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12. 太陽を願う少年
俺は太陽になりたかった。
太陽になれればそれで良かった。
いつまでも照らされてばかりじゃあたまらない。
助けられてばかりじゃあ気が済まない。
「大丈夫だよ」と囁いて、いつも俺を救ってくれていた存在に、恩返しをしたいんだ。
……そうだ、そう思うなら、協力するんだ。
あの人の言葉が聞きたいだろう。
「ありがとう」と笑う顔が見たいだろう。
そうなら、行動しなくてはならない。
俺の感情なんてものは、放っておいて良いのだ。
窓の桟に手をかけ、遠くを見つめる。
笑い合う、二人の影。
少年は強く唇を噛んだ。
幼い頃から恋焦がれていた少女には、想い人がいた。
その恋に協力してほしいと、少女は言ったのだ。
少年は願いを聞き入れ、恋のキューピッドとなった。
少年は太陽になりたかった。
太陽になれればそれで良かった。
少年は、一粒の涙を零した。
……君の。
君の太陽に、なりたかった。
「……これで、良かったんだ」
少女の笑顔を見つめ、涙を飲み込んだ少年は、酷く愛おしそうに微笑んだ。