表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年達  作者: 南波 晴夏
17/33

17. 海を歩く少年

暗い海沿いを、ただひたすらに歩いている。


俺は夏なんて嫌いだった。

遊びに誘う友人もいなければ、買い物に誘う両親もいなかった。


俺は生まれて間もなく捨てられた捨て子だった。

生きる意味なんて分からないまま、ただのうのうと生きてきた。

けれど死にたいかと言われれば、そうではなかった。


ふと、すぐそばの岩場に一人の少年が立っていることに気がついた。少年は怖いくらいの無表情で、ただ深い海を見下ろしている。


……嫌な予感がする。

そう思った途端、少年は深く暗い海に身を投げた。

俺は驚き、慌てて駆け寄って自らも海に飛び込もうとした。


その瞬間、パシッと何者かに腕を掴まれた。

驚いて振り返ると、そこには見知らぬ少年が、酷く強張った表情で立っていた。


「……助けちゃ、ダメだ」

震える唇を動かして、彼はかすかに呟いた。


「止めちゃ、ダメなんだ……!」



……翌日、幸いにも自殺を図った少年は救出され、あまり大きなニュースにもならずに済んでいた。

「ごめん」

彼は言った。


「俺、どうかしてるみたいだ」

少年には彼が何を言っているのか分からなかった。

そして少年に両親がいないことを話すと、彼はまた何かを悔しがるように唇を噛んだ。


「ごめん」

少年には彼の謝る意味がわからなかった。


少年は海を歩いていた。

あの日からたった一人の友人となった彼と。


……少年は一つ、どうしても気がかりなことがあった。

彼と海沿いを歩きながら話をする合間、彼はふとあの岩場に目を向けて、あの時自殺を図った少年と同じような目をするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ