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少年達  作者: 南波 晴夏
26/33

26. 影を悔やむ少年

いつか、誰かが言っていた。


それは消えることのない痛みだと。

決して許されることのない罪だと。

死ぬまで、その苦しみから逃れることはできないと。


本当にその通りだと思った。

あれから4年経った今でも、痛々しい程に残っている。

彼は怒りに震えていた。


「なぜだ? なぜお前は助けなかった?」


大方、あの頃の夢でも見たんだろう。

彼は我を失った獣のような瞳で僕を睨んでいた。


「お前には、影が視えていたんだろ。あいつの、本心が、視えていたんだろ。そうならどうして、あいつを助けなかった。どうして、あいつを、見殺しにした。他人事のように、人を通じて、あいつを救おうと、した。そんなのは、救いじゃない。

なぜだ。なぜ、1番に気づいたお前が、助けようとしなかった。

偉そうに、物を言うな。お前が、殺したと言っても、嘘にはならないんだぞ。

なぜ、だ。なぜだ。なぜだ。なぜ……っ」


彼の指が肩に食い込む。僕は黙ったままでいた。


「なぜ、俺は、あいつの変化に気づいてやれなかった?」


彼の瞳が揺らぐ。

血走った瞳の淵に涙が溜まって行く。


「なぜ、俺には影が、視えない? なぜお前が、その力を、持っている。俺が、その力を持っていたなら、あいつの、本心を、真っ先に見抜いて、俺が、あいつを…っ」

彼は力なくこうべを垂れる。


「救って、やれたのに」


誰もいない教室で、彼は涙を流し続ける。

彼の影も泣いていた。

肩に置かれた手は熱く、力強かった。


僕は何も言わなかった。

何も言えなかった。

今彼が言ったことは全て事実であり、許されることのない僕の罪だった。


「お前でもよかったんだ」

いつかの彼の言葉が脳裏をよぎる。


僕でもよかった。あの日、あの少年を助けるのは。

僕があの時助けていれば何かが変わっていた。

今更過ぎたことをどうこう言っても何も起こらない。

あの少年にも届かない。

それでも、考えないわけにはいかなかった。


あの日。

僕が少年を救っていたなら。

彼に影を視る能力があったなら。

少年をいじめていた奴らが、それを辞めていたなら。


少年は、今も変わらず、生きていたのだろうか。


果てのない後悔と苦しみ。

消えることのない僕等の罪。

絶対に忘れてはならない過去。


少年は、嗚咽を漏らし続ける彼の背に優しく手を置いた。


許されることのない罪を犯してしまったこと。

少年達は、いつまでも抱え続ける。

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