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少年達  作者: 南波 晴夏
27/33

27. 出来損ないの少年

何をやってもダメだ。


勉強もできない。運動もできない。

人々に特別好かれるような“何か”があるわけでもない。


僕は出来損ないだった。

両親には“何も出来ない子”だと叱られた。

歳の離れた姉には“恥ずかしい”と罵られた。


まぁ、僕だって努力して変わろうとしている訳でもないし、そんなことは言われて当たり前だろう。


「勉強ができないなんて笑わせるなよ」


ある時、周りから“怪物”と呼ばれている少年の言葉が耳に入った。

きっと完璧な人間には、僕のような人間の心はわからないのだろう。


すごいなぁ、と、どこか他人事のように考える。

羨ましいとは思わなかった。

僕は今の僕で満足しているし、彼は彼であれが本心なのだろう。


第一、僕には心を許せる親友がいる。

他の誰にどう言われようが、自分がそれで良いなら、それで良いのだ。


僕は自分が出来損ないだということを理解しているから、それを変えたいとも思わなかった。

恥ずかしいとも感じなかった。


もしも僕が、こんな自分を変えようと必死になっていたのなら、両親や姉もそこまで文句は言わなかったのだろう。


それこそ、本気で変わりたかった時もあったさ。

こんな自分が嫌で、何度も何度も自分を呪って、吐き出しそうなくらいの苦痛を味わった時も。


……けれど何も変わらなかった。

何もできなかった。

自分が本当に全力を尽くしていたのかすらわからなかった。


それならもういっそ、このままでいようと思った。

妥協じゃない。

僕は、僕のままで良いと思えた。


「僕は、そのままの君が好きだよ。変わらないままでいてよ」


親友はそう言ってくれた。

なんだ、このままの僕だって、こんなに幸せじゃないか。

そう、気づけたんだ。



少年は思い出す。

他人にどう思われようと、たった1人でも自分を認めてくれる人がいるという事実が、どれほど心を温めるものなのか。


少年は心を決めた。

僕はこのまま、出来損ないのまま。


僕は、僕のままで生きて行く。

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