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少年達  作者: 南波 晴夏
23/33

23. 完璧な少年

学校生活は充実していた。

なにひとつ不自由なことはない。

言ってしまえば、俺は完璧な人間なのだ。


正直、俺のどこが劣っているのかわからない。

歳を重ねるにつれ、俺は他者との違いを実感して行った。


学年1の学力、学年1の運動神経。

俺はなんでも一番だった。“できない”人間の心が理解できなかった。

人望も厚く、恋人も今までに何人できたか数えきれないくらいだ。


「運動ができない奴の神経がわからねぇよ。早く走りたいなら早く走れば良い。高く飛びたいなら高く飛べば良い。それが“できない”なんて理解できねぇ」


「勉強ができないなんて笑わせるなよ。あんなのただの文字じゃねぇか。覚えれば良いだけなんだよ。それを”わからない“なんてありえねぇ」


少年は事実を言っただけだった。

本心を語っただけだった。

やがて少しずつ人影がなくなり、少年は独りになって行った。


少年は頭が良かった。少年は完璧だった。


「わからねぇよ」


少年は自分のことを完璧だと思っていた。

高貴な存在だと信じていた。

少年にとっての完璧は、人々にとっての怪物だった。

少年は何が悪いのかわからなかった。

どうして人々が離れて行ったのか理解できなかった。


「わからねぇよ」


少年は生まれて初めて”わからない”ということを理解した。

”できない”ことを自覚した。


少年は頭が良かった。

何をやっても一番だった。

少年には理解できないことなんてなかった。


ない筈だった。

初めて”わからない”を体験した少年は、乱れる息を必死で整えながら、どうしたら良いのかすら”わからない”ままでいた。

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