27. 出来損ないの少年
何をやってもダメだ。
勉強もできない。運動もできない。
人々に特別好かれるような“何か”があるわけでもない。
僕は出来損ないだった。
両親には“何も出来ない子”だと叱られた。
歳の離れた姉には“恥ずかしい”と罵られた。
まぁ、僕だって努力して変わろうとしている訳でもないし、そんなことは言われて当たり前だろう。
「勉強ができないなんて笑わせるなよ」
ある時、周りから“怪物”と呼ばれている少年の言葉が耳に入った。
きっと完璧な人間には、僕のような人間の心はわからないのだろう。
すごいなぁ、と、どこか他人事のように考える。
羨ましいとは思わなかった。
僕は今の僕で満足しているし、彼は彼であれが本心なのだろう。
第一、僕には心を許せる親友がいる。
他の誰にどう言われようが、自分がそれで良いなら、それで良いのだ。
僕は自分が出来損ないだということを理解しているから、それを変えたいとも思わなかった。
恥ずかしいとも感じなかった。
もしも僕が、こんな自分を変えようと必死になっていたのなら、両親や姉もそこまで文句は言わなかったのだろう。
それこそ、本気で変わりたかった時もあったさ。
こんな自分が嫌で、何度も何度も自分を呪って、吐き出しそうなくらいの苦痛を味わった時も。
……けれど何も変わらなかった。
何もできなかった。
自分が本当に全力を尽くしていたのかすらわからなかった。
それならもういっそ、このままでいようと思った。
妥協じゃない。
僕は、僕のままで良いと思えた。
「僕は、そのままの君が好きだよ。変わらないままでいてよ」
親友はそう言ってくれた。
なんだ、このままの僕だって、こんなに幸せじゃないか。
そう、気づけたんだ。
少年は思い出す。
他人にどう思われようと、たった1人でも自分を認めてくれる人がいるという事実が、どれほど心を温めるものなのか。
少年は心を決めた。
僕はこのまま、出来損ないのまま。
僕は、僕のままで生きて行く。




