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少年達  作者: 南波 晴夏
19/33

19. 夏を愛す少年

僕は夏を愛していた。


理由なんてものはいちいち考えてなどいないが、僕は夏が好きだった。

汚い心を明るく照らして、薄汚れた欲望を透過する。夏は、人間にとって欠かせないものだと思った。


ある時、クラスメイトの一人が僕に言った。

「君って、変だよね」

彼女の言ったことの意味が、僕には理解できなかった。

僕はどこかおかしいだろうか?

彼女は、おもしろおかしく笑っていた。


そして。

数えきれない程の幸せを、彼女と過ごした。

どんなつまらない日でも、彼女といるだけで楽しくなった。


彼女に出会って、僕の日常は変わって行った。

どんなことがあっても、彼女に会えばそれだけで沈んでいた気持ちが晴れた。

まるで、僕の大好きな夏みたいだ。



……そして、たった一夏の恋は、終わった。


彼女は、消えた。

僕といた夏の日を境に。


理由を探す者はいなかった。

理解しようとする者もいなかった。

彼女がいなくなったことの意味を、考えることすら回避していた。


夏が消えて、夏が死んで、夏がなくなって、夏を追いかけて、夏は逃げて、夏を忘れて、また、夏になる。


少年は夏を愛していた。

自身の汚い心を透過し、他人の悪意を青で塗り潰す。

少年は夏を探していた。

夏だけが大切なものだった。

夏さえいれば、生きられる気がした。


少年は、夏を愛していた。


忘れる筈などない、少年にとっての夏は、もう二度と訪れない。

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