2. 空を飛ぶ少年
俺は空を飛ぶのが好きだ。
誰になんと言われようと、変な趣味だと笑われようと、俺は空を飛ぶのが好きなんだ。
将来の夢、と言われて小1の頃から変わっていない夢が一つある。
『生まれ変わったら鳥になりたい』
誰もが俺の自己紹介を聞いて笑った。
何を言っているんだ、頭がおかしいんじゃないのか?
そんな言葉が教室中を飛び交った。
悔しかった。いつか必ず飛んでやる。
毎日飛ぶ練習だってしているんだ。
いつかは必ず飛べる筈だ。
「どうした!? 早く飛べよ! お前は鳥になりたいんだろう!?」
ただし俺は、こんな熱血教師は嫌いだった。
なぜなら、人の不幸を大声で言ったりするからだ。
それで生徒の笑いを取ろうとする、最低教師。
しかし少年は言い返さなかった。
いや、言い返せなかった。
熱血教師がいくら声をかけても、少年は飛ばない。
熱血教師はついに激怒した。
「中西! お前はどうして飛ばないんだ!? 飛べないなら飛べないとハッキリ言え!
飛んでないのはお前だけだぞ!?」
少年はどうして熱血教師がキレているのか分からない。
少年は首を傾げて、悪びれもせず言った。
「先生、俺が飛びたいのは空だ。
空を飛ぶ鳥になりたいんだ。なのになんで、こんな棒を飛ばなくちゃならないんだ」
それを聞いたクラスメイトはどっと吹き出し、熱血教師は頭を抱えた。
少年の目の前にあったのは、高飛びに使われる一本の棒であった。