。
いつもいつも、俺が言わなくてもハマっているものや好きなことを特定して期待する。
正直、両親のことが怖くなってきた頃だ。
一体どうやって俺の趣味を調べているのか。
そして俺の頭に、一つの悪巧みが浮かんだ。
両親の期待を、裏切ってしまおう。
俺達も両親のことをうざいと思う年頃だ。
少年は友人とメッセージを交換し、共に両親の期待を裏切る計画を立てた。
少年は将来きちんと働ける大人になりたかった。
しかし両親に、「鳥になりたい」と馬鹿なことを言ったら、両親はどんな顔をするだろう。
少年はその間抜けな顔を思い浮かべてはくくごもった笑いをもらした。
少年がそんなことを思いついたのも、高跳びが飛べないくせに鳥になりたいだのと言っているクラスメイトがいるからだ。
友人もその作戦に賛成した。
少年は両親の前で深刻な表情を作り、こう言った。
「お父さん、お母さん。俺は将来、きちんと働ける大人になりたいとは思えなくなってしまいました」
少年は心の中で笑った。
両親はさぞがっかりした顔をしているだろう。
そう思って顔を上げ、少年は驚いた。
『期待していたのに』
そう言われることを予想していたのに、両親は全く驚かず、笑っていた。
「知っているわ、健吾。鳥になりたいんでしょう。なったらいいわ。期待しているからね」
そんな頭のおかしな母親の発言に、少年はとうとう耐えきれなくなって怒鳴った。
「どうしていつも、俺の言いたいことを知っているんだよ! それに、鳥になりたいなんて馬鹿なことにも期待するなんて、おかしいだろう!?」
母親は薄らと気味の悪い笑みを浮かべ、こう言った。
「何を言っているの、健吾。息子に期待するのは当たり前でしょう。それに、健吾の携帯のデータは私たちに繋がっているんだもの。健吾のやりたいことを知らない筈がないわ」
それを聞いた少年は、確かに背筋が凍りついて行くのを感じた。